今月の特集1

特集1
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 4月22日、ミシマ社より『健やかに老いるための時間老年学』(大塚邦明著)が発刊しました!
 元気に老いていくためには、からだのなかに存在する生体リズムを整えることが重要。
 その根拠と実践方法を、医学的根拠に基づいてお届け・・・と書くとなんだか難しそうに聞こえますが、ノンノン、まったくそんなことはありません。
 読みものとしてもおもしろいのはもちろん、大塚先生の優しい語り口にするするページが進みます!

 そしてなんといってもぜひ、「働く人たち」に読んでほしいという切実な思いがあります。

 なぜなら・・・。
(右図参照)
 こうなるからです(きっぱり)。

 けれど早く帰ることができなかったり、3食しっかり食事を取るのが難しいお仕事もたくさんありますよね。
 実際に働いている人たちは、仕事と身体のバランスだったり、健康のことだったり、どんなことを考えているんだろう?
 そう思い、株式会社はてな・社長の近藤淳也さん、フリーランスでデザイナーをされている矢萩多聞さん、PHP研究所で編集者として働かれている小笠原綾さんにお話をうかがいました!

 働き方、そして社長・フリーランス・会社員という立場もまったく異なったお三方から、いったいどんな話が飛び出すのか?
 はてなのまかないランチ(取材当日は、新ジャガまるごとオーブンとスナップエンドウのカレー・大根ときゅうりの和風ピクルスサラダでした!)をいただきながらお送りします。

(構成:新居未希、市道野愛 写真:新居未希)

働くからだ 矢萩多聞×近藤淳也×小笠原綾

2014.04.25更新

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1日昼寝をしていても、誰も怒らないけど・・・

小笠原フリーで働いている多聞さんにお聞きしたいんですけど、たとえば1日昼寝をしていても、誰も怒らないですよね?

矢萩まあ、編集者には怒られますけどね(笑)。僕の家は自宅兼事務所で、一応部屋としては分かれているけど、働く場所と生活する場所がつながっている。「怠けちゃいませんか?」とか、よく聞かれますね。

小笠原うんうん。

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矢萩最初はすごく適当にやっていました。23歳くらいまで実家暮らしだったけど、仕事がだんだん増えてきたので「一人暮らししようかな」と家を借りて。そうするとみなさんの想像通り、仕事がうまくいけば1日寝ていてもいい。逆に言うと、1日中仕事していてもいいんです。外部からの接触がないと、ずっとデザインをしていたり・・・そういう日々が結構続いたんですね。

近藤切れないんですか? 集中力。

矢萩切れたら、寝る。

小笠原わかりやすい(笑)。

矢萩でも、そしたら身体がしんどくなってきて。眼もすっごい疲れるし、肩こり、頭痛、腰痛もひどくなってきて・・・これはやばいんじゃないかと、針とか整体に通って、なんとか健康を取り戻そうとしてました。

近藤日頃、「無理してる」って意識はなかったんですか?

矢萩なかったですね〜。今思うと、自分の気持ちに身体がついていかなかったのかな、と思いますね。


合理的にすると、おもしろくなかった

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矢萩けれどあるとき『こちら亀有公園前派出所』の作者の、秋本治さんのドキュメンタリーを見たんです。それが衝撃で。

小笠原へぇ〜。

矢萩毎朝定時に仕事を始めて、お昼になると時計から音声が流れるんです。そうするとみんな一斉に作業をやめて、ご飯を食べる。夜も、定時に「6時になりました」っていうアナウンスが流れると、ペン入れとか途中なのに全部バンってしまっちゃうんですよ。

近藤へえ〜、会社みたいですね!

矢萩秋本さんが「このやり方だからこそ、何十年という連載を続けられたんです」と言ってるのを見て、僕もそれを真似しようと思ったんです。朝は「何時に仕事をスタートする」と決めて、お昼の時間も決めて、仕事して。

近藤なるほど。それで、身体は治りました?

矢萩身体は治りました。ところがそうやって合理的にやってると、今度はデザインがおもしろくなくなってくるんですよ。

小笠原えー! なるほど、合理的なデザインになっちゃうんですね。

矢萩たとえば旅でも、何の計画も立てない、行き当たりばったりの旅と、がっちり計画されたパックツアーとは違いますよね。デザインも、予測しないものが与える影響が大きい。そのことに気がついて、崩しの作業に入りました。

近藤崩すのにもテクニックはあるんですか?

