今月の特集1

 アジカンことASIAN KUNGU-FU GENERATIONのボーカル、後藤正文さんと、建築家・光嶋裕介さん。2014年5月、代表・三島を加えた三人で、「僕たちの世代」と題した鼎談を行いました。これからの建築、音楽、出版のこと、そして「受け手」から「渡し手」に変わってゆくのだというバトンのこと。じんわりと何度読んでも染み入り、そして考えることの多い、このうえない時間でした。

『Wonder Future』ASIAN KUNGU-FU GENERATION

 そんな鼎談から、ちょうどもう1年がたったのか〜と思っていた、2015年5月末のこと。2年8カ月ぶりとなるアジカンの最新アルバム『Wonder Future』が発売になりました。7月5日からは、ツアーで全国を巡られるそう。そしてそのツアーの舞台設計を、なんと、光嶋さんが担当されるんだとか!

 光嶋さんが設計をされた内田樹先生の自宅兼道場「凱風館」をまたまたお借りして、ことの経緯や、どんなステージになるのか、お二人にお話しを伺ってきました。そして二人が語る、ライブをみる、する、そして「つくる」とは?
 7月からのツアーがますます楽しみになる対談、全3回でお届けします!

(聞き手:三島邦弘、構成:新居未希、写真:中谷利明)

ライブ、みる・する・つくる 光嶋裕介×後藤正文

2015.06.26更新


光嶋さんに頼んだ理由

―― まずはじめに、今回のツアーでは光嶋さんに舞台設計を頼まれたとのことなのですが、普段のほかのライブやツアーでは、ステージはどうされているんでしょうか?

後藤まず会場がライブハウスだと、そのライブハウスの照明しか使えないので、ありものでやる形になります。ツアーとなると専門のチームがいるので、デザイナーさんや建築家の方に特別に依頼するということはほぼないですね。アジカンが主催するロックフェス・NANO-MUGEN FES.は、柳真一郎さんという方に演出をやっていただいているんですけれど。

『ワールド ワールド ワールド』ASIAN KUNGU-FU GENERATION

 2009年の『ワールド ワールド ワールド』というアルバムのツアーのときは、イラストレーター・中村佑介くんの絵を書き割り(背景画として使われる大道具のこと)で使いたいという話をしました。とくにステージデザインについてはコンセプトは持たずに、僕らはただライブをすることが多いですね。照明や舞台装置はお任せします、と。......でも思い返すと、僕、わりといろんな注文をしている気がします。「何曲目までは白い幕を垂らしてください」「曲が終わるタイミングで紙ふぶきを吹き上げてくれ」とか(笑)。

 洋楽のライブやフェスから、かなり影響を受けていると思います。RadioheadとかBjorkとか、いつも先進的なセットを組むんです。カニエ・ウェストのステージセットがすごい豪華だったりとか。観ていて面白いんですよ。

光嶋建築家が、舞台や演劇、お芝居、コンテンポラリーダンスなんかに関わることはよくあります。たとえば彫刻家のイサム・ノグチがマース・カニングハムのダンスの舞台美術をやっていたり、日本でも、岡田利規さんの「チェルフィッチュ」という演劇ユニットの舞台を、若手建築家のトラフが設計したりしています。
 僕は今回依頼を受けてから、とにかくアジカンの新アルバム『Wonder Future』を身体が振動を覚えるように、聴き込んでいます。そこに、舞台美術がどういう距離感で接することができるか。デザインをするときに、主役・脇役ということではなくて、「音楽の邪魔にならないものを作ろう」と思ったんですね。

 たとえばPV(プロモーションビデオ)というのは、音楽と一対一で物語性がきれいに重なっています。それを聴いている人たちは、音楽という目には見えないものを歌っているバンドを見ながら、歌っている歌詞にリンクしていって、その映像が動いていくわけですよね。PVは、映画のように時間の芸術として重なるものだと思うんです。ライブだってPVを生で見れるんだと考えると、近い部分もあるのかもしれないけど、それだと少ししんどいかなと思った。だから、「どうやってエンターテーメントとしてアジカンの音楽に形を与え、その豊かさの発見のための相乗効果を生むか」ということを一番に考えて進めました。

―― ステージを作ったりされる方はいろいろといるなかで、後藤さんは、今回何を光嶋さんに一番期待してご依頼されたんでしょうか?

