今月の特集1

 「下流老人」、「老後破産」など、なにかと暗い言葉で語られることが多い高齢化問題。しかし、そんな時代の空気に巻き込まれず、楽しくもがいている施設福岡にがあります。その名も「宅老所よりあい」。そして、われわれがそれを知ることができるのもこの施設には「編集部」があるからなのです。

 編集部といえど、構成メンバーは鹿子裕文さん、ただひとり。ひとりで企画・取材・撮影・執筆・発送まですべてをやってのけます。そうしてできた雑誌『ヨレヨレ』のあまりの面白さに感動し、ナナロク社の川口さんが依頼したのがきっかけで生まれたのが『へろへろ』です。

 老いゆく日本の楽しい未来、ここにあり。京都のとある集会所で語られた、よりあい、そして鹿子さんの『へろ戦記』の様子を3日間でお届けします!

(構成・写真:田渕洋二郎)

鹿子裕文×三島邦弘 へろ戦記 京都・ちゃぶ台篇(3)

2016.02.27更新


もう「毛」しかない

三島鹿子さんはもともと雑誌の編集をやられていたんですよね?

鹿子そうです。「宝島」という雑誌を作ってました。僕がやってたのは隔週誌で、言っちゃえば、蝉みたいなものですね。寿命が短いんです。どんな無茶苦茶な企画やってもどんどん新しいのがでるから、すぐ忘れてもらえるんです。だから僕には少しモラルが足りないんですね(笑)。

三島そうですか(笑)

鹿子まあ、僕が「宝島」に入ったのは、一番部数が下がっているときだったんですけどね。全盛期は20万部のうちの8、9割くらいは売れて、返品率も1割くらいだったのが、僕のころは7万部刷って3万部返ってくる号もあるやばい時代だった。
 毎日、社長から怒鳴られまくってましたね。「お前らはクズだ。能なしだ。いつになったら売れる雑誌が作れるんだ。このバカどもが」って。毎日、編集部にきて一時間ぐらい説教されるんです(笑)。


三島ほうほう。

鹿子で、何やっても全然売れないもんだから、みんな頭おかしくなってきて「もうこんな雑誌なくなってしまえばいいのに」とかそんなこと考え始めるんですよ。それで、「廃刊になるにはどうしたらいいか」を考えたわけです(笑)。それで、当時タブーだった「毛」を出せば一発で回収になって、晴れて廃刊になるという結論に至りまして。それでヘアヌードのグラビアを載せることにしたんです。

三島本当ですか!?

鹿子はい(笑)。で、「毛」を出したんですけど、全然警察が来ないわけですよ。電話がかかってくると、「あ、警察だ!」とか言ってみんなワクワクしながら出るんですけど、でもそういうときにかぎって、かかってくるのはライターからの「締切伸ばしてもらえませんか」みたいな電話だったりしてね。「潰れるから締切なんてねえよ!」って切る(笑)。

 そんなこんなで発売から3日が経って、「やっぱり売れてない雑誌だから警察も気がつかなかったのかなあ」とか言ってたら、営業部から電話がかかってきましてね。「完売しました」という連絡だったんです。「じゃあ、摘発されるまで『毛』を出そう」なんてやってたら、あっという間に30万部売れる雑誌になってましたね。ま、実はこういう経緯でヘアヌードは解禁になったという、バカバカしい話なんですけど(笑)。

三島すごい......(笑)

鹿子そんなことばっかりやってた編集者ですからね。そういう姿勢は『ヨレヨレ』を作ってる今もあんまり変わってないですよ。


スパイ活動の報告書



三島本が出てからは、変わったことはありますか?

鹿子いろいろな雑誌や新聞に取り上げていただいて、今まではゴミ扱いされてるような人間でしたけど、ようやく人並みに扱ってもらえるようになった感じかな(笑)。

三島でも鹿子さんに何書かれるかわからない、と警戒する人も増えますよね...。

鹿子それはあるかもしれない。聞いてないふりして、僕けっこうちゃんと聞いてるんですよ。もうスパイみたいに。そういう意味では、この『ヨレヨレ』も『へろへろ』も「007」みたいな話ですよ。僕はジェームス・ボンドなんです。

三島かっこいいですね...。次の『ヨレヨレ』の出る時期などは決まっていますか?

鹿子いつですかね...。まだエネルギーが溜まってないんですよね。雑誌って勢いというか、瞬発力なんで。いつかなあ。ひょっとしたら東京オリンピックのころかもしれないです。まあ、それだけ間が空いてしまうと、その間に亡くなるお年寄りもいらっしゃるのでね......巻頭のグラビアで写真ずらーっと並べたりして。

三島ひどい(笑)

鹿子さすがにそれはないと思うんですけど、今、笑いましたよね。『ヨレヨレ』っていうのは、そういうところから企画が生まれてくる雑誌なんですよ。だから何が飛び出すのかは、僕にも今はわからない。楽しみにしていてください。


   

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

バックナンバー