今月の特集2

ちくわぶ論争、「京都でハモ? それがどないしてん」など物議を醸しつづけた、伝
説の連載『飲み食い世界一の大阪 そして神戸。なのにあなたは京都へゆくの』。

書籍化されてからはや半年がたち、来月、満を持して、江弘毅氏の新連載(「誰も〇×しない世界一の大阪(仮)」)がスタートします。
今回の特集では新連載開始を記念して、『飲み食い世界一の大阪』発刊を記念しての「3都巡業」を一挙掲載!!
(本当は、5都巡業したのですが、「ディープ過ぎ」「危険過ぎ」のため、掲載をあきらめました。残念・・・。ものすごく面白いので、知りたいサポーターの方は、ご一報ください。こそっとお教えします!)

第3回・最終回の今日は、バッキー井上さんとのご対談(2013年2月2日@大垣書店四条店)。

京都・錦市場で漬け物屋を営みつつも酒場ライターとして活躍するバッキー井上さんと江さんの生み出す絶妙なハーモニー、たまりません。

それでは、どうぞお楽しみくださいませ!

江弘毅の言いっぱなし三都巡業 第3回「飲み食い世界一の大阪? いや、京都やろ?(おまえが店知らんだけちゃうか)」×バッキー井上さん編

2013.05.29更新

江弘毅の言いっぱなし三都巡業 第3回「飲み食い世界一の大阪? いや、京都やろ?(おまえが店知らんだけちゃうか)」×バッキー井上さん編


大阪人から見た、すごく変わった親戚「京都」

一昨日は、いきなりやられました。

バッキーああ、よう行くお寿司屋さんにね。

けったいな(変わった)こと言わはるんですよ。「京都のハモは世界一や」と。「いまは韓国産が一番美味いんや。美味い韓国産のハモ使こてるんやで」と。

 僕はねえ、食べもんに階層をつけるんが好きじゃないんですよ。いくら韓国のハモが美味くても、それは要するに、ハモを食べる文化がある京都人の目利きの良さ、を言いたいだけでしょう。僕は岸和田や淡路由良の漁師の網元と仲いいんですけど、淡路はハモの本場で大阪湾対岸の岸和田でも捕れるんです。ハモってめちゃくちゃ個体差があるんですって。それでお店のひとに言うたんですよ。「ハモは個体差です。わざわざ韓国産なんて使わんでも...」って。ほならものすご怒らはって! まあ、あの人いつもあんなんやけどね。

一同(笑)

「そしたら、一番ええの持ってきてみ。 持ってきたら、どっちが美味いか...」と。いやいや、そんな挑戦的な...! 負けたら指詰めなあかんのちゃうかと思いました。

一同(笑)

バッキー僕は、あの〜、江さんの方が間違うてると思てますよ。

(笑)

バッキー僕もそこで意見言うたら、話長なるさかいに、じ〜っと黙って横で酒呑んでましたけども。ほんまは、僕も韓国のハモの方が美味いんちゃうかと思てますけど?

いや、まあ、それはそれでええし、韓国のハモに恨みはないからええけど。僕ら大阪人にとったら、大阪と京都の食べもんってまあちょっと違うんやけど、やっぱりすごく似てるんですよ。名古屋とか東京とかとは違う文化として。それやのにね、京都の食べもんだけは、東京とか関西以外の人からの受け入れ方や情報流通の仕方っていうのが突出しているじゃないですか。これが、大阪人から見たら、なんでなんかなあ、と思いますねえ。大阪人のやっかみではないですけども。

 大阪人からすると、なんでわざわざ京都まで行ってハモ食わなあかんねんと。わざわざ京都で食べたいなんて思わへんのですよ。それやったら大阪で食お! と思いますし。
そこらへんから、この『飲み食い世界一の大阪』を書いたんです。だから、サブタイトルが『なのに、あなたは京都へ行くの』なわけで。

