今月の特集1

 自由と平和のための京大有志の会の藤原辰史先生にもご協力いただき、8月10日に京都大学で開催された「〈戦争できる〉国にしないためのちゃぶ台会議 -戦後70年、元海軍兵の言葉を聴く-」
 93歳の元海軍兵、瀧本邦慶さんの力強い肉声をもって語られる怒りの言葉に、会場はただただ圧倒されました。
 軍国少年だった瀧本さんは、戦地で餓死寸前にまで追い込まれたとき、「戦争はあってはならない」と確信したそうです。(瀧本さんの肉声音源はこちら)。
 近い将来、「戦争を知らない世代」しかいなくなり、「戦争経験者を知らない世代」が現れる時代が必ずやってきます。そのような時代が来る前に、今、私たちは何をなすべきでしょうか。このような声を後の世代に残していくことも、今を生きる我々の大切な使命であるように思います。
 経験したものにしか語れない戦争の真実を、実際の音声とともに、今日から3日間お届けします!

(構成:田渕洋二郎、構成補助:米田愛恵)

〈戦争できる国〉にしないためのちゃぶ台会議 戦後70年、元海軍兵の言葉を聴く(3)

2015.09.03更新



2番目の奇跡。もしもいつもの防空壕に入っていたら... (瀧本さんの肉声音源はこちら

 毎日B29が空襲にくるんやからね。来たらやっぱり防空壕へ入りますやん。私らがおった島はちっさい長い島やったんですわ、そして防空壕はこっちに1つ、80メートルくらい離れた向こうにもう1つあったんです。こっちのは入り口がおっきいし、周囲がものすごい強固な岩盤になっとったんですわ。これはしっかりしとるなぁと思うて、毎日私はこっちへ入りました。もう1つの方はね、上は薄いし、頼りないから入れるかぁ思てね。そっちの防空壕へは一回も入ったことなかった。

 でもある日空襲が来た時に、ただ何となくもう一つの頼りない防空壕へ入ったんですわ。今まで入ったことがなかったのにはじめて。そうして空襲過ぎて出てみたら、いつも入っとる岩盤のとこへね、1トン爆弾が直撃してたんですよ。岩が細かく崩れて入口塞いでしまっとりました。これはえらいこっちゃと思てね、みんなお互い痩せて骨と皮とになっとるけど、そんなこと言うとられへん。しんどいの我慢してシャベル持って泥かきますやん。かいて、どけても上からザァーっと落ちてくる。どける、落ちる、どける、落ちる。これの繰り返しでね、やっと、穴がみえた。早く空気入れなあかんと思てね、入口がみえるまでは一週間かかりました。ほいで開けて入ってみたらね、20人くらいが死んどりました。空気が来る方へね、頭ガーッと突っ込むようにしてね。さぁ、その時に私思いました。なんでこっち、いつもの方へ入らんと向こうへ入っとったんやろう思てねぇ。こっち入っとたらもう、100パーセント生きとりませんよ。そうゆうことがあったんですわ。それが2番目の奇跡です。


3つ目の奇跡。もしもあの船に乗っていたら...

 3番目はね、23歳ぐらいの時です。私と同じ歳くらいの連中5人に転勤命令が来たんですわ。転勤命令っていってどこ行くんやってったら、フィリピンのレイテ島に転勤せいって命令ですわ。飛行機も船もないのにどうやっていくんやと思ったら、潜水艦だと。海軍が昔使っとった古い小さい潜水艦を晩に出す。毎回、1人しか乗れなくて、それで5人やから、順番決めないかんでしょ。私は、運の悪い事に、5番になりました。早く出たいのに最後まで待たなくてはいけなかった。それで、私の前の4番までは、予定通りトラック島からレイテ島へ行きました。あぁ今度俺の番やなと思った。ところがね、連絡がはいって、「お前が乗る予定だった潜水艦、相手の軍事機関に見つかって攻撃されて沈んだど!」ゆう連絡があった。涙が出るくらいつらかったです。一人取り残された感じがした。
 
 それから2か月くらいしてからね、通信兵が防空壕で内地のラジオを聞いとるんですわ。すると、レイテ島で大東亜戦争の最後の決戦があったと。陸軍海軍合わせての大決戦やった。その結果、日本は全員玉砕したというニュース。私それきいてね、びっくりしましたよ。レイテ島にたどり着いていたら、完全に玉砕ですやん。それが迎えに来た潜水艦が沈んだおかげで行けなかった。

 こんな奇跡考えられません。だからね、わたしはいま自分の力で生きとるとは全然思ってないんです。なんの力かわからんけど、何かの力によってわたしは生かされとると思うんですわ。だから生かされたものの責任として少しでも戦争の実情をお伝えするのが私の仕事やと思ってます。生きてる間の仕事はこれしかないと思いまして、語り部をやらせてもらっております。


