今月の特集1

 自由と平和のための京大有志の会の藤原辰史先生にもご協力いただき、8月10日に京都大学で開催された「〈戦争できる〉国にしないためのちゃぶ台会議 -戦後70年、元海軍兵の言葉を聴く-」
 93歳の元海軍兵、瀧本邦慶さんの力強い肉声をもって語られる怒りの言葉に、会場はただただ圧倒されました。
 軍国少年だった瀧本さんは、戦地で餓死寸前にまで追い込まれたとき、「戦争はあってはならない」と確信したそうです。(瀧本さんの肉声音源はこちら)。
 近い将来、「戦争を知らない世代」しかいなくなり、「戦争経験者を知らない世代」が現れる時代が必ずやってきます。そのような時代が来る前に、今、私たちは何をなすべきでしょうか。このような声を後の世代に残していくことも、今を生きる我々の大切な使命であるように思います。
 経験したものにしか語れない戦争の真実を、実際の音声とともに、今日から3日間お届けします!

(構成:田渕洋二郎、構成補助:米田愛恵)

〈戦争できる国〉にしないためのちゃぶ台会議 戦後70年、元海軍兵の言葉を聴く(1)

2015.09.01更新



はじめに (瀧本さんの肉声音源はこちら

      

 京都のみなさん、こんにちは。瀧本と申します。今日は大阪からやってまいりました。今日はせっかくの機会でありますので、私の戦場体験をお伝えしたいと思います。私がこれから話をすることの中にかなりきつい言葉がでると思います。

 それはもしかしたらみなさんの耳に対しては非常に激しい言葉になるかもわかりません。
 ですが私にしてみると、すべて事実ですから、何もきつくもなにもないわけです。私の話をひと通り聞いていただいたうえで、戦争はイエスかノーか、これをみなさん、それぞれのご自分の頭で考えて、答えをだしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 話の順序としましては、最初、戦争前の世相。二番目、ミッドウェー海戦。三番目、南洋のトラック島駐留作戦。最後、四番目が結びの言葉。
 この順序でよろしくお願いいたします。


戦前の世相 (瀧本さんの肉声音源はこちら

 私は昭和14年、17歳で海軍に志願をして入りました。
 戦前の世相といたしましてはね、昭和12年に日中戦争が始まりました。当時は、日清・日露以降、何十年も軍国主義最高潮の時代です。小学校1年生になったときから、「男の子は20歳になったら兵隊さんになる」とか「戦死をして靖国神社へ祀ってもらう」ことが男の最高名誉だとずっとずっと教えられてきたわけですね。
 学校の教科書は全部国定の一本だけ。学校の先生は国定の本に書いてあること以外は絶対に生徒にしゃべってはいけない。今から考えるとね、想像もできないような世の中なんです。

 それで、日中戦争が始まった。中国大陸にたくさん兵隊を送る。20代、30代の男はどんどん招集される。
 戦死者が出て戦死者の遺骨が帰ってくればね、各市町村では合同の葬儀をとり行います。その席でお母さんが涙を流しながら息子の遺骨の箱を祭壇へ載せます。その時にね、「この場で、涙をながすとは非国民だ」と言われるんですわ。どない思います? 大事な可愛い息子が無理やりに戦争に引っ張っていかれて戦死して。その葬式に涙を流さない親なんておりませんでしょう? 涙を流して当たり前ですよ。一旦戦争になったらね、そのくらい人の心は変わってしまうんです。

 それで20代30代の働きざかりの男がどんどん招集を受けて戦地へ送られるから、当時の平均年齢50歳ですよ。だからもう60歳になったら大年寄りですねん。
 それで、男が出た後、誰がのこりますか。女性と子どもですね。それに年老いていく親も残ります。今みたいに保育所や幼稚園もないし、老人ホームも病院もない。だから病気になったって、家で寝込みます。その面倒も全部、女の人が見るんですよ。しかもそのうえ生活のために、今までそれまで働いておった男の仕事までやらないかん。
 だから残された女性はね、もう生き地獄です。それがしかも、ひと月やふた月で終わるんとちがいますからね。戦争やっとる間、何年続くかわからない。
 そういう中を女性は耐えてきたんです。
 誰も代わりにやってくれる人はおらんから寝る暇もないですよ。それが戦前の世相ですね。


ミッドウェー海戦 火の海となる船上 (瀧本さんの肉声音源はこちら

 次は、昭和17年6月5日のミッドウェー海戦。
 ハワイの北西にあります。海軍の航空母艦は、加賀、赤城、飛龍、蒼龍。この4隻が参加しました。この4隻が参加して、たった1日で全部やられたんですよ。海軍のそれまでの戦いは全部勝ち戦でしたから、始まるときは非常に油断をしておりました。あぁ、ミッドウェーか。また勝ち戦じゃ。と鼻歌交じりで行ったんですよ。

