今月の特集2

ちくわぶ論争、「京都でハモ? それがどないしてん」など物議を醸しつづけた、伝
説の連載『飲み食い世界一の大阪 そして神戸。なのにあなたは京都へゆくの』。

書籍化されてからはや半年がたち、来月、満を持して、江弘毅氏の新連載(「誰も〇×しない世界一の大阪(仮)」)がスタートします。
今回の特集では新連載開始を記念して、『飲み食い世界一の大阪』発刊を記念しての「3都巡業」を一挙掲載!!
(本当は、5都巡業したのですが、「ディープ過ぎ」「危険過ぎ」のため、掲載をあきらめました。残念・・・。ものすごく面白いので、知りたいサポーターの方は、ご一報ください。こそっとお教えします!)

さて、第1回目の今日は仲野徹さんとのご対談。
「世界一おもろい細胞学者」大阪大学大学院医学系研究科教授と、元「ミーツリージョナル」編集長にして全てを「だんじり」に例えるだんじりエディター江弘毅さんとの、爆裂トーク「大阪の店、どこがちがう!?」@ジュンク堂書店大阪本店。

ぞんぶんに、味わってくださいませ。

(まとめ:デッチ・宮川裕大)

江弘毅の言いっぱなし三都巡業 第1回「大阪の店、どこが違う!?」×仲野徹さん編

2013.05.27更新

江弘毅の言いっぱなし三都巡業「大阪の店、どこが違う!?」×仲野透さん編

「うまい」をどう書くか

僕ね、長い事情報誌系の雑誌で編集長やってきましたから、食べものの話ずっと書いてきましたけど、大阪の食べもんって結構書きにくいんですね。大阪料理ってあんまりないんですよ。体系化されてないと言うか。

仲野そうですね。ただ本当にうまいっていう話にしかならないっていうか、表現が難しい。

フランス料理とかイタリア料理とかって結構書きやすいんですよ。シェフがリヨンの三つ星のポール・ボキューズで4年修業して帰って来て、リヨン産のカワカマスを使ったクネルをスペシャリテでやってて、それにソースがザリガニのこんなソース、みたいに記号とデータである程度書けるんですよ。ところが記号とデータわからへん人、ポール・ボキューズわからへん人にはちんぷんかんぷん。バルバリー産の鴨とかね、今だったらインターネットで簡単に検索できますが...。それを記号とデータで書くなよって思うんです。それをグルメライターとかは、まだやってる。

 それでどんどん行ってしまうグルメ記事があるんですけど、大阪の食いもんっていうのはお好み焼き屋さんとか、串カツ屋さんって取材に行って、「めちゃくちゃうまいですね。これメリケン粉に何入ってますのん?」って聞いたら「塩と味の素や!」。「豚玉の豚、うまいですね。どこ産ですか?」って聞いたら「そこの市場のやで!」でしょ。

仲野それはそうですね。

江弘毅の言いっぱなし五都巡業「大阪の店、どこが違う!?」×仲野透さん編

そこのお好み焼きは「なにものでもなくうまかった」ていうのをどう書くのか。やっぱりそこはそのお店で見たものですね。大阪の食べもんって、基本的にまずいって言うてもそこそこ食えるでしょ。その「そこそこ食べられる」って言うことをどう書くのかが、一番面白いと思いますね。


対面だから「おいしいお口」になる

ミシュラン的に「店じゃなくて皿の上のもんを評価する」ていうのが流行った時期ありましたよね。そうではなくて、大阪では「店に行く」ということは、あくまでも「店に行く」であって、決して「なんやらを食べにいく」ではない感じですね。店好きというか、「うまいもん屋」、「うまいもん」じゃなくて、「屋」の方が。

仲野こう、予定調和でないおかしなことがおこるのが、「屋」ですね。この前中華料理屋行った時に、隣の席の人と同じメニュー頼んでて、料理人が目の前で鍋振ってるのを、隣の人のやつやなぁと思って見てたんですよ。そしたら先に僕のところにきて。隣のおっさんにごっつい嫌そうな目で見られながら食べたってことありましたわ(笑)。

(笑)。街のお好み焼き屋とか串カツ屋、割烹、鮨屋みたいな大阪に連綿と続くカウンター型の店って、対面販売、実演販売でパフォーマンスしますやんか。前でパッパッパッてうまいこと。そこからもう、おいしいお口になっていくんですよ。待っている間に、ごくっとつば飲んで。

仲野そうそう。食べる前にすでに目的は半分以上達成されてるような。

単純に言うと、グルメ誌は情報化数値化しますやんか。油の温度が何度やとか、泡の立ち方がどうやとかね。だけど僕ら経験的にキャンプしに行って川につけておいたビール、うまいなぁ~って。ぬるなってもうまいなぁ~って。多分ね、そういうプロセスにおいて「おいしいお口」になるんですね。

仲野さっきから「おいしいお口」って言ってますけど、おいしいお口って大人はあんまりしませんやん。子どもってしますよね。おいしそうな物見たらう~んって。

俺かそれ(笑)。

会場(笑)。

仲野普通、大人しないでしょ。久しぶりにおいしいお口っていう言葉聞いたなって。これから食べる前においしいお口をして待つ習慣つけたらなんでもおいしくたべられるかもしれませんね。イメージトレーニング。おいしいもんくるぞくるぞっていう口で。


おいしいだけではおもしろくない

色々バーッて話しましたけど、先生が店行く時に選ぶ条件とかポイントってあるんですか?

