今月の特集1

 『小商いのすすめ』、そしてミシマガでおなじみ「隣町探偵団」の平川克美先生が、3月4日に喫茶店をオープンしました。
 その名も「隣町珈琲(かふぇ)」。
 隣町探偵団の活動の舞台となっている東急池上線沿い、荏原中延の商店街に、そのカフェはあります。探偵団の基地と位置付けられる一方で、平川先生自らが「小商い」を体現しておられる場所となれば、これはもう、取材に行かないわけがありません!

 店内の雰囲気は? 経営方法は? 商店街にある理由は?
 ミシマ社でデッチとして働いている学生たちが、憧れの平川先生のもとを訪れ、お話を聞いてきました!
 大学生・就活生ならではの疑問や悩みにもお答えいただいています。
「じいさんのため」に開店したという隣町珈琲ですが、この記事は、若者も必読です!!

(聞き手:角智春・野津幸一  文:角智春 写真:星野友里)

デッチがゆく! 隣町珈琲編

2014.03.24更新

特集1

「おすそわけ」と「お布施」で成り立つ設計

―― いつごろから「隣町珈琲」を構想されていたのですか?

平川2・3カ月前かな。去年の暮れくらい。

―― ええ~! 構想からすぐのオープンだったんですね!

平川そうそう。カフェを開いたのは、思いつきなんです。
 去年ミシマガジンで連載していた「隣町探偵団」で、小津安二郎さんの映画のロケ地巡りをやっていたわけです。それで疲れたときに、喫茶店に入ろうと思って探すんだけど、ないのよ。街を歩いていて喫茶店がないよね、と探偵団で話していて、それで、つくろうかということになりました。

―― なるほど。

平川それと「商店街」がひとつのテーマとなっています。最近、商店街をずっと歩いているから。商店街というのは面白くてね、このあたりにも六筋あるんですよ。でも、たとえばある通りは栄えているのに、その隣の通りは全然だめだったりする。それを見て、「なんでだめなんだろう」と考えたりしていました。そこで、喫茶店というのも商店街の大事なひとつのアイテムですから、商店街のはずれに店を構えることにしたんですよ。

―― 駅から商店街を歩いてきたのですが、とてもいい雰囲気でした。

平川でも、このカフェはまだ「道半ば」なんです。「隣町珈琲」に加えて、今後「隣町山荘」と「隣街農園」をつくる計画もあります。今は点ですから、これを面にしていこうと。最後はホテルかな、と思ってるんだけどね(笑)。農園で作った野菜はこのカフェに持ってきて、近所の方に配ります。

―― 売るのではなく、「配る」のですか!?

平川そう。「おすそわけ」をやりたい。ここでは、定常経済がまわせるのか、という実験をしているんですよ。喫茶店は儲からないから。家賃、光熱費、人件費・・・と考えたら、1杯500円のコーヒーでは割に合わない。だから、ここはむしろ、そういう「おすそわけ」や「お布施」で成り立つ設計です(笑)。

―― 農園の作物は、どなたが作るのですか?

平川現地の農家と協力して、旧作地を利用して営みます。あと、そこにできる山荘にはね、囲炉裏がつくの。・・・これも思い付きなんですよ(笑)。3週間くらい前に、隣町探偵団の3人で、僕の書斎の火鉢を囲みながらメザシを焼いていて、「こういうのあったらいいよね」って。

―― (笑)。


儲けは出さなくていい

平川ただそうやってすぐに計画が動いて、実現しても、それがうまく回っていくためには、自分たちで工夫をしなければならない。儲けは出さなくていいけど、とにかく、関係者がそれで食べていけるようにする。

―― 利益にこだわる、という縛りをなくすのがポイントなのですね。

平川自分たちの楽しみのためにやる、というのが、とても大事です。商店街が面白いのは、それが定常経済だからですよ。

―― 「定常経済」というのは・・・?

平川株式会社というものは、株主がいないと成り立たないでしょう? でも経済が成長しなければ、株主は誰も投資しないよね。今は日本全体が成長しない状態に入ったので、株式会社自体が実はもう成立しないんです。

―― 株式会社が成立しない。

平川株式会社は1600年代に出来て、システムが確立してから350年くらいの歴史があるんですね。世界全体が右肩上がりだったころのモデルなんですよ。今のいろんなシステムはすべて、右肩上がりのときの設計です。定常というのは、上がりもしなければ下がりもせず、循環する状態。この循環経済というモデルをこれから作らなきゃならないんだけど、それを誰もやっていないので、それをやろうと。だれかがそういうのをはじめるとね、すこしずつ広がっていくと思います。


マンションが商店街を衰退させた

平川たとえば、「どこかの魚屋がマンションを建てた」とかいう話ってないじゃないですか。魚屋はずーっと魚屋でしょ? マンションが建つのは、土地があるからだよね。地価が上がるという条件でバブル期にマンションを建てた商店街は、みんなだめになっちゃった。商店街がだめになる理由は、マンションなんですよ。

―― へえ~! 「マンションが商店街を衰退させた」というお話は、はじめて聞きました。

平川うん。僕も、ほとんどの理由は、「大型店舗が入ってきたから」だと思っていたんだけど、そうじゃなかった。マンションができると、そのマンションに住む人は、定常経済のなかの住人じゃなくなるの。ライフスタイルが違うから、昼間に自宅周辺で買い物したりしないでしょう?

―― たしかに。



平川都心で会社勤めをして、帰りに外食するか、あるいはスーパーで食材を買って、家に帰る。で、家には冷蔵庫があるから、毎日買い出しにいく必要がない。「商店街」が、ライフスタイルからスコッと抜けるわけです。
 商店街は本来、そこで生活しているメンバーがライフインフラとして使っているものなんです。いま残っている商店街に非常に特徴的なのは、団子屋と、御茶屋、布団屋、畳屋、それと銭湯がある、ということです。この荏原中延の商店街にも、団子屋がいくつもあるでしょ。

―― いい商店街には団子屋がある、と。隣町珈琲のそばにも、おいしそうなお団子屋さんがありました!
(デッチは帰りがけに、美味しいみたらし団子やどら焼きを買って大満足でした〜)

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