今月の特集1

 今月20日(金)、ミシマ社から『「消費」をやめる~銭湯経済のすすめ』(平川克美著)が発刊されることとなりました。大きな反響をいただいた『小商いのすすめ~「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』の発刊から約2年半。

 そのあいだに「小商い」という言葉は時代の方向を示すキーワードとして、さまざまな媒体で目にするようになりました。そしてそれと同時に、著者の平川克美先生ご自身の生活の「小商い」化もまた、どんどん進んでいたのです。

 今まであまり語られることのなかった、消費第一世代=団塊の世代としてのご自身の消費原体験や、株主資本主義ど真ん中のビジネスの経験。そしてマクロな視点で振り返る、戦後70年間の日本の消費化の歴史。

 その2つが重層的に語られ、次第に平川先生が最近実践されている「銭湯経済」という暮らしのあり方へと、話は進んでいきます。
 私たちの未来のあり方の可能性のひとつを描き出す一冊、どうぞご期待下さい。

 今回のミシマガジンの特集では、発刊に先行して本書の一部を公開するとともに、『いま、地方を生きるということ』の著者、西村佳哲さんとの発刊記念対談も掲載いたします。どうぞお楽しみください!

「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ

2014.06.06更新


 ひとことでいえば、それ(小商い)は「定常経済」を実践する会社ということで、右肩上がりの時代が終わった、その次のフェーズにもっともフィットした会社形態だということになります。小商いとは会社の規模ではなく、常に右肩上がりを宿命づけられ、売上拡大という「株主の声」に追いまくられている状態から脱して、自分たちが本当にやりたいこと、生きることと同義であるような働き方を見つけ出せという「天の声」に従う会社経営のことだったのです。

――はじめにより



 本書をつくっているあいだ、わたしは、自分がお話ししたとおりに、自分の会社を小商いスタイルに改変し、次に自分の生活を変えようと思い立ちました。
 わたしが生まれ育った池上線沿線に、仕事場も、遊びの場も戻してみようと思い立ち、すぐに実践することになりました。
 そして間もなく、朝起きると、生活が一変していることに気がついたのです。
(中略)

 朝ゆっくりと起き、仲間とつくった喫茶店でコーヒーを飲み、てくてく歩いて近くにあるオフィスで仕事をし、仕事終わりに手拭いを肩に銭湯に行き、帰宅してちょっとした料理を作り、本を読み、就寝。四五〇円の銭湯代はかかりますが、家で無駄に水道を使うことがなくなった分でまかなえます。おカネを使わなくなりました。

 正確にいえば、おカネは使っているのですが、消費の方向が明らかに変わったのです。
商品棚の商品を見ているうちに、所有欲を刺激されて、ついつい買ってしまうというようなことは起きなくなりました。なぜなら、商品棚を眺めるということ自体、しなくなってしまったからです。これまではいちいち買いものをするのが面倒なので、食品などは買いすぎて腐らせたりしていたのですが、いまは必要なときに必要な分量だけ買うようになりました。

 職住接近し、不要な買いものをしなくなった分、何もしなくてよい時間が増えました。日々のリズムが変わらず、定常経済的な生き方ができるようになると、その変わらない日々が新鮮に見えてくるから不思議です。

 自分でも実践してみて、本書で語っているような風景とは、人口減少して老齢化していく日本の近未来を先取りしているのではないかと実感するようになりました。
 消費資本主義全盛のいま、消費について真正面から考え、考えたことを実践してみることは、わたしが当初思っていたよりもはるかに多くの変化を生活にもたらしてくれました。
本書を手に取っていただいている読者のみな様にも、その変化を味わっていただければ
幸いです。

――はじめにより


*次回は平川先生の消費の原体験と、時代の価値観の大きな転換についてお送りします。

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平川克美(ひらかわ・かつみ)

1950年東京生まれ。1975年、早稲田大学理工学部機械工学科卒業。渋谷道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを内田樹らと共に設立、代表取締役となる。現在、株式会社リナックスカフェ代表取締役。立教大学特任教授。著書に『小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』(ミシマ社)、『ビジネスに「戦略」なんていらない』(洋泉社新書y)、『株式会社という病』(文春文庫)、『経済成長という病』(講談社現代新書)、『移行期的 混乱―経済成長神話の終わり』(筑摩書房)、『俺に似たひと』(医学書院)などがある。


『小商いのすすめ』
平川克美(ミシマ社)

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