今月の特集1

 「下流老人」、「老後破産」など、なにかと暗い言葉で語られることが多い高齢化問題。しかし、そんな時代の空気に巻き込まれず、楽しくもがいている施設福岡にがあります。その名も「宅老所よりあい」。そして、われわれがそれを知ることができるのもこの施設には「編集部」があるからなのです。

 編集部といえど、構成メンバーは鹿子裕文さん、ただひとり。ひとりで企画・取材・撮影・執筆・発送まですべてをやってのけます。そうしてできた雑誌『ヨレヨレ』のあまりの面白さに感動し、ナナロク社の川口さんが依頼したのがきっかけで生まれたのが『へろへろ』です。

 老いゆく日本の楽しい未来、ここにあり。京都のとある集会所で語られた、よりあい、そして鹿子さんの『へろ戦記』の様子を3日間でお届けします。昨日に引き続き、2日目をどうぞ!

(構成・写真:田渕洋二郎)

鹿子裕文×三島邦弘 へろ戦記 京都・ちゃぶ台篇(2)

2016.02.26更新


ボケても気になる世間体

鹿子あと、「よりあい」にいるとわかるんですけど、お年寄りはね、ぼけてるかもしれないけど、実はちゃんとしてるんですよ。一緒に過ごしていたお年寄りが亡くなると、お葬式にみんなで行くんですけど、そこで騒いだりはしないんです。だから人の尊厳に関する最低限のマナーって、忘れないんじゃないですかね。ぼけた人だって世間体を忘れたりはしないんです。

三島なるほど。大阪に釈徹宗さんっていうお坊さんがいらっしゃるんですけど、こちらもお寺の裏で「むつみ庵」という、よりあいのような施設をやってらっしゃいます。市の施設になるから、宗教には厳しいんですけれども、仏壇だけは広間に置いてあるんですね。そうしたら、いくらボケけてても絶対に仏間には足を向けて寝ないんです。

鹿子へえー。

三島バリアフリーにもなってない急な階段だったりするんですけれども、むしろその方がいろんなセンサーを使うようになって、1年たったら自分で立って歩けるようになっているなんてこともあるそうなんです。


畳の上で死んでいくこと

鹿子生活リハビリという考え方がありますよね。昔の日本家屋って箪笥とか、ちゃぶ台とかがありましたよね。手すりとかなくても、そういうものをうまく使って伝い歩きしてたはずなんですよ。それがリハビリになったりもしてたんじゃないですか。

三島そうなんですよ。

鹿子あとね、これは『へろへろ』にはうまく入らなかったんで書かなかったんですけど、うちの義理の母はですね、「よりあい」で看取り合宿を14日間やったんですよ。

三島そうですか。

鹿子これが不思議なものでね、看取りもあんまり長くなると、「もうそろそろおねがいします」ってなってくるんですよね(笑)。
 やっぱり一週間過ぎてくると集中力も切れますね。体力的にもきつくなるし、ダレてもくるんですよ。でもこういうときに、下村さんの気の回し方がすごいんです。10日過ぎたあたりで、「あんたたちも疲れてるだろうから」って、1日目はステーキ、次の日は寿司、その次の日はすき焼き、といった食事を振る舞って、みんなを盛り上げてくれるわけですよ。もう職員が夜勤に入りたがってね。もうすぐ亡くなろうとしている人の横で「卵もう一個ちょうだい!」みたいな感じで、すっごいいい肉食べてるわけですから。でもそれが昔の死に方だったんでしょうね。なんの医療的な介入もなく、そうやって畳の上で死んでいく。生活の中に「死」が普通にあったんだと思います。

「お医者さんに相談だ」はやばい

鹿子最近はボケも薬で止めてしまいますよね。製薬会社が老化「現象」にすぎなかったボケを「病気」にしてしまったんじゃないですか。ハゲも病気になっちゃってますよね。「お医者さんに相談だ!」とか言って(笑)。

三島たしかに(笑)。

鹿子「ちびまる子ちゃん」とか使って、「こういう症状が出たら認知症かもしれないので、早めの検査をお願いします」みたいな広告がありますよね。これとか、やばいことやってると思うんですよ。ああいう国民的キャラクターを使って何かをプロモーションしてるときは危険かもしれませんよ。本当はぼけても普通に暮らせる世の中にしていくのが国家の腕の見せ所なのに、それを「自己責任」の名の下にうまく回避しようとしてるわけでしょう。そこに製薬会社も一枚乗っかってる気もしないではない。

三島ああ......。

鹿子実際、認知症の薬の副作用ってけっこうきつくて、人によっては混乱がはげしくなったり、落ち着かなくなったりするんです。うちの義理の母もそういう目に遭いました。そうなったお年寄りになにが処方されるかと言ったら、今度は精神安定剤とか睡眠薬ですよ。そうやってどんどん薬漬けになっていく。自然なぼけが許されなくなって、いびつなボケになっていったんです。
「よりあい」に通うようになって、うちの義理の母はそういう薬を全部やめたんです。暴れる人だって、ずっと辛抱強くつきあっていたらそのうち落ち着いてきますから。


三島ほんとそうですよね。そういった大きなものに、いかに巻き込まれないで生きていくかということが大切です。

(つづく)

   

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