江弘毅の言いっぱなし五都巡業

バッキーでも基本的には僕もね、「〇〇産の...」とか「どこどこのお酒」とか興味はないですよ。江さんもですけど、僕もね。

なんで言わはるんかな、京都の人は。

バッキーいや、京都の人はっていうか、だいたいどこの人でも、最近は言わはるんちゃいます? そういうこと。

大阪の串カツ屋でハモフライってのも美味いんですよ。だからハモって本来万人にとって夏に美味くて、ようけ捕れるさかいみんなで食べましょうって流布されているもんでしょう。それを「ハモといえば京都や!」「一番美味しい韓国産のハモを使こてます〜」とか必死で宣伝して...。そこが京都の田舎くささで、ものすごどんくさい感じがする。東京みたいやね!

一同(笑)

だっていつから言い出したん? 「京都でハモ」なんて。ここ20年くらいちゃう?
それで「あそこの大将、ハモの骨切りようせえへんで」とか、店同士で言わはるやん。ほっといたれよ〜と思いますよ。「イケズ」や。

バッキー特に、江さんみたいなんに「イケズ」なこと言いたくなるんです。

まあ、俺ら面白く知る術、知ってるからね!

バッキーうん。ていうか、江さんみたいに態度でかくて声でかいやつには「イケズ」言いたなんねや〜。おんなじ様におっきい声ででかい態度で喧嘩して戦ってもおもろないやろ。ぼそっと「イケズ」言う方がおもろいやん。

なるほどなあ。面白いとこやねえ。ほんま変わっとる、京都は。僕ら大阪人から見たら、ほんまに京都は変わっとるなあと思いますよ。大阪と京都って言うたら親戚みたいなもんですやん。せやから、京都に来たら変わった親戚の家に来たみたいな気分ですよ。「変わった家やわあ〜、うちとこの親戚」ってそういう感じ。そういうことを大阪人が言うたらんとあかんと思うんですね。

 京都はブランドを付けるんが上手いんですよ。商売としては、そういう商売はありですよ。ただね、うちらは「ブランドつけるんがうまいんです」ていうことを京都の人は、絶対言わないでしょ。
女 千人切りか! ってくらい、ぶわーーっとハモ選(よ)って、わざわざ大層なハモ切り包丁出してきてね。岸和田の漁師の人って、平気で出刃包丁でハモを骨切りしはりますよ。あれは、そこで捕れるっていう地元の強みですけども。

バッキーまあでも〜、ハモはハモ切り包丁使った方がおもろいからねえ。

(笑)。いや、そらおもろいおもろい。

バッキーハモ切るときは、わざわざハモ切り包丁買うてきて、てっさ(フグ)引く時は、てっさの包丁使ってやった方がおもろいからねえ。
俺、家でてっさ引く時は、わざわざ板前のかっこするしねえ。

(笑)。

バッキーイタリアンやるときはイタリアのコック服で、帽子もばしっと。タイもするしねえ。家で。誰もいいひんでも。

一同(笑)

いや、そらお前、お前が家で遊びでやる分には、裸踊りしようがなにしようが、なにやってもええよ!

バッキー親戚来たときとか、ときどき、流しそうめんもやるんですけどね、雨受けるトユ(樋)わかります? あの銅のやつ。あれ何本か買うてきて、接手(つぎて)もあのL字型のやつちゃんと買うてね。それで流しそうめんやるとね、甥っ子やら姪っ子やら喜びよるんですわ。

そら喜ぶわ!!! 

バッキー大人も喜ぶ。家中どろんどろんなって。

(笑)。お前が、甥っ子姪っ子喜ばすんはどうでもええ。


「ええから」っていう言葉を流行らさなあかん。

バッキーなあ、大阪って「なんでも!」っていうのある?

なんでも?