後藤いまも勝手に話してくれたみたいに(笑)、もう、僕が何か言う前にやってくれる感じがしますよね。バイタリティがすごいんですよ。
 まずツアーのことを考えたとき、ステージ上に「街を建てたい」と思ったんです。『Wonder Future』は架空の街を歌っているアルバムだから、本当に白い建物をホール内に建ててもらって、そこに曲ごとに違う街が映ったりしたら面白いんじゃないかなと。
 それをどんな人に頼んだら面白いかなと考えたんですけれど、たとえば映画監督の方にお願いすると、「どこの街の映像を撮ってくるか」という話になってくると思うんです。そう手法ではなくて、実際にビルとかを建築家に建ててもらったほうが、見た目的にも面白いんじゃないかと思ったんですね。誰もやってないし。

 ということをぼんやり考えていたときに、ちょうど東京でやられていた光嶋さんのドローイング展を観に行ったんです。そのとき、「このままこれを建ててもらえばいいんじゃないかな?」と思って。アートや舞台美術に接続している建築家の方は、たくさんいるわけではないですから。それに若い人とやりたいという気持ちがあったんですよね。世代が近い方が、遠慮なく一緒に作り上げていけるんじゃないかなと。
 光嶋さんは本当に、思い描いた通りにやってくださっています。というか、それ以上ですよ。思っている以上にのめり込んできてくれて嬉しいです。でもやっぱり、そういう人じゃないとね。僕たちもやったことないから、聞かれても「それです」とは答えられないので。

―― 答えがあるわけじゃないですもんね。

後藤お互いのアイデアを持ち寄って、いい意味で化学反応が起こらないと面白くないだろうし、言った通りのことを実現してもらっても、普通のものになってしまうと思うんです。だからもう本当に、「光嶋さんだったら面白いんじゃなかろうか」くらいのものでしたね。それは勘でしかないんですけども。



指揮者的建築と作曲家的ドローイング

光嶋当然ですが、建築って、建築家一人で作れないものではないんですよね。建築家は、現場において、オーケストラでいう指揮者的な存在です。オーケストラを形成しているプレイヤー、ようするに建物を作ってくれる職人の手をたくさん上手に束ねる必要があるんです。とはいえ、たくさんのファクターを指揮者として統合していくということを考えると、建築家も一種のプレイヤーですよね。


後藤うんうん。

光嶋「こういうことがやりたい」という、いわば作曲家としての建築家の部分が根っこにあって、僕にとってはそれこそがドローイングなんです。そのためには、自分と向き合う孤独な時間が大事になってきます。
 逆に、いろんな人と共同作業をする指揮者的建築の仕事は、独りよがりではできない。建築は一人では決められないんです。最初のアイデアはもちろんだし、指揮者的にこういうふうに弾いてくれないか、こういうふうに作ってくれないか、という想いを伝えるコミュニケーションが大切なんです。

 一方でドローイングは自分が紙と一対一で向き合うので、言い訳もできない。ドローイングに描かれているものに対して、自分の感覚を信じ、自分が責任を持って描いているわけですから。もちろん楽しみながら、いいと思う風景を描いている。創造の種ですね。その両輪をやっていく必要があるなかで、Gotchさんとの出会いがドローイングなどを展示した僕の個展を観てもらったところから始まったというのは、すごく大きなエネルギーになっています。

  僕は他者と仕事をする建築設計においての想像力を働かせるために、ドローイングという違う場所で井戸を掘っている感覚があるですが、それらは結果的に二つの違うものではない。水脈は同じというか、それを意識し、接続するために描いているんです。
 だから今回のツアーでは、セットデザインと言いつつも二つのことをやっています。ベースとなる、どこにもない、でもどこにでもありそうな街を、まず白いキャンバスとして設計し、舞台の上に建ち上げる。そこに描いた幻想都市風景のドローイングを映写したり、ライティングをしていくというふうにして、多様なライブ空間を作っていく。アジカンのロックなサウンドを気持ち良く感じてもらうための「スペクタクルな空間」の装置を目指しています。

後藤なるほど。源泉が同じだけど役割の都合で普段は分かれているものが、今回は同時にステージの上に立ち上がると。へぇ......それは面白いですね。あ、へぇとか言っちゃった(笑)。



後藤さんが観に行かれたという、光嶋さんのドローイング展「幻想都市風景」@ときの忘れもの での様子


<つづきます>


ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour2015「Wonder Future」

7月5日@埼玉を皮切りにはじまる全国ツアー、
チケットや会場など詳細は【特設ページ】
http://www.akglive.com/wonderfuture/をご覧ください!


    

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