今月の特集1

 わたしたちは毎日なにかしら「紙」に接しています。
 なにより、本という形を成しているのもすべて「紙」によるもの。いや〜、紙って偉大だなあ。でも実はこの紙にもいろんな種類があり、「この本には何の紙があうかな」「あれかな〜」「いや、こっちだろう」なんていう思考を毎回巡らせていること、ご存知ですか?
 じっくり本を眺めてみると、この本とあの本の本文用紙は違う紙で、こっちの本のカバーをめくると、なんだかキラキラした紙が......というように、本に使われている紙にも本当にいろんな種類があるんです!

 紙のことをもっと知りたい!と、王子製紙・苫小牧工場や王子エフテックスの新富士にある工場にお伺いしてきたミシマ社一同。
 しかしもっともっと本当に入り口を、お伝えできていなかったのでは...? と思い、いつも「紙版ミシマガジン」でもお世話になっている王子エフテックスの入社2年目・富澤明子さんを突撃してきました。「まったく紙のこと、知らなかったんです!」という富澤さんにお話を伺いながら、紙の入門を探ってまいりましょう。

 2回目の今日は、どんな本にどんな紙が使われたりしているのか、具体的な話まで。

王子エフテックス・富澤さんと探る 紙、入門!(2)

2016.04.30更新

この数をどうやって覚えるの?

富澤今回改めてこのミューズコットンの色見本を眺めていたら、色も名前も、知らないものが多いなと気がつきました。たとえば白緑(クリーム黄緑のような色)とか、桜鼠(ピンクがかったグレー)とか......

―― あのー、こんなに種類があって、どうやって覚えるんでしょうか? 似ている紙もあったりしますよね?

富澤私の場合はまずはひたすら自社の商品を覚えます。最初にみっちりと紙の種類とか、似てる紙はどれだとかレクチャーを受けるんですが、やっぱり、日々の経験のなかで覚えていく感じですね。これはこういう紙だな、とわかってきたらノートを見返して、「あ、これはこういう紙で、この紙も同じ系統か」というふうにして、覚えていきます。でも全然覚えきれなくて、もう大変です(笑)。
 最初は、「ファンシーペーパー」と「微塗工紙」の名前もわからなくって。

―― なるほど。

富澤最初は単位もわからなくて、紙パルプ手帳というのを参考にしました。税理士手帳の紙版ですね。
 あとは本の製本の仕方に、並製本・上製本・フランス装・ドイツ装というようないろんな方法があるということも、全然知らなかったです。

―― 意識しないと、その本がどういう作りになっているのか、わからないですよね。


ヨーロッパでは「誤差」の色が、日本では違う色に

―― 本屋さんで並んでいる本を見て、「これはうちの紙だ」とか、わかりますか?

富澤柄が入っているものや特徴のあるものであればわかりますけれど、まだ全然ダメです、ほとんどわかりません!

―― 白い紙なんて、とくに難しいですよね。

富澤そうなんです。私は未だに、白い紙の区別を完璧につけるのは難しいです。それにヨーロッパの人は「誤差」だと思う違いでも、日本では違う色になります。日本人は繊細な色の違いを認識するけれど、海外の方はビビッドな色を好むんだそうです。あと、青と言って思い浮かべる色は国によっても違うんですよ。青は空の色なので、日本はすこしグレイッシュな青だし、ヨーロッパは濃い青というように、地域によって違いがでるようです。

―― なるほど、面白いですね。


この本の紙も王子です

―― 「この本で王子の紙を使いました」という連絡なんかは、あるんですか?

富澤いえ、そういう連絡はほとんどないですね。代理店さんとお話ししたときに「こういうのに使ったよ」と教えてもらったり、「今度こういうので使うから作っておいてね」という注文が入ったりして知ることが多いです。


●たとえばミシマ社の本で、王子エフテックス・王子製紙の紙を使っている本というと...

4月27日発売の新刊『何度でもオールライトと歌え』(後藤正文著)は、カバーに「ブンペル」という、王子エフテックスさんの紙を使用。こちらはミシマ社のマークをデザインしてくださった寄藤文平さんが、王子と共同開発して作った紙です。ちなみにこの本を装丁くださった名久井直子さんは、「ポルカ」という可愛い紙を王子と一緒に作られています!

こちらは、昨年刊行したミシマ社初の雑誌『ちゃぶ台』。本文用紙が「OKアドニスラフpink」という王子製紙さんの紙です。え、ピンク!? たしかに、そう言われて他の本と並べてみると、ちょっとピンクがかっているような......。

ちなみに『ちゃぶ台』は、見返しに「ブンペル」を使っています。ブンペル大人気!



この紙、売ってください!

―― ファンシーペーパーは可愛いものが多いので、個人的に包装紙とかに使いたいな〜とすごく思うんです。一枚単価で売っていないのでしょうか?

富澤たとえば、竹尾が運営している竹尾見本帖などに行くと売っていただいているので、買えますよ! 他にも、PAPERMALLやPAPERVOICEでも扱ってもらっています。
 私たちが扱ってるマシンは、小さいながらも10~20t/日の生産能力があります(A4のコピー用紙だと30万~50万枚くらい!)。それを一枚の紙にして販売するとなると、かなり手間がかかるんですね。なので、卸した先でいろいろな形で売ってもらいます。出版社と本屋の関係と似ていますね。出版社はたくさん本を作って、本屋でお客さんが一冊ずつ買えるというわけです。

―― なるほどなぁ。紙を作っているけれど、紙の販売店ではないから、買えないんですね。

富澤もともと加工してもらうことを前提に作っているので、大きいロットでしか出せないんです。何百トンでよければぜひ、買ってください(笑)。

―― ひょえー、うちのオフィス、潰れちゃいます!


そんなに熱量を持って、作られているものだったんだ

―― 今までは出来上がった本を売る側だったのが、その本を作る土台になる、紙を作る側になったわけですが、本への見方はなにか変わりましたか?

富澤並んでいる本にどんな紙が使われているか、流行りの紙は何なのかなと気になるようになりましたね。

―― 紙に流行りがあるというのも面白いですね。最近の流行りの紙は、どんなものですか?

富澤去年あたりから、クラフト系の紙が多いですね。白くて綺麗なのではなく、風合いがあって少しガサっとした感じのする紙が人気です。白さを求めるというよりも、今はどちらかというと、ナチュラルで手触りがしっかりしているようなものに戻ってきたみたいです。

―― なるほど。たしかに、よく目にするような気がします。

富澤書店員をやっていたころは、紙がそんなに熱量を持って作られているものだと知らなかったです。製紙会社、出版社と、いろんなところでたくさんの熱がこもっていて、それで1000円程度か、と考えると本ってすごいなあと改めて思います。


おまけ・王子ペーパーライブラリー


東京・銀座にある王子ホールディングズの1階には、「王子ペーパーライブラリー」という紙のミニ展示場があります。
伺った日も、親子連れや美大生っぽい学生さん、いろんな人が訪れていました。


紙の展示はもちろん、紙好きにたまらないのが、紙見本を好きなだけ持って帰れるということ......!
あれもこれも、取りすぎ注意です!


<王子ペーパーライブラリー>
東京都中央区銀座4-7-5 王子ホールディングス本館1階
開館時間:月~金曜 9:00~17:00(土日祝休館)
アクセス:地下鉄(銀座線・日比谷線・丸の内線) 銀座駅 A12番出口 徒歩1分
地下鉄(都営浅草線・日比谷線) 東銀座駅 A2・A8番出口 徒歩3分

*GWは休館しています

ぜひ一度訪れてみてください!

   

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