一度起きたら誰も止められない (瀧本さんの肉声音源はこちら

 それでは結びに入ります。言いたかったことは、「戦争は一回起きたら誰も止めることはできない」ということなんですわ。そんなことはする前からわかってる。なのになぜ起きるんや。誰が決めるんやと、考えてみてください。戦争は国家のやることだからゆうて国民投票はやりません。あくる日、起きたら戦争になっとったというて知るのが関の山でしょ。そしたら誰が決めるんや。

 わたしは学校なんかで話すときね、どんなに憎まれてもいいから、私が思うとることをそのまま話します。戦争をしたいのは一部の政治家、一部の官僚、それに一部の財界の人間ですわ。これらがグループ組んで、共謀して決めるのが戦争やないかと思います。大多数の国民は戦争で大きな被害を受けて泣くんですよ。でもね、なんぼ人が泣こうがどうしようが、彼らは笑いが止まらないんですよ。武器産業とかね。兵器の金は全部国の予算から払うんですから、天文学的な数値のお金を儲けます。兵器を作る産業の奴らは一流会社で基幹産業ですやん。

 一旦戦争になったら、国の予算編成は根本から変わります。一番最初に削られるのは福祉予算。みんなの生活のために一番必要なものですよ。これは無制限に削られます。今でもすでに削られているじゃないですか。私の介護保険も掛け金が上がったんですわ。いったいどないなっとんのやと。福祉削った金はどこにいくんでしょう。それはやっぱり国の軍備の拡張に使われるんですね。最近テレビ見とったら、見たこともない大きな軍艦が映っとったですわ。昔の正規の空母よりもっと大きくてびっくりしました。国民の知らん所でそうやってどんどん金を使うとるわけです。


国は守ってくれない

 それともう一つ私は若者に言います。そういう財界の軍事資本の大儲けする陰でね、誰が泣くんやと。戦争に行くのは若者ですよ。こんな年寄りが行ったって使い物にならんのやから。若者の死と引き換えに、金儲けするんですよ。これが戦争なんです。そこのとこをとにかく知ってください。それを今の若者はピンときてない。この頃ちょっと変わって来よるけど。戦争は一回起きたらどんなことがあっても止められないんですわ。

 だからわたし、小学校6年生にも言います。いざ戦争になったら国は君たちの命を守ってくれないんだよと。自衛隊ははっきり国民の命を守らないと言うとんのやから。自衛隊は国民の命を守るんと違う。自衛隊の仕事は「国を守る」ことやと言うとる。国の何を守るんですか。主権者である国民の命を守らんと、もっと大事なものありますか。だから当てにするなということです。だから、自分の命は自分で守るしかないんですわ。どうやったら自分の命を守れるか。よう考えてみてください。国の美しい聞こえのいい言葉にだまされたらいかんのですわ。無駄死にしたらあかんと。親を泣かせたらあかんと。これが本音ですよ。他の理屈は何もいりません。わたしはそれを訴えております。



最後に (瀧本さんの肉声音源はこちら

 私が今こうして反戦平和運動やっております。ところが17歳で海軍入った時は完全に洗脳されて軍国少年でした。ときどき、「いつから変わりましたか」と聞かれるんですわ。そういう時、「目覚めたのはトラック島におった時ですわ」と答えます。食べ物がなくて、あるのは破滅だけ。これは国にだまされたなと思った。だって考えてみたら南洋のこのようなちっぽけな島で、食べ物がなくて、骨と皮で死んで、ヤシの木の肥やしになって何が国のためやと。こんな死に方は納得できない。戦争だから死ぬのは当たり前だけれども、死に様があるやろがと思ったんですわ。その時にね、お袋の顔が出てきましたわ。お母さんこんな死に方になってごめんねと。だからね、靖国神社はね、大反対なんですわ。ここほど国民を洗脳するのに利用された施設はありませんよ。自分も死んだらあそこに入ると思うとりましたよ。でも死んで花が咲くのだったら靖国神社は花だらけやわ。だからよう考えなあかんのです。みなさん怒ってください。大きな声を出して、怒ってください。そしてそれを選挙の時に爆発させる。これに尽きると思います。そしてわれわれにはその武器しかないわけですから。

瀧本さんのお話、通し音源はこちら



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お話を聞いて

藤原辰史先生私も祖父がトラック島に海軍で行った経験があるんですけれども、ほとんど戦争については語りませんでした。でもたったひとこと、「人間よりも怖いものはおらん」という言葉だけを残して、亡くなったんです。もし祖父が生きていて戦争のことを語ったら、こんな話をしたのかなと個人的にも心が動かされました。
 瀧本さんは思い出すにも苦しい記憶を、こうして声を上げ続けておられます。今日の話も大変迫力のある話ですが、ひとつひとつが詳細のデータと鮮明な記憶力に支えられている、重い重い言葉だったと私は思っております。瀧本さんに心から敬意を表したいと思います。ありがとうございました。

   

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