今月の特集1

 わたしたちは毎日なにかしら「紙」に接しています。
 なにより、本という形を成しているのもすべて「紙」によるもの。いや〜、紙って偉大だなあ。でも実はこの紙にもいろんな種類があり、「この本には何の紙があうかな」「あれかな〜」「いや、こっちだろう」なんていう思考を毎回巡らせていること、ご存知ですか?
 じっくり本を眺めてみると、この本とあの本の本文用紙は違う紙で、こっちの本のカバーをめくると、なんだかキラキラした紙が......というように、本に使われている紙にも本当にいろんな種類があるんです!

 紙のことをもっと知りたい!と、王子製紙・苫小牧工場や王子エフテックスの新富士にある工場にお伺いしてきたミシマ社一同。
 しかしもっともっと本当に入り口を、お伝えできていなかったのでは...? と思い、いつも「紙版ミシマガジン」でもお世話になっている王子エフテックスの入社2年目・富澤明子さんを突撃してきました。「まったく紙のこと、知らなかったんです!」という富澤さんにお話を伺いながら、紙の入門を探ってまいりましょう。

王子エフテックス・富澤さんと探る 紙、入門!

2016.04.29更新

紙のことは全然知らなかった

―― 富澤さんは、どういったお仕事をされているのでしょうか。

富澤普段は、「こういう紙がありますよ」といろんなところにご紹介にいったり、紙の生産管理をしたりしています。私が勤める王子エフテックスは、王子グループのなかでも、紙に特殊な機能(水をはじいたり、錆の発生を抑えたり)を持たせた紙を作る会社です。その中で、私は書籍や包装紙に使用される「ファンシーペーパー」という紙を扱う部署にいます。

―― 以前、書店員をされていたと伺いました。

富澤はい、8年半書店員をしていました。そこから2015年4月に、王子エフテックスに入社しました。
 前職が書店員だったので、「本が好きで今の会社に入ったんですか」とよく聞かれるんですけど、実はまったく、そういうのじゃないんですよ。どちらかというと、本は読めればいいと思っていたほうです。乱丁・落丁も気にせずに読んでしまうタイプ(笑)。

―― わはは、そうなんですね(笑)。

富澤いろんな本をよく表紙買いしたりしてたんですけど、紙というものに焦点をあてたことがなくって。入社をして、まず紙の種類がこんなにあるのも驚いたし(笑)、こんなにこだわっている人がいたのに、全然知らなかったなというのが正直なところなんです。いまの会社に入ってから知ったこと、本当にたくさんありますね。

―― そうですよねえ、紙に種類があるんだ! と、私も驚きました。

富澤あとは出版社の方やデザイナーさんをはじめ、ものすごい熱量を持って紙のことを語る人にお会いすることがままあるんですが、それがすごく、いいなあと思いがなら仕事をしています。


その数、なんと3000種類

―― 現在、本に使用されるような紙だけだと、王子エフテックスさんではどれくらいの種類がありますか?

富澤ファンシーペーパー系だけで、色数も数えると3000種類くらいです。

●ファンシーペーパーとは?
 色や柄がついており、風合い(手触り)がある紙のこと。
 たとえば本では、見返しや帯に使われることが多いです。



富澤たとえば、先月の『紙版 みんなのミシマガジン』の表紙に使われているのは、「OKミューズコットン」という紙ですが、これだけで131色あるんですよ。


―― ええっ、131色、ですか!

富澤色数や斤量は除いて紙の種類だけで考えると、100種類種類くらいでしょうか。

OKミューズコットンの見本帖。131色!


●斤量って?
 紙の厚さを表す単位で、原紙の1平米あたりの重さ(kg)で表します。
 その数値が低いほど薄く、高いほど厚くなる傾向がありますが、たとえばフワフワの紙だと、厚さは厚くても軽いです。同じ斤量でも用紙が異なると厚さは異なります。
 たとえば、先ほどから話題に上っている「OKミューズコットン」という紙には、4つの斤量=4つの厚さがあり、「四六判Y目 73kg、90kg、118kg、162kg」というふうに表記します。73kgが一番薄い紙で、162kgが一番分厚い紙ですね。
 本を作るときは、「表紙はブンペル四六Y175kg、見返しはエコラシャ四六Y70kgで云々......」という呪文のようなやりとりが、デザイナーさんとの間で行われているんです!



この数をどうやって覚えるの?

富澤今回改めてこのミューズコットンの色見本を眺めていたら、色も名前も、知らないものが多いなと気がつきました。たとえば白緑(クリーム黄緑のような色)とか、桜鼠(ピンクがかったグレー)とか......

―― あのー、こんなに種類があって、どうやって覚えるんでしょうか? 似ている紙もあったりしますよね?

富澤私の場合はまずはひたすら自社の商品を覚えます。最初にみっちりと紙の種類とか、似てる紙はどれだとかレクチャーを受けるんですが、やっぱり、日々の経験のなかで覚えていく感じですね。これはこういう紙だな、とわかってきたらノートを見返して、「あ、これはこういう紙で、この紙も同じ系統か」というふうにして、覚えていきます。でも全然覚えきれなくて、もう大変です(笑)。
 最初は、「ファンシーペーパー」と「微塗工紙」の名前もわからなくって。

―― なるほど。

富澤最初は単位もわからなくて、紙パルプ手帳というのを参考にしました。税理士手帳の紙版ですね。
 あとは本の製本の仕方に、並製本・上製本・フランス装・ドイツ装というようないろんな方法があるということも、全然知らなかったです。

―― 意識しないと、その本がどういう作りになっているのか、わからないですよね。


(つづきます)

   

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