今月の特集1

 『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫)をはじめ、モード、ファッション、服を着るということを、私たちに伝わる言葉で語ってこられた、哲学者・鷲田清一さん。
 一方、writtenafterwardsを手掛ける山縣良和さんは、1980年生まれのファッションデザイナー。「日常生活で着る服」という概念をドカンと飛び越えたような、生々しい服の数々を生み続けています。

 次々と変わる流行、ファストファッション......服で溢れるいま、服を着るとは、ファッションとは何なのだろう?
 山縣さんが鞭をとる京都精華大学の学生さんたちを聞き役に、時代も世代も飛び越えたおふたりに、語り合っていただきました。

 4回目の今日は、京都精華大学の学生さんたちが、鷲田先生に質問タイム!

(構成・写真:新居未希)

山縣良和×鷲田清一 いま、ファッションを考える

2014.11.20更新

【番外編】鷲田先生に、質問!

 鷲田先生に聞きたいことを質問できるなんて、こんな機会、滅多にない!
 ということで、聞き役に徹してくれていた精華大学の学生さんたち、質問タイムです。


Q 現代人は、流行や他人の視線をすごく気にしていると思うのですが、その中でなにを求めているのでしょうか。

鷲田みんなと一緒でないと不安なんだけれども、まったく一緒やったらかなわん、ちょっと気に食わんっていうところが、人間にはきっとあるんですね。人と同じは絶対にいやなんやけど、大体一緒やないとこわい、そういう弱さが人間の中にある。本にも書いたけど、大阪では「上から下まで自分と同じ服を着た人とすれ違ったら翌日死ぬ」っという都市伝説が在るんです。

山縣僕、授業でそれ引用しました。見た目がまったく同じ人に出会ったら気持ち悪いでしょ、想像してみてって。

鷲田遠くから見たら、日本人てみんな同じに見える。外国に長期滞在して日本に帰ってきたとき、空港の上の階から見たらみんな黒い髪でびっくりしちゃって。遠くから見たらみんな一緒なんやけど、近くから見たらみなしっかり違う。それがファッションだと思います。美大の学生とか敏感な人は、流行から外れるのがかっこいんでしょ。流行を気にしている人を、見下すのがファッション!?(笑)


Q 「かっこいいファッション」って、何なのでしょうか。

鷲田「かっこいい」ものにふれるとトキメいてしまいますよね、「こんなのもあるんだ、へえ」って。僕らって嫌でも「こんなふうに」というものに縛られているじゃないですか。そんななかで、「こんなアイデアもある」って実物を見せられてガーンと来る。そういう意味ではファッションデザイナーって責任重いかもね。どんなふうに振る舞ってるかもいつも見られている。
 やっぱり、とんでもない格好して町を歩くには勇気いるし、またそういう人たちって群れない。そんなのを見てると勇気をもらえるよね、「こんなのもありなんや」って。

山縣僕は最近、それが愛おしく見えてきて。前は奇抜な格好の人は避けてたんですけど、最近リアルでああいう格好している人をいると、大事にしてるんだなって思えて、愛おしいです。

鷲田ファッションの最前列に立っていたいって10代の子、いるじゃないですか。あれ見ると切ないね。がんばってるなって。そのままがんばってほしい。


Q 鷲田さんから見て、ファッションの魅力ってなんですか?

鷲田服って人を支えたり、救ったりしているなって思います。服って限界だらけじゃないですか。アートとして考えても条件が多い。なのに、みんなよくこんなに想像力もってるなって。20世紀はファッションが動いた、開花したって言われることが多いけど、ヴィヴィアン・ウエストウッドは全然そうではなく、「19世紀はもっと激しくてエキセントリックだったのに、20世紀は想像力が貧しくなった」って言っている。だからパンクのあと、90年代入ってからは意外と19世紀的なファッションに戻っていったでしょ。
 白衣なんかでも、僕らからしたら医者が患者から距離を取るためにあるように見えるけれど、コミュニケーションが苦手な若い医師にとっては、白衣が盾になる。それに助けられている。彼らが普段着のままで患者さんの前に出たら、きっとビビってしまう。警察官もそうだと思う。ひとりで交番にいるなんて絶対怖いものね。明治時代の小学校の先生はたいてい三つ揃いを着てました。昔から不思議だったんだけど、当時は教育ってものがとても重い仕事だったので、ああいうきちんとした格好していないと自分を支えきれなかったんだと思います。


Q 私は、男性にスカートをはいてもらいたいと思ってるんです。でもそれも世間の目があって、たぶん履いてくれないかなって......。

鷲田僕が大阪大学にいたとき、学生は2万5千人も通っているんだけど、そのなかで2人だけ男性でスカートを履いているのがいましたね。その2人とも僕のゼミ生で(笑)。ファッション意識の高い子だったらたいした抵抗ないんじゃないかな。

―― 私はそれを普通にしたいんです。「男のスカートが当たり前」って。

鷲田なんでも当たり前になったら逆につまんなくなるでしょ。それが人間の想像力で情けないところで、どこかに禁止がないと燃えない、壁がないと戦えない。親に「キミは何にでもなっていいんだよ」っていわれたほうがかえってしんどくて、逆にいろいろ「だめだ」といわれたほうが、こっちは自由になれる。何にでもなれるってものすごいしんどい、そしてそのなかで何かになれなかったときはもっともしんどい。だから、なんでもやってみたら? すごい格好のあなたと町で遭うの、楽しみにしています。


    

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

山縣良和(やまがた・よしかず)
1980年鳥取県生まれ。ファッションデザイナー。
2005年、セントラル・セント・マーチンズ美術学校卒業。ジョン・ガリアーノの デザインアシスタントを務めた後、帰国。2007年、自身のブランド「wittenafterwards(リトゥンアフターワーズ)」設立。2012年日本ファッションエディターズクラブ新人賞、2014年毎日ファッション大賞特別賞受賞。2014年、初のベーシックラインとなる「written by」を立ち上げた。
また、ファッション表現の実験、学びの場として、「ここのがっこう」を主宰している。
著書に『ファッションは魔法』(坂部三樹郎との共著、朝日出版社)がある。


鷲田清一(わしだ・きよかず)
1949年京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。関西大学教授、大阪大学教授、大阪大学総長などを歴任。現在、大谷大学文学部教授、せんだいメディアテーク館長。
著書に『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫)、『ちぐはぐな身体』『ひとはなぜ服を着るのか』(ちくま文庫)、『おとなの背中』(角川学芸出版)、『パラレルな知性』(晶文社)、『「自由」のすきま』(角川学芸出版)、『哲学の使い方』(岩波新書)など多数。

バックナンバー