今月の特集1

 『小商いのすすめ』、そしてミシマガでおなじみ「隣町探偵団」の平川克美先生が、3月4日に喫茶店をオープンしました。
 その名も「隣町珈琲(かふぇ)」。
 隣町探偵団の活動の舞台となっている東急池上線沿い、荏原中延の商店街に、そのカフェはあります。探偵団の基地と位置付けられる一方で、平川先生自らが「小商い」を体現しておられる場所となれば、これはもう、取材に行かないわけがありません!

 店内の雰囲気は? 経営方法は? 商店街にある理由は?
 ミシマ社でデッチとして働いている学生たちが、憧れの平川先生のもとを訪れ、お話を聞いてきました!
 大学生・就活生ならではの疑問や悩みにもお答えいただいています。
「じいさんのため」に開店したという隣町珈琲ですが、この記事は、若者も必読です!!

(聞き手:角智春・野津幸一  文:角智春 写真:星野友里)

デッチがゆく! 隣町珈琲編

2014.03.26更新

特集1

少年時代からのつながり

―― 内田先生とは、もともと、どのようなつながりなのですか?

平川内田くんとは、小学校での2年間、同級生だったんです。普通は男女で並んで座るんだけど、内田くんと僕だけは、男同士で隣の席に座ってたんだよ。2人は、ちょっと落ち着きがなかったの。だから、もともとは別のところに座っていたはずなんだけど、最後の1年間は先生の前に並んで座らされていました(笑)。

―― (爆笑)。そんなエピソードがあったのですね! 隣町探偵団がはじまったきっかけも、少年時代のつながりからですよね。

平川隣町探偵団の3人は、幼少期に近所に住んでいて、みんな町工場のせがれなんです。そういうことで、町工場を見て歩こう、というのがはじまりでした。小関智弘さんという作家がいらっしゃって、70歳ぐらいまで羽田浦の工場で旋盤工をやっておられたんです。その小関さんの書かれた『錆色の街』『羽田浦地図』が、「自分たちの生まれた街をたどりなおす」というテーマのもとになっています。

―― そうだったのですね。

平川羽田浦は、もともと海苔を作っていた場所だったのですが、戦後に工場街になりました。朝鮮動乱の1955年ごろには、9000もの工場が建っていた。「ひとり親方」の工場です。僕らは、ひとり親方の工場の末裔だから、それがどういうものであったのかを調べたい。みんな同じ時期に親を亡くしたということもあって、両親への供養、という意味も込められています。


親のルーツをたどりなおす

―― 自分の住んでいるところを知るために大切なことは何ですか?

平川そりゃ、歩くことだよ。調べて歩くことはやったほうがいい。ただ歩くのではなくて予習して、とくに歴史を調べて。地形が変わるからね、何十年か経つと。川が暗渠になったり、鉄道の路線が変わったり。調べていないと、その変化には気付けない。できれば、その土地を舞台にした古い映画があると一番いいよね。

―― 映画の解析は、まさにミシマガ連載の「隣町探偵団」で試みられていたことですね。私も、自分や親の住んでいたところをたどってみることの重要性を意識しはじめました。

平川親のルーツをたどりなおすことは大切です。今はあまり実感がないかもしれないけど、もっと親が年を取っていったときに、自分が親のことを何も知らないということに気づく。自分の親がどうしてそこにいて、何をしていたか、ということはほとんど知らないんだよね。

―― そうなんです、実際にほとんどそういう話をしたことがないことに気づいて。

平川親が亡くなるくらいになったときには、親がどういう苦労をして自分を育てたのかとか、そういうことは知っておく必要があります。今はする人が減ってしまったけれど、生前供養ということですね。

―― 人とのつながりを築くうえで、大切にしたほうがいいことはありますか?

平川うーん、秘訣とかはあんまりないんですよね。それぞれ自分が持っているのり代があるわけだから、そこが相手ののり代とうまく重なるかどうかというか。そういう偶然の出会いがたくさんあるわけです。でも、あってもなかなか気がつかないんだよね。そこでパッと気がつけば、1人が2人になっていく。そういうのり代を大事にできるといいですよね。

―― のり代。

平川「効率化」というのは、ほんとうに「孤立化」なんだよね。本来は一緒にやっていく人なのに、競争しちゃうわけでしょ。別に、つながりを求めているわけではなくても、効率化のほうへ向かっていかなければ、自然とつながっていきます。

―― 今日はたくさんのお話を、ほんとうにありがとうございました。


カフェにある素敵な本棚には、ミシマ社コーナーをつくってくださいました。
ここでミシマ社の本もご購入いただけます!

「じいさんのため」と仰っていましたが、若いみなさんも遠慮なく一度行ってみてください!





隣町珈琲
〒142-0053
東京都品川区中延2-6-2

荏原中延(えばらなかのぶ)駅改札を出て商店街を右方向へ4分。最初の信号を右折してすぐ。

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