今月の特集1

特定秘密保護法に反対します。

2013.12.02更新

特集

 私たち出版メディアの果たすべき役割のひとつは、「小さな声に耳を澄ませ、その声を欲する人たちのところへ、もっとも届く形でお届けする」ことだと思います。
 そうしたミッションと運営をいかに両立させるか、が出版社にとって、(文字通りに)死活的問題であります。
 では、どうすればいいのでしょう。 

 「みんなのミシマガジン」創刊にあたり私はこのように書きました。
 つづけて、「株式化」も、「広告収入」による運営も、どちらも十分ではない旨を記しました。
 なぜなら、いずれも、「『言いたいことを規制される』といった事態を引き起こしかね」ないからです。
 現に、ミシマ社という出版社は、出資を募ったことはありません。会社の株主化という発想は、出版社運営には合わないと確信しているからです。また、単行本はもとより、ウェブ雑誌においても、「広告」による運営も一切していません。それは、広告主に配慮して、必要な記事を掲載しない、あるいは、何も言ってないがごとく凡庸な表現に歪められてしまう、といった「あってはならない」事態を、あらかじめ引き起こさないためです。
 私は、「出版メディアの原点」は、「独立自歩」であると考える者であります。

 そういう意思のもと、「みんなのミシマガジン」というウェブ雑誌を、おひとりおひとりの賛同をベースに、サポーターの方々と運営していくことにしたわけです。

 ですが、ここにきて突然、非常に気持ちの悪い法案が出現しました。
 民間レベルにおいても「あってはならない」事態が、政府によって引き起こされようとしています。
 こんなことは、絶対にあってはいけません。
 憲法に定められた「出版・報道・放送の自由」「表現の自由」「知る権利」といった数々の国民の権利が形骸化されます。

 僕は、個人的にも、この法案にとてつもない気持ち悪さを感じないではいられないのです。
 かつて、出版社を原点としない、つまり、ある企業の子会社としてできた出版社にいたことがあります。そのとき、僕はここにいたら「お抱え」になってしまう、編集者でいられない! と痛感しました。企画ひとつとっても、親会社にとってマイナスとなるかもしれない(もちろん、マイナスになるわけがない!)企画はダメ。もしくは完全に骨抜きにされた形でOKが出る。そういうことが多々ありました(もちろん、ある人にとって都合のいい表現は、誰かにとって都合の悪いもの。万人に都合のいい表現などありえないし、誰にも誤解されない表現も存在しない!)。そのとき、僕は「ここにいたら、死ぬ!」と思ったのです。
 もちろん、肉体は生きるでしょう。そして「本」という形のものは生まれつづけるかもしれません。けれど、そこにはすでに生命はない。本来、「生命」を吹き込んだ一冊を循環させるのがメディアの本分であるにもかかわらず。それができないというのは、死そのものだと思いました。
 ですから、ミシマ社を立ち上げるとき、とにかく「独立自歩」を最優先にしたのです。
 自分の本分たる「出版業」を維持するために。

「お金」にも、「企業」にも、なにものにも、メディアは支配されてはいけない。

 これを実現するために、自分で出版社をつくる。

 これまでは、そういう道が残されていたといえます。
 しかし、この法案が通ったあとに待っているのは、個人の努力ではどうすることもできないもののように感じます。「強制」と、違反した者への罰則という恐るべき事態・・・。

 メディアがメディアであるために。

 私は、特定秘密保護法案に反対します。そして、廃案を強く願います。

 メディアの仕事にかかわるすべての人々に、こちらからのご署名を願います。


                    「みんなのミシマガジン」編集長 三島邦弘

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