今月の特集2

 ミシマ社に集まる学生たち(通称:デッチ)が、いろんな業界の方々にお話を聞きにいこう! ということで、始まったこの企画。
 記念すべき第一回目は、「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」や「ケンちゃんシリーズ」など豆腐業界を騒がせるお豆腐をつくっている、「男前豆腐店」さんにお話をお伺いしてきました。
 なんと社長(ジョニー)さんに直接お会いできるというラッキーすぎる機会にめぐまれたデッチ一同。2日目の今日は、いま現在向き合っている問題について。それから、これから働いていく若者たちに向けて、いろいろお伺いしました。

(聞き手:新谷有里・宮川裕大 文:新谷有里)

デッチのオフィス訪問! 〜男前豆腐編〜

2013.08.13更新


「覚えときなよ。どこの学校いっても、そこは教えてくれないからね。」

ジョニーうちはいま、会社としては、まだまだ会社の中の「組織づくり」をしなくちゃいけない段階なんですよ。俺はものをつくるのはすごく好きなんですよね。ただ、組織づくりとかに関しては不得手な面もあって。どういう風に組織を作って、どのように回してとか、こことここが喧嘩してんのをどうしたらいいんだとかさ。そんなのはちょっと俺は・・・ってのが、実際には正直なところで・・・(笑)。
 いかに新商品を当てて利益を出していくかを考えるのはもちろんなんだけど、同時にきちんとした組織作りっていうのもやらないといけないじゃない。商品開発の部分は、ほとんど俺の独裁に近くって。やっと少しずつそこに社員が絡んできたけど、いまはどうやってこの俺がもってる「ものをつくる」って感覚をみんなで共有しながら、みんなで一緒に成功体験をするのかっていうのを頑張ってるとこ。

―― 社長の感覚と社員の感覚の共有がなかなか・・・ってことですか。

ジョニー300人も従業員がいるからね。そもそも全部は無理だとは思ってるんだけど。俺はどっちかっていうと勉強じゃない方で刺激もらって生きてきていて。ミュージシャンに影響受けたり、絵描きの考え方に共鳴したり、ファッションだったり。その俺の感覚を会社の中でみんなで共有するのは大変ですよ。ものづくりをする俺っていうのがいて、その感覚を共有した組織をつくることが難しい。

―― それは、難しいですよねえ。社長さんの中にある正解を、一緒に社員が見れるのかってことですもんね。

ジョニーそうなんですよねえ。商品づくりの感覚とその感覚を共有できる組織づくりは難しいなあ。それに、いい商品づくりのためには自分はすり減らさずに尖ってなきゃいけないでしょう。しかもときとともに自分の趣味や感覚はどんどん変わって行くから、作るものもずっと同じじゃないしね。
 ミシマ社さんだってさ、出版業界でどう生き残ってくか考えるでしょう? それと同じように、俺は豆腐業界でどう売ってどう生き残るかってのがあるよね。やっぱり本だって豆腐だって売れなきゃなんないでしょ? 

―― 本当に、めちゃくちゃそうですね。

ジョニーどんなにいいものを作ったとしても、そうじゃないと成り立たないじゃない。スーパーさんもどんどんえらくなっちゃうし。買う方が強いと作る方が弱くなってしまうんだよね。出版業界も大変だとは思うけど、そういう関係もあって、半分以上黄昏れちゃってるなあ、俺らの業界も(笑)。その中でいかにこうすれば強いっていう形になんとか自分たちで持っていくかしかないんだよね。だから別に会社の中に面白い仕組みなんてのはなんにもないよ(笑)。

チャールズ仕組みはほんとに真面目ですよ。

ジョニー見た目が面白そうなところは、どこも中は大変なんだよ! 決してチャラくはないんだよね! それが言いたかったの。本当に豆腐を作ったり、出版をして本を作ったりっていうふうに、いいものをつくっていっても、さらにかつそれを世の中の需要に組み込めるっていうことが大切で、そこはだれも教えてくれない。ほんと、覚えときなよ。それはどこの大学行っても教えてはくんないからね。


社長と違う感覚を持った若者が出てきたら、どうしますか?

ジョニーでも、じゃあ商品開発チーム作って、この感覚を共有できるような同じような人間すぐに作れるかっていうと、それは無理でしょう。だけど勘のいい子は何人かいるんで、そういう子たちを集めていまチームを作ってきてはいるんだけどね。「こういうとこからこういきましょう」、「じゃあそれでいこうぜ」みたいな感覚でわかり合えるのは、やっと少しずつできてきたかなあ。

―― 今は何人ぐらいが商品開発チームにいらっしゃるんですか?

ジョニー俺を入れて4人。だから、3人だね。300人いて3人だよ。企画は会社の中の1%でやってるわけですよ。
 だから新入社員で、憧れ持って「商品開発やりたいです」って入ってこられたとしても「ちょっと何言ってんの」ってなりますよ。「会社から金が出るんだよ」ってそういう感覚。そんなのはいきなりすぐにできないだろう。
 だから、なにかに憧れて会社入っても大変ですよ、若い人たち。やっぱり「俺は豆腐屋になる」、「物作りに関与していきたい」っていうすごく地味な気持ちの持ち主じゃないとなかなか無理だと思う。でも、そういうのがもし面白いと思ったやつは多分うちに来ないかもしれないなあ。もっと街場の豆腐屋で、豆腐づくりの最初から最後までを勉強できるような所でやると思いますよ。うちだと組織になっちゃっていて一部しか経験できないから。だからといって小さい豆腐屋ばっかりでやっていても、ダイナミックな経験はできないからね。それは難しいところで、どっちがいいとははっきり言えないからね。

―― じゃあ例えば、地味で実直な気持ちを持ってやってるんだけど、でも社長の感覚とは違うという人がいたらどうですか?

