今月の特集2

「なんか、寒い・・・」
「外はポカポカ暖かいのに・・・」
「絶対このオフィスの中、外より寒いよね・・・」

 ミシマ社自由が丘オフィスで毎年恒例で繰り返されるこの会話。
 その寒さは真冬になると社内でダウンコートを着用するメンバーまで出現するほどです。
 そんな、すきま風吹きすさぶ自由が丘オフィスのメンバーと、寒風吹きすさぶ京都で越冬をしなければならない京都オフィスメンバーの切実な要望から、「暖ドリ」上段者の方々に、身体を温めるあの手この手を教わり、ミシマガ読者の方々にもお伝えしてみんなで冬を乗りきろう、企画が立ち上がったのでした。

 お話をうかがったのは、三砂ちづる先生(津田塾大学教授)と甲野善紀先生(武術を主とした身体技法の研究家)。偶然ですがお二人とも普段から着物を身につけられており、いろいろとラディカルな実践を積み重ねて日常生活を送られている、実践の達人です。
 どんな「暖ドリ」話が飛び出すのか・・・。
 2回ずつ計4日にわたり、一挙掲載いたします!お楽しみください!

(聞き手:星野友里 写真:清水美沙、赤穴千恵)

暖ドリ! 寒さを乗りきる 暖のとりかた 第3回

2013.12.18更新


寒さに弱くなった要因は塩分の摂取!?

―― 私たちは冬になると寒い寒いと言って暮らしているわけなのですが、昔はそれこそヒートテックもなければ暖房もない中で、武士も農民も生きていたのですよね。そのころはどのように寒さをしのいでいたのでしょうか。

甲野根本的な身体がちがうんですね。マイナス40度の旭川に住んでいたアイヌの人々が、たいした防寒具なども身に付けずに過ごせていたのは、塩分を摂らなかったからと言われています。塩分を摂るようになってから寒さに弱くなってしまったそうです。

―― 塩分!? 私たちも塩分を控えると寒さに強くなるのでしょうか?

特集2

甲野そんな簡単な話ではありません。現代ではそれは無理です。普通の人が塩分を抜くと、逆に余計寒くなります。でも、野生動物と同じような身体になると、寒さに強いのです。

―― ??

甲野どういうことかというと、鹿は、草に塩をかけて食べているわけじゃないでしょう。だけど、血液の中にはちゃんと塩分がある。一度、何かに含まれる微量の塩分を摂取したら、それを身体から逃がさないように、排出せずに、循環させる。それができる身体は寒さに強いんです。

―― なるほど!!


耐寒力、古今東西

甲野東北の方の文献で、麻を三枚重ねただけなのに「その温(ぬく)かったこと」と言っていたという記録があります。どれほど耐寒力があったかということですね。

―― ほんとですね。

甲野江戸時代でも、勝海舟が『氷川清話』の中で、夏の暑さがどういうものか、冬の寒さがどういうものかがわからないくらい、鉄のように身体が丈夫だったと書いています。天邪鬼な旗本なんかも、冬になるとわざわざ戸障子を開け放して、庭に水をうったりしているわけです。今よりよっぽど寒い時代だったと思いますけどね。

―― 食べもの、着るもの、住むところ、あらゆる要因から人間の耐寒力が落ちてしまっているんですね。

甲野現代でも、世界各地の人々の生活の話を聞くと、耐寒力の違いに驚かされます。これは少し昔の話かもしれませんが、チベットでは、生まれたばかりの子を冷たい氷水につけて、その子の生きる力をはかるっていうこともあったみたいです。イヌイットの人たちの場合は、人熱れが暖房なんです。氷の家にたくさん人が入って、14、5度くらい温度がある。その中で生活してる。

―― 赤ちゃんを氷水に・・・。

甲野ニューギニア高地人もすごいですよ。ニューギニアというと暖かそうですけど、高地は寒くて外気は4度ほど。新聞記者がニューギニア高地に行ったときの話では、記者たちはテントで寝袋の中で寝ないと無理です。一方、同行した現地の人たちはほとんど裸の状態でテントなし。布もかぶらないまま、ちょっとうずくまった状態で直に地面に寝ていたそうです。

―― 人間って、生き物としてはけっこう寒さに耐えられるんですね・・・!


「身体じゅう顔だと思えば」

甲野昔、及川裸観(編集部註:「笑いは健康の泉」との信念で 全国行脚し健康普及活動を行った日本の人物)って人が「身体じゅう顔だと思えば寒くない」とか言って、ニコニコ裸運動っていうのをやってたりもしてましたけど。

――「身体じゅう顔だと思えば」ってすごいセリフですね。

特集2

甲野根岸信五郎という神道無念流の有名な剣客が、駕籠(かご)かきに「お前たち寒くないのか」って聞くんです。彼らは、冬でもふんどし一枚に半纏ひっかけてるくらいで仕事をしていましたからね。そしたら「旦那は寒いからって、顔に着物を着やすかい」って。彼らも「身体じゅう顔だと思えば寒くない」ということですませていたようです。

―― うーむ。

甲野寒さって精神状態で全然違うんですよ。タイタニックが沈没したときは、40分くらいでだいたいみな凍死してしまった。だけど、北朝鮮からの脱北者が川をわたるとき、見つかりそうになるたびに冷たい水の中に潜って、2時間くらいつかっていても逃げてくる。「殺されるかもしれない」という危険があることでアドレナリンが出るのかもしれません。

―― なるほど。


甲野先生の「暖ドリ」術

―― 先生はいつも着物で過ごされていて、寒さにも強そうな印象があるのですが、オススメの暖ドリ術はありますか?

甲野私も昔にくらべたらずいぶん寒さに弱くなりましたけど、着物を着ると気持ちがパーンと変わって、けっこう平気なんです。すごく寒いと重ね着しますけど、コートなどは着ないでレッグウォーマーを腕や脚につけるくらいです。

―― やはり精神は大事ですね。

特集2

甲野あとは、やっぱり身体を動かすことですね。中から動かして暖かくするのが一番です。「みちのく山道」という、大小さまざまな凹凸がつけられた商品をプロデュースしたのすが、それを踏んで、足の裏からあっためるといいですよ。
打撲したところって熱をもちますよね。それと同じです。オフィスに置いて、「痛い痛いっ」て言いながらデコボコを踏んだらいいんじゃないですか(笑)

―― みんなでやったら楽しいかもしれません(笑)


・・・先生の頭の引き出しはどうなっているのだろう!!と思うほど、次々といろいろなお話が飛び出す怒涛のインタビュー、明日もまだまだ続きます!お楽しみに!

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