今月の特集2

就活生に告ぐ!君はバッキー井上を知っているか 第3回

2013.04.24更新

就活生に告ぐ!君はバッキー井上を知っているか


本特集は、ミシマ社に来ている学生さんたち(通称・デッチ)に、
バッキー井上さんの話をしているときに決まりました。
「バッキーさんって、37歳で漬物屋を始めたんやって。
それまでは、"ひとり電通"したかったらしいよ」
「な、なんですか、それ??」
「うーん、よくわからん」。
そんな会話の断片が、就職活動中の学生の胸に突き刺さったようです。

「なんか、自分らの生き方狭い気がする・・・。就活だけが、可能性じゃないのかも」

その呟きを聞いたミシマ社編集部がすぐさま動いてできたこの企画。
3日目もガンガンいきましょう!バッキーさん、奥深すぎます。

(文:池畑索季、三島邦弘 写真:新居未希)


本当は医者になりたかった

―― 今の就活って野暮だと思うんです。「僕はカクカクシカジカな人間で...」って企業とお見合いみたいなことして。そうじゃなくて、バッキーさんみたいに、「行きがかりじょうしゃあないし、一緒に仕事しようか!」みたいな粋なことがもっとあってもいいんじゃないかなって。

バッキー僕なんか本当は医者になりたかったんですよ。
あとは、テレビ局のディレクターとか。

でもね、それを目指そうって言う努力をしなかったんですね。
〈粋/野暮〉に辿り着く前の段階で、もう挫折してるんだよ。
もうダメ。努力もしてへんのになりたかったってね。
いかにもなれそうな言い方してね、実はなりたいって言うてるだけでね。

―― いま何かになれるとしたら、何になりたいですか?


バッキー僕は医者ですよ。
お医者さんと患者さんの間の人になれへんかなぁって思ったりしてる。

医者の顔だけするんですよ。お医者さんに怒られるかも知れないけどね。
専門のお医者さんたくさんいてね、患者さんの言う事を聞く役と伝える役。

将棋の棋士の渡辺竜王っていはって、物凄い強いんですよ。
渡辺さんがお医者さんだとしたらね、渡辺さんが対応するのとね、
中井喜一とか堤真一がね、「お腹を見せてごらん」って言うのじゃあやっぱり違うと思うんだよね。

そんなんできないかなって思ってる。

三島まさに今してると思います!

バッキーはあ??

(一同、笑)

―― 就職活動について、どう思いますか?

バッキー俺らの頃は「あそこの会社、役員にお前の親戚おらんしダメやろ」とか、そんなんよくあったけど。

行きたいところってたくさんあるよね。
多くの人がそんなふうに思っていて、落とされる人の数も延べにしたら多くなって、つらいよね。


会社の人も苦しんでる

バッキー僕の仲の良い後輩が就活をサポートしているような会社でずっと働いていてね。

そいつはねぇ、もう禿げてましたよ。
ボーボーやった毛がね、久しぶりに見たら禿げてました。
「もう5年前とちゃうんですわ」「きついんですよ」って。
10年前はよう飲んどったんですけどね。
今はもうそんな時間も余裕もないみたいで・・・禿げてます。

会社の人たちも苦しんでるんでしょうね、たぶん。しゃあないね。


咎める態度はあかん。セコさが重要

第3回 もしも僕が医者ならば

バッキーさんの著作 『京都店特撰 たとえあなたが行かなくとも店の明かりは灯ってる』(140B、2009年8月刊、880円)

バッキー就活もね、咎める態度を取ると、やっぱり咎められるんちゃう?
一緒にごはん食に行って「これうまないなぁ」とかばっかり言いよる奴おるんですよ。
やっぱりしんどいもん、一緒にいてても。

うまないのはうまないんやけど、まぁええやんけ別に。しゃあないやん。
店の人に「来てくれ」って言われたわけでもないしねぇ。どうせ食べんのやから。

それより、「醤油もソースも両方かけたろうか!」とか言うてね。俺はずっとそんな感じ。
うまないわぁとか思ったら、「これこんなことやったらどうやろ」って実験したり。
まぁ、料理屋さんは怒らはるんやけどね。

そこでまた赦してもらおうとする態度が出るんですよ。セコいでしょ?

セコさが重要ですよ、やっぱり。

やっぱり、調べ物するにしても、調べたらポンと出てくるからね。
途中のプロセスがないからね。
そのプロセスがあって、脱線したり、間延びしたりして、ちょっと頭も身体も緩くできるんだけど、どんどん結論ばっかり言うから、その緩くなるところがね。

柔らかい地帯みたいな所を歩かないで、そういうところばっかりをピョンピョン飛んでいってる感じがする。
脚が疲れてるんちゃう?膝いわしてますよ。
藁の所とか、芝生の所とか、ぬかるみで歩くスピードが遅くなったりすると、
横を見たりできるんだけどね。

ピョンピョンと行くと、横なんか見えへんもんな。
次の着地点しか。それは怖いよね。

そやから、今就活されてる人だけが厳しいんではないと思いますよ。社会全体がね。


モテることを選ぶ

―― もし、バッキーさんが今の就活生くらいの年だったらどうしますか?

バッキーITのなんかやってるんちゃうかなぁ。
なんかそんな気がするけどね。

なんやろなぁ・・・モテる・・・
それくらいの年やったら、モテることを選択しますわ。たぶんね。

ほんでモテることって言うても、無理なことが多しね。
例えば、F1ドライバーとか、ミュージシャンとか。
そうやって、これ無理これ無理って消していって、残った中で、
これが一番モテるんちゃうかなぁっていうのがあるでしょ。
そんなんを選ぶんちゃうかなぁ。

それが正直なところやと思うね、ボクは。


でもね、広告のところに入ったときは給料なんか極端に安かったし、
彼女ができてデートの約束をしても、先生が「帰る」って言うまで帰れないんですよ。
だから約束なんかしても反故になることばっかりやしね、それはきつい旅ですよ。

そんで先生と2時3時まで付き合うにしても、先生は昼3時とかから来てもええねんけど、
俺は一応新入社員なんで、朝9時に行って掃除とかしなあかんわけ。それはきついなぁ。

デートもできひんしね。ほんでどうなるかって言うたらね。
女の人と会うたりしても短い時間しかないわけですよ。で、お金もないでしょ。
だから、カッコイイこと言うんですよ。「俺はこんな仕事やってんねん」って。
それでちょっとでも振り向かせようとするわけですよ。

でもやってる言うてもねぇ、展覧会のプロデュースやってるにしても、
自分がやってることはキャプションボードの発泡スチロール切ったりね、
やってる言うてもそんなもん。
それを「俺はあのドイツの作家の展覧会やっとる」って。まぁ言うわけですよ。

言うてる間にそんなことになるんちゃう?


*「そんなこと」ってどんなこと?(笑) 明日、いよいよ最終回、バッキ―さんの言葉は就活生たちに伝わったのか?

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バッキー井上(ばっきー・いのうえ)

本名・井上英男。1959年京都市中京区生まれ。画家、踊り子などを経て、現在の本業は錦市場の漬物店「錦・高倉屋」店主。そのかたわら、日本初の酒場ライターと称して雑誌『Meets Regional』(京阪神エルマガジン社)などに京都の街・人・店についての名文を多く残す。独特のリズムと感性をまとった店語りは多くのファンを持つ。

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