今月の特集1

 ミシマガジンが月刊誌『PHPスペシャル』をジャック!?
 『PHPスペシャル』8月号は、なんとミシマ社とPHPスペシャルの協同編集号。のっとり企画会議からはじまり、ついに7月10日に発売となりました!

 特集「どうしても許せない人」では、だれもが持つ負の感情を、どのように捉えていけばいいのかを探っています。
 ミシマガではこの特集「どうしても許せない人」の一部を、PHPスペシャル誌上とは異なったバージョンで掲載します!

 前2回では、ミシマガジン読者の方々と「あの人だけは許せない!」と題して座談会を行ったり、そこから出てきた悩みを、里中満智子さん、安田登さんのおふたかたにお答えいただきました。
 なんと今回は番外編、安田登さんにさらに2つの相談にお答えいただきました! スカッとする、味のある回答、ぜひお楽しみください。

 また、協同編集することになったことの顛末は「PHPスペシャル×みんなのミシマガジン」で詳しくレポートしておりますので、こちらもあわせてお楽しみ下さい。

どうしても許せない人 番外編

2014.07.12更新

 さほど親しくない友人が、酔っぱらった勢いで私のお気に入りの鞄の中に激しく嘔吐しました。
 しかしどうやらすべて記憶にないようで、謝罪のひとつもありません。
「しょうがないか」と思いつつも、顔を見るたびに、思い出してはもやっとしてしまう自分がいます。


 おお、これはすごい! さすがにこれほどの人は、自分の周りにはいないなぁ。酔って記憶になくすいうのはまだしも、そこで謝罪のひとつもないというのは論外。冗談じゃない。

 でも、あなたにも問題があります。それはその人のことを「さほど親しくない友人」と書いていること。まず、最初にすべきことは、その人を「友人」と呼ぶのを今すぐやめることです。できれば知人であることもやめたほうがいい。本当は顔を見る機会すらなくしたほうがいいのですが、そうもいかない場合は、その機会を極力減らすように努力しましょう。

「よくよく考えてみれば友人と呼べない」、そんな人を「友人」と呼ぶ、そのような偽善的な人間関係(ってあえて言えばね)は、それが必要な時期もありますが、一生そんなことを続けていると結局は「友人」がひとりも残らないという結果になります。定年直前になって「知人は多いけれども友人はいない」と気づく。仕事をやめた途端に潮が引くように周囲から人が誰もいなくなる。そんな結果になります。

 自分だって嫌いな人がいるように、あなたを嫌いな人もいるのは当たり前のこと。「世の中の半分の人から嫌われても当然」と考えれば、日本人だけでも5,000万人以上の人から嫌われてもOKなのです。これを機会に友人や人間関係の整理をするのもいいかも。


 会社の上司から理不尽なことばかり言われ、言い返すこともできずすごく暗い気持ちになります。
 会社を辞めたくはないのですが、このまま耐え続けるしかないのかと思うと......。
 いったい、どう対処すればいいのでしょうか。


 いますね、こういう上司。思わず「お前がやってみろよ」と言い返したくなります。言えませんけどね。しかも残念ながら、こういう上司はどんな職場に移っても、ひとりやふたりは必ずいるでしょう。おそらく人間社会で生きているかぎり、このような上司からから逃れることはできないでしょう。

 明治の文豪、夏目漱石も「とかくに人の世は住みにくい」と書きます。その住みにくさが高じると、もっと住みやすいところに引っ越したくなる。しかし、どこに引っ越しても結局は住みにくい、そう悟ったときに「詩が生れて、画が出来る」と漱石はいいます。

 漱石の小説『草枕』の主人公である旅する画家は、人が作った限り人の世は住みにくいと悟り、それならばと、旅の途上で会った人々を、能の主人公に見立てようと決めます。能の主人公の多くは幽霊です。あの世から再びこの世に現れた幽霊が、昔のことをあれやこれやと語ります。話の流れも荒唐無稽、役者の動作もゆっくりしていて、この世の約束事や時間とは遠く離れた世界で物語が進みます。

 漱石の主人公である旅する画家は、いま現実世界で起こっている、さまざまなやっかいごとを、能の中で起こっていることだと見る練習をする。そうすればあらゆることが詩になり絵になるというのです。

 そのムカつく上司を能の主人公だと見ることはさすがに難しいでしょうが、自分を物語の主人公と考え、その上司を脇役だと思ってみる。ドラマにはよく出てくるでしょ、こういう上司。ドラマの主人公の中には、そんな上司を殴って会社を辞めてしまう人もいますが、それに耐えてあとで見返す、そういう主人公もいます。

 自分が物語の主人公だったら、その上司に対してどういう態度を取るか。あるいは、どうやってそれに耐えるか。それを研究するためにドラマを見たり、小説を読んだりするのもいいかも知れません。

 最後に、あるドラマのセリフをひとつ紹介しましょう。

「お説教には頭が下がる。頭を下げればお説教は頭の上を通りすぎていく」


--------------------------------------------------------------------
・・・いかがでしたでしょうか?
『PHPスペシャル』8月号では、安田登さん、里中満智子さんに、このミシマガジン掲載とはまったく異なる3つの相談にお答えいただいています。こちらもあわせてチェックしてみてください!

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

安田登(やすだ・のぼる)

1956年千葉県生まれ。高校時代、麻雀とポーカーをきっかけに甲骨文字と中国古代哲学への関心に目覚める。高校教師をしていた25歳で能に出会い、現在は能楽師のワキ方として活躍する傍ら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を主宰。『あわいの力』(ミシマ社)など著書多数。

バックナンバー