今月の特集2

「なんか、寒い・・・」
「外はポカポカ暖かいのに・・・」
「絶対このオフィスの中、外より寒いよね・・・」

 ミシマ社自由が丘オフィスで毎年恒例で繰り返されるこの会話。
 その寒さは真冬になると社内でダウンコートを着用するメンバーまで出現するほどです。
 そんな、すきま風吹きすさぶ自由が丘オフィスのメンバーと、寒風吹きすさぶ京都で越冬をしなければならない京都オフィスメンバーの切実な要望から、「暖ドリ」上段者の方々に、身体を温めるあの手この手を教わり、ミシマガ読者の方々にもお伝えしてみんなで冬を乗りきろう、企画が立ち上がったのでした。

 お話をうかがったのは、三砂ちづる先生(津田塾大学教授)と甲野善紀先生(武術を主とした身体技法の研究家)。偶然ですがお二人とも普段から着物を身につけられており、いろいろとラディカルな実践を積み重ねて日常生活を送られている、実践の達人です。
 どんな「暖ドリ」話が飛び出すのか・・・。
 2回ずつ計4日にわたり、一挙掲載いたします!お楽しみください!

(聞き手:星野友里 写真:清水美沙、赤穴千恵)

暖ドリ! 寒さを乗りきる 暖のとりかた 第4回

2013.12.19更新

生き物は、信じられないほど効率がいい

特集2

甲野体温を一定に保つ恒温動物って、その維持にエネルギーをものすごく使っているんですよね。蛇や蛙といった爬虫類が食べなくても平気なのは、体温を維持しなくてもいいからです。哺乳類の中でもナマケモノは、変温動物だからゆっくりとしか動けない。しかし、そのおかげで、ジャガーなどは動体視力で獲物を捕らえるから、ナマケモノが木の上で動いていても「木の枝が揺れてる」としか認識しない。「ゆっくり」だからこそ、身を守れているわけなんですけどね。

―― 生き物って、よくできてますね!

甲野ナマケモノも木から落ちるとアドレナリンがでるのか、大急ぎで登っていくらしいですが。

―― なまけてないときもあるんだ(笑)。

甲野私が本に書いた、森美智代って人は一日青汁一杯弱で十数年間生きています。彼女は腸内細菌が全然違うんです。便通を良くするための食物繊維を、全部腸内細菌がアミノ酸に分解してしまう。効率が全然違う。でも、普通の人間でも、おにぎり10個分で一日活動できます。これはそのおにぎりを米の粉にして考えれば、たいして太くない薪一本分でしょう。薪一本で人型ロボットが一日活動すると考えると、生き物って信じられないほど効率よくできてますよね。

―― う~ん、ほんとですね。


循環型だった江戸時代

甲野命って不思議ですよね。そんなふうに、効率のよい生き物のエネルギーを考えたら、原発や石油とかってどうなんでしょうね。ある人が言ってましたけど、「石油なんて古代生物の墓をあばいているだけだから、いいことないんだ」って。
今も、シェールガスをものすごく掘ってますけど、周囲にいる人は嗅覚を失ったりして大変なようです。まあ家のまわりでずっとシンナー遊びをされているようなものですからね。

―― 石油にしろ、シェールガスにしろ、有限なものを使い尽くしていくかぎり、行き着くところは同じですよね。たとえば江戸時代などは、どんなふうに資源を使っていたのでしょうか?

甲野江戸時代は、きちんと資源は循環していたんですよ。繊維を織って、よそ行きの着物から、普段着にして、着れなくなったら小物入れにして、使えなくなったら赤ちゃんのオムツにして、さらに雑巾にして、もっとどうにもくたびれたら「蚊遣り」といって煙でいぶして蚊よけに使う。最後に燃やしても環境汚染にはならない。一着の着物を最後まで使い切って、あとには何も残らない。循環型ですよね。

―― すごい! よくできてる!

甲野渡辺京二先生の『逝きし世の面影』にも書いてありましたけど、江戸時代の江戸近郊の農家は、「息をのむほどの美しさ」だったと言われています。もし江戸時代に3日タイムスリップできるなら、あとの寿命10年縮んだっていいというほど、当時の様子を見てみたいです。


肥料を与えてはいけない

―― 現代の日本には、江戸時代のような循環型の社会に戻っていく手立てってないのでしょうか。

甲野原発とプラスチックが出きてからは、もう循環型には戻れなくなってしまいましたよね。人間が絶えず手を入れなければならない。作物も同じです。人が肥料を与える。野菜をずっと置いていると、腐ったときにベトベトしてきますよね。あれって、肥料の与えすぎで窒素分過多だからそうなるんです。自然農法だと、ただしおれるだけなのに、腐ってベトベトになるって不健康な野菜なんですよ。

―― そういえば、野菜が腐ったときってベトベトしてます・・・。

甲野今までの農業の知識がある人だと、なかなか「肥料を与える」という考え方から抜けきらないんですよね。ちょうど、スポーツ関係の人がトレーニングという概念から抜けきらないのと一緒で。

―― うーん、なるほど。

特集2

甲野今まで、色々な世間の常識外な方法に出会ってきましたけど、今秋出合った炭素循環型農法には、今までにそう何度もない大感動をしました。現在の時代に合っていると思ったのは、主に竹をチップにして畑にいれるんですけど、今、西日本では、竹が増えすぎて雑木林も竹林にどんどん変わってきていますが、その竹を利用できますよね。そして、何よりも感動したのは、「肥料を与えてはいけない」という考え方です。

―― 肥料を与えなくても農業はできる?

甲野この農法は菌との共生なんですよ。菌が増えれば、菌と根がコミュ二ケーションをして、必要な分だけ栄養を作物に与える。そして、作物が健やかに育つ。肥料を与えるっていうことは、たとえれば、原発作るっていって賛成派に金を与えて平和な集落のコミュニティをメチャクチャにすることと一緒です。

―― 「作物の育て方」と「社会の構造」が重なっているのですね。


食べ物が冷えの元凶

甲野鶏の卵も、養殖の魚も、牛乳も、現代ではひどい状態で生産されています。そうしたことを知ってるほうが幸せなのか、知らないほうが幸せなのかと思いますけどね。男子が草食系になったなんていわれてますけど、牛乳のせいもあると思うんですよ。牛乳って、近代になって西洋からはいってきた食文化ですが、現在の牛乳は妊娠中の牛からも搾っているから、女性ホルモンが多い。いろんなアレルギーの素になってると思いますよ。

―― 卵も魚も牛乳も・・・。

甲野養殖の魚は、どれだけ抗生物質づけになっているかわかりません。また、フォアグラの製造過程で、ガチョウやアヒルが限界を超える飼料を無理やり食べさせられて、力尽きてどんよりしている目の映像がありますけど、これを見ると、皆さん胸が痛いようです。

―― う~ん。普段私たちが口にしている食品には、人の手が絶えず介入しているわけですよね。

甲野食品という根本から正さないと。それが冷えの元凶です。今は沢山の問題が山積みですけど、そうした問題を解決しよう、世直しをしようと奮起することで、体温も上がるんじゃないでしょうか。

―― 暖ドリは、第一次産業の見直しからですね!


 身体の話、歴史の話、世界の話、エネルギーの話・・・縦横無尽に繰り広がった先生のお話、掲載しきれなかったものもたくさんあるのですが、それはまたいつかの機会に・・・。 先生のお話に追いついていくためにアドレナリンが出たようで、身体もホカホカでインタビューを終えました。

 三砂先生、甲野先生、本当にありがとうございました。
 みなさま、暖かな冬をお過ごしください!

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

バックナンバー