ジョニーそれは、むしろ喜ぶね。面白いし、それでそいつが独自のやつを作ってくれたら最高だよ。それでうちのブランドとお前のブランドで戦おうぜって、俺はいつもそう思ってるからさ。誰かが新しいこと始めないと、業界って立ちあがんないからね。俺が50代になったら俺は50代の豆腐作って、で、そんときに20代のやつが新たなブランド作って、そういう感じで会社とか業界とかってのが発展して進化していけたら良いよね。それは同じ男前豆腐店の中だっていいし、違う会社でだって良いし。
 うちの会社ではそれなりの挑戦を俺がやっちゃったかなあとは思っているんだけど。うちはまだ任せきれるやつが出てきてない。組織を運営するのが得意な人って相当数いるんだけども、法に引っかからない変態みたいな人がいないんだよ。でもそういう人がいないと、どの会社もどの業界もだめなんだと思う。それはどんな業界もみんなが抱えてる共通の問題点じゃないかと思うんだけどね。
 音楽業界でいえば、松任谷由実や桑田佳祐って人がいるよね。あれに息子がいようが娘がいようが、会社は継げないよ。親の版権管理はできても、「その子」が生み出せない限り、みんな一緒なんだよ。やっぱりどんな業界でもそこが出るかでないかってだけのことであって。


ずっともがきながら進まれているんだなって、わかりました。

ジョニーとりあえず俺のテンションの盛り上がりと、社員の盛り上がりがまだ同調できてない。今が超過渡期です(笑)。
 「新商品開発にもがき、組織作りにもがき、どうしたらいいのか教えて欲しい」っていうふうに締めくくっていただけたら嬉しいです。

―― 正直なところ儲かっている企業なんだろうなというイメージが強かったので、こういうふうにずっともがいてやってらっしゃるんだなっていう所にすごく刺激をいただきました。

ジョニーまあそりゃあ利益は出てるけどね。

――その中でもがいてる。

ジョニー会社を潰しちゃいけないから、利益はもちろん出さなくちゃいけないけど。来年はわかんないよなあ。重油も電気も全部上がるし、俺たちの業種アベノミクス全然関係ないから、うちはあんまりいいことないよな。

チャールズないですね。

ジョニーこれをどうやって乗り切るかだよ。うまいもんキープしながらさ。

―― はい。もがくしかない、どこまで行ってももがくしかないですね。

ジョニー誰のせいでもないからね。会社の社長のせいでもないし、親のせいでもない。もう二十歳越えてたら誰のせいでもないよ、こればっかりは。会社のせいにして20年ぐらい経ったらあっという間におじさんだからね、それは気をつけた方が良いと思うよ(笑)。

―― それは・・・なんだかずっと心に留めておきたい言葉ですね。

ジョニー「会社が会社が」って言ってたらすぐ40いくつになっちゃうからね。・・・よし、俺も会社の悪口言わないようにしよ(笑)。


<デッチのひとこと>
 正直に言って、取材前はあんなに美味しく愉快な豆腐をつくって、いろんな活動している会社だからきっと何か会社に秘密があるんじゃないか、なんて、なんだか軽い気持ちで取材を始めてしまっていました。しかし、わかったことはとにかく真面目! よりよいものを、届けるために本当にがんばっておられる会社でした。ものづくりのこと、組織としてビジネスをやっていくということ、もがいている中でどんどん進んでいく、そのあり方をそのまま見せていただけました。
 それと、第一線で活躍されている社長さんが、いまでもずっと熱い思いを持って進まれていること、そして、突然訪れた私たち若者にいろんなことを教えてくださった姿勢に感動しました。お二人ともすごく気さくで、取材はとにかく楽しかったです。どんな業界の人も若者にはがんばって欲しいと思ってるんだ、地味な気持ちを持った熱い若者たちを待っているんだなあということがよくわかりました。大変勉強になりました。ありがとうございました!


 さてさて、そして後日、京都で最大の夏フェス「京都大作戦」で出店されているところにも遊びに行かせていただきました!
「京都大作戦」が行われた7月7日は、最高気温36度と全国でも京都府が最も暑かった日。2万人以上が訪れるここでは、さらなる熱気が~。暑い熱いー!

 雑踏の中、男前豆腐はどこに..................いや、間違いない! あれだ! ジョニーが立ってる!

デッチのオフィス訪問!〜男前豆腐編〜 デッチのオフィス訪問!〜男前豆腐編〜

チャールズああ、お疲れ様です。いや~実は豆腐が13時で完売してしまったんですよ~。

えええ! まさかの開場から3時間で完売! ああ~オリジナル豆腐、食べ損ねた~。

デッチのオフィス訪問!〜男前豆腐編〜

チャールズこんなTシャツも作ってますよ! これもものすごい勢いで売れました。「京都大作戦冷奴」は本当に1年にこの2日だけしか食べられませんから、また来年、リベンジに遊びに来てくださいね。

ジョニーいやあ、イベントって色々やるけどこんなに長蛇の列が出来るのは一年に二日だけだからねえ。ほんとすごいイベントだねえ。

―― それなら、だからこそここで儲けよう! とかないんですか......?

ジョニー......(苦笑)。まあ、これは祭りだからね。


最後まで、おっとこまえ!!!! 男前豆腐店さん、本当にありがとうございました!!

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