江弘毅の言いっぱなし五都巡業

バッキー俺、小学生くらいん頃、お父ちゃんに買いもん行かされたときにね、かしわ(鶏肉)屋さんにかしわ買いに行くとするでしょう。A店とB店があったら、Aじゃなく絶対Bの店で買わなあかんって言われたんです。ほんでお父ちゃんに「なんでなん?」って聞いたら「なんでもや!」って言われるんですよ。

ああ! わかるわかる。「行かなあかんさかい、行かなあかんねや」てことでしょ? ありますあります。

バッキー京都はよく、「なんでなん?」って聞くと「なんでもや」って答えられましたよ。

それは、大阪も似てると思いますけどね。京都の人はよく、クルマにガソリンを入れるときに5円くらい高くても知り合いの店で入れたりしはりますよね。うちの大阪の兄貴なんかもそうなんですけど、あれはすごいなあ。僕なんて、合理的に安いとこ狙って行ってまうけど。

バッキーそうそう。僕は、呑むような場所にいることが多いんで「ええから」って言うようにしてるんですよ。例えば俺が「この店入ろか」って言うでしょ。「なんで? ここ美味いんか?」って言われるんですけど、「ええから!」って言うて入るんです。
 これはねえ〜、みなさんにも協力してもらって流行らさなあかんのちゃうかなあと思ってるんですよ。

それは要するに、交換経済やなくて、贈与経済ってことですよね。

バッキーまった、むつかしいことを...。

一同(笑)

つまり、交換経済っていうのは、じゃんけんみたいなもんで、お金払ったらなんかが出てきて勝ち負けが決まるでしょ。味でもそう。その場で判断して美味いかまずいか。贈与経済ってのは、時間がずれて返って来るんですね。「ええから」とか「なんでも」ていうてのは、損得やコストパフォーマンスを考えるな! ってことですよ。
 でも、そんなこと言うたら、韓国のんじゃなくて、岸和田産のハモ買うたれや、て気もしますけど。

バッキーああ、まあ、それは、うん。

一同(笑)

バッキー井上さんより、対談を終えて一言

おいしいものを食べる・飲むっていうのは、食べる人のボディーランゲージや姿勢、ポジションで決まると思います。結局、これを食べてどうなるかっていうのが最初からわかっているのは負け戦だなあと江さんと話していて改めて感じました。


乗りに乗ってきた江さんにサクッと切り返すバッキーさん。
このお二方のお話はほんまにたまらん面白さです...!!
笑いがとまらない、とっても楽しい対談となりました。

ちなみにバッキーさんには、先月の特集2「就活生に告ぐ!君はバッキー井上を知っているか?」にもババンとご登場していただいています。
こちらもとっても面白いので、よければぜひご覧ください。


そして3日連続で掲載いたしました「江弘毅の言いっぱなし三都巡業」。
いかがでしたでしょうか?
改めて、江さんの面白さに感嘆するばかりです。

そしてそんな江さんの連載が、いよいよ来月から始まります!!
その名も「だれも○×しない世界一の大阪」(仮)。
どんなものになるのか、編集部もまだだれもわかりません(どきどき)。

どうぞお楽しみに〜!!

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

江弘毅(こう・ひろき)
1958年、大阪・岸和田生まれの岸和田育ち。
『ミーツ・リージョナル』(京阪神エルマガジン社)の創刊に携わり12年間編集長を務める。現在、編集集団「140B」取締役編集責任者、神戸女学院大学非常勤講師。
著書に『「街的」ということ』(講談社現代新書)、『岸和田だんじり祭り だんじり若頭日記』(晶文社)、『ミーツへの道』(本の雑誌社)、『街場の大阪論』(新潮文庫)、『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、『飲み食い世界一の大阪〜そして神戸。なのにあなたは京都へゆくの〜』(ミシマ社)など。

飲み食い世界一の大阪


バッキー井上(ばっきー・いのうえ)
本名・井上英男。1959年京都市中京区生まれ。画家、踊り子などを経て、現在の本業は錦市場の漬物店「錦・高倉屋」店主。そのかたわら、日本初の酒場ライターと称して雑誌『Meets Regional』(京阪神エルマガジン社)などに京都の街・人・店についての名文を多く残す。独特のリズムと感性をまとった店語りは多くのファンを持つ。

バックナンバー