矢萩うーん、いかに意図的にやらないか、ですかね。それまでは朝にお弁当を作って昼に食べてたんですけど、そうじゃなくて朝からずっとお昼ご飯を作ってる、っていう日があってもいい。そういう脱線をあえてOKにしていくと、最初の「まるっきり野放し」でやっていた頃とは違う集中の仕方ができるようになりました。

小笠原メリハリがついて。

矢萩フリーでやっていても、人それぞれだと思うんですよね。きちっと時間通りにやったほうがうまくいく人もいるだろうけど、僕の場合はそれでは味気ない暮らしになってしまった。

近藤いろんな種類の仕事をするってこともあるかも知れませんね。毎回違う色を出さなきゃいけないっていう。

矢萩そうですね。仕事の量もその都度変わってきますしね。だから今はほんわかした区切りでやってます。子どもの幼稚園の送り迎えとか、突然三島さんに呼び出されたりとかね(笑)。


逃げ出したい、全力で走り続けたい!

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近藤僕は、結構身体の波は大きいほうだと思いますね。でもやっぱり、集中するところと崩すところのバランスはある気がします。

矢萩へえ〜。

近藤会社で毎朝10時に「朝会」っていうのをやるんです。社員全員集まって挨拶して、昨日あったことの報告や今日の予定を言う場なんですけど、僕はこの朝会をすごく大事にしていて。それをやらないと仕事が始まった気にならないんです。役職上結構自由なんで(笑)、そういう規則性みたいなのは大切にしたいなあと思ってます。

小笠原なるほど。

近藤ただ、ノリはじめると「ここぞ」ってときに無茶したくなる自分もいるじゃないですか。あの、『ショーシャンクの空に』って映画がありますよね? なんか、ああいう感じで脱走したいときがある。

矢萩「ああいう」って(笑)。

近藤「逃げ出したい!」っていう衝動ないですか?

小笠原あります、あります!

近藤「これ以上前には進めない!」っていう力で、全力で走り続けたい、みたいな。そういうときにゆっくりとか言ってられないじゃないですか。

小笠原うん、うん。

近藤仕事の上で、自分たちがどれだけの速さ・制度でやるかによって勝負が決まるみたいなシチュエーションのときは、そういうふうになりたい、無茶する自分が結構好きみたいなこともあるんですけど(笑)。

小笠原あはは(笑)。

近藤でも、反動が来て、完全にダメ人間みたいになっちゃうんですよね。

矢萩ええ! 廃人みたいに?

近藤はい(笑)。


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*明日は最終回、第3回をお送りします!

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矢萩多聞(やはぎ・たもん)
1980年横浜生まれ。中学1年生で学校に行くのを辞め、インドに渡り、絵を描いたり本をつくってこられた多聞さん。5月初旬に、『偶然の装丁家』という本を晶文社の「就職しないでいきるには21」シリーズから出版されます。
 多聞さんは、事務所などには属さず、個人で装丁などのデザインをされています。フリーランスだからこその困ったことって、一体・・・?

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近藤淳也(こんどう・じゅんや) 1975年三重県生まれ。京都大学理学部卒。同大学院を中退後、2001年に「人力検索サイトはてな」を開始し、有限会社はてなを設立。2004年に株式会社はてなに改組。京都・東京の2拠点体制。 そんな近藤さんが社長を務めるIT企業「株式会社はてな」は、ブログやソーシャルブックマークサービスなどの開発・運営を行うため、一日中パソコンに向かっていることもザラ。

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小笠原綾(おがさはら・あや) 1985年東京都生まれ。幼少の頃から教師になることをずっと夢見てきたはずなのに、大学在学中のある日、「そうだ、編集者になろう」とふと思い至り、即日方向転換を遂げる。 現在は、出版社・PHP研究所で「PHPスペシャル」という女性向け月刊誌の編集を担当されています。編集部はなんと小笠原さんを入れて3人(!)というから、お忙しさはきっと想像以上でしょう・・・。

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