仲野おいしいだけと違って、やっぱり「おもろいおっちゃん」はいてなあきませんね。

絶対そうですよね。

仲野それはそうですわ、愛想ないもん。ただ単においしいもん食べてるだけやから。ちょっともったいない感じしますよね。後はふらっと入りたなる店が良いですね。で、失敗してもあちゃ~って思えるところ。

まぁええか~、でしょ。

仲野まずいもんを楽しんだなっていうそういう大らかな気持ちで。幅広い楽しみ方した方が良いですね。味だけを楽しんでるようでしたらまだレベル低いですよね。

おいしいもんばかりを情報ベースでね、必死に行きだしたらもうおいしないやないですか。俺だけなんか、こんなふうにグルメガイドに書いてあったのに全然あかんとか。ずっと腹立ってなあかんじゃないですか、店入って。なんかサービス悪いなぁとか、マティーニのオリーブちっこいとか。

仲野ごっつい人間ちっこいですやん(笑)。

会場(笑)。


必殺の店~次の店で必ずうまくなる店200~

すごく増えたような気がするんですよ。ブロガーとかそうでしょ。ぼろくそ書いてる。

仲野食べログとか見てたら点なんぼやったのに、実際店行ったらもうひとつやなとか思う時ありますよね。

江弘毅の言いっぱなし五都巡業「大阪の店、どこが違う!?」×仲野透さん編

あれはええことないと思いますね。店にとっても不幸やし。それは人間が消費者としてそういうスタンスやから。「俺が納得するもん出せ」みたいなね。「それはあかんやろ、お前家帰れ」って言うわけですね。「家帰って自分で作り」って。

仲野まあ、なんか今度まずい店行ったら、星5つとかつけてあげて、コメントとして、次の店で必ずおいしく食べれますから、とか言うて。

それおもろいなぁ(笑)。「次の店でおいしく食べられる店」特集。

会場(笑)。

仲野極端にまずかったらあかんのですよ、そこそこまずい。

ものすっごい良いスタンスで書かないけませんなぁ。

仲野それ筆力要りますよ。

「必殺の店~次の店で必ずうまくなる店200~」特集とか。

仲野互助会みたいで良いですよね。その店も流行るし。


食の都、大阪はここがちがう

最後ちょっといいですか。京都の店は一見さんお断りってありますやん。僕はあれは割とありやと思うんです。大阪の店は「知り合いばかりでみんないい人おもろいヤツ」っていう、僕らの街場の理想や倫理観があったとしたら、京都はそれの限定バージョンかなぁと僕思ったんですけど、一見お断りはありやと思います。

仲野それはそれでまぁ心地いいといえば心地いいと思います。

それを無理にこじ開ける奴が嫌なわけであって。お金持ってて、情報のリテラシーがあるからどんな店でもドアを開けてやれという態度。それだとイケズされますね。

 やっぱり消費者的にいろいろ店を知ってはってもねぇ。鮨屋ってこんなとこやってわかってて、ようけ食べて歩いてて、僕らよりもっとすごいグルメ評論家みたいな人いてるけど。店の鮨、毎日握ってるおっさんからしたら「なんやこいつ」ですもん。完全に見抜いてますからね。

 なんかそういうのがごっつうある気がします。やっぱりそこは大阪が「食の都と」言われてる奥の深いところというか、プロフェッショナルな部分やって僕は思います。

仲野双方向コミュニケーション的、飯の食い方。

ましなこと言うでしょ、今日。

仲野最後ちょっと賢なったような感じが(笑)。

ちょっとなんか言うたろ、最後一発かましたろ思ってました(笑)。

仲野徹さんより、対談を終えてひとこと
 トークショー初体験で緊張してたのですが、単なる普段の雑談といっしょでした。
自分としては、かなりおもろい話やったと思てます。笑ってもらえる快感が癖になりそうで怖い・・・


「必殺の店~次の店で必ずうまくなる店200~」、気になりますね・・・。
会場からも笑いが止まらない、楽しい対談でした。仲野先生、ありがとうございました!!!


*明日は、東京にて平川克美さんと行われた「東京・大阪 街場語り ~街の小商いとうまいもの屋」編をお届けします!

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

江弘毅(こう・ひろき)
1958年、大阪・岸和田生まれの岸和田育ち。
『ミーツ・リージョナル』(京阪神エルマガジン社)の創刊に携わり12年間編集長を務める。現在、編集集団「140B」取締役編集責任者、神戸女学院大学非常勤講師。
著書に『「街的」ということ』(講談社現代新書)、『岸和田だんじり祭り だんじり若頭日記』(晶文社)、『ミーツへの道』(本の雑誌社)、『街場の大阪論』(新潮文庫)、『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、『飲み食い世界一の大阪〜そして神戸。なのにあなたは京都へゆくの〜』(ミシマ社)など。

飲み食い世界一の大阪

仲野徹(なかの・とおる)
1957年、「主婦の店ダイエー」と同じ年に同じ町(大阪市旭区千林)に生まれ、いまもそこに住む。81年大阪大学医学部医学科卒。内科医として勤務の後、基礎医学研究の道へ。ヨーロッパ分子生物学研究所研究員、京都大学医学部講師などを経て、現在、大阪大学大学院医学系研究科・病理学・教授。「いろいろな細胞がどのようにし てできてくるのか」を明らかにするため、日夜奮闘中。2012年、その業績により日本 医師会医学賞を受賞。一方で、ノンフィクション紹介サイトHONZ (http://honz.jp/)のレビュアーとしても活躍中。著書に『なかのとおるの生命科 学者の伝記を読む』(学研メディカル秀潤社)、『幹細胞とクローン』(羊土社)など。

バックナンバー