 ところがね、アメリカが、日本の海軍周りの無線を全部キャッチしとったわけです。暗号を解読して、艦隊の動きを全部知っとったわけです。こちらは油断をしておるから、そんなこと考えない。
 ある時、こちらの作業中に爆撃がきました。航空母艦は構造から言って他の軍艦とは全然違うんです。目に見えとるところは全部、格納庫。
 格納庫の壁の内側はガソリンパイプがずらっと並んでおります。そこを爆撃される。船は大パニックですね。爆弾を一発くらったら、航空母艦はもう大火災になるんです。ごろごろ置いてある爆弾が、その火災の熱によって爆発するんです。
 飛龍には1500人乗っておりましたが、1000人死にました。



司令官の判断ミスで犬死にする兵士

 そんな時に、司令官が命令を出しました。相手の空母が近くにおるとわかったからね。
 その敵空母を沈めなあかんから、「爆弾を下ろして魚雷を発射して沈めろ」という命令をしたわけですわ。
 でもこれが間違いなんですわ。考えたらわかるじゃないですか。爆弾一発落としたら母艦はそんでもう終わりやから、船なんか沈める必要ないわけですわ。火災が起きてその航空母艦としての戦力はゼロになりますからね。
 でもそれを考えないでバカな命令を出したわけですよ。すぐに取り消して、「爆弾のままでいいからいけ!」いうたらそんで良かったんですわ。

 それからずっと時間が経ってから、別の司令官が「飛龍に残っとる爆弾つけたまんまでいいから、その飛行機にすぐ出ろ!」ということになって、飛龍に残っとった飛行機は飛び立ったわけです。それで相手の空母を見つけて攻撃して、沈めました。
 でも、その時には飛龍も爆弾を受けて大火災になっていたわけです。
 だから飛龍から出た飛行機が帰ってきても着艦できないんですわ。そしたら船のうえをぐるぐる回ってね、ガソリンが切れて最後には海の中へ突っ込むんですわ。
 そんなんですよ。司令官が判断を間違うと下の何千何万の兵隊が、死なんでもええのに、無駄に命を捨ててしまう。こういうことが起こるんです。

 しかもその司令官というたらその失敗を認めない。責任を追及されないんです。司令官連がお互いにかばいおうとるわけですわ。
 しかもその作戦の失敗は、反省の会も何もやらないんですよ。同じ司令官が2回も3回も同じ失敗を他でもやっとるんです。


味方に向け魚雷を放つ駆逐艦

 爆発するものがなくなって燃えるものは全部燃えてしまった。6月の5日に攻撃されて、翌日の6月6日の朝の午前3時くらいには全部燃えてしもてね。不気味なくらい静かになりました。
 今度は艦長から命令が出て、「生き残った者は総員退艦せよ」というんですわ。

 航空母艦は他の軍艦と違って、非常に装備のほうに秘密事項が多いんですね。だから盗まれたら困るからという理由かわかりませんけど、わたしたちが助けてもらった駆逐艦から、味方のその飛龍に向けて、魚雷を2発発射したんです。
 こんなこと、ありえないことでしょう。
 ところがそれやったわけですよ。飛龍の土台の中央付近から、大きな火の玉がふたつ上がりました。これでもう沈むというのを確認して、全速力で内地へ向けて帰ってきたんです。

 駆逐艦は小さいから飛龍で生き残った500人も乗ったらもう、通路も何もいっぱいで、座ることもできないんですわ。
 それで、途中で止まって、戦艦がきて乗り移りました。その戦艦でも健康な者も負傷した者もみな一緒ですからね。怪我人のほとんどは火災による火傷です。
 だから焼けた肉が腐って臭いんですわ。気候は暑いし、ものすごく臭う。それで、毎日、程度の重い者から死んでいきます。海軍は船の場合は死者が出たら、全部水葬することになっています。海の中へ流すんですね。
 これももう人を物のように扱わないとやってられないんですわ。
 それに遺骨が帰ることはありませんから家族はもっと悲しみますよ。


隔離された理由

 まぁ、それがミッドウェー海戦のだいたいです。
 それで、ミッドウェーから帰って、私は病院船で佐世保へ行って入院しました。
 ところがねぇ、病院へ入ったら、「ミッドウェーから帰った病人は、この病棟へ入れ、一歩も外へ出てはいけない。他の病棟のものと接触してはならん!」という命令が出たわけです。おかしいこと言うやつやなぁと思いました。
 それである時、看護婦さんが、一週間くらい前の新聞を持ってきて見せてくれたんです。
 そのミッドウェー海戦の記事を見たらね、
「我が方の損害は空母が一隻大破、一隻撃沈された。」
 と書いてあるんです。本当は四隻全滅したのに半分しか載ってないでしょう? こんな嘘をついとるわけですわ。大本営発表が。その時にびっくりしましたね。だから本当の情報が漏れないように、真実を知っている連中が隔離されていたのかと。
 それで国民を騙しとるわけですわ。もう戦争は初めから全部嘘の突き通しやと思いました。


   

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