今月の特集2

 今週、ミシマ社からひさしぶりのビジネス書、『逃げない・めげない カイシャ道』(藤井大輔著)が発売となりました。

 この本のはじまりは、約3年前、2010年12月14日――。
書いて生きていく プロ文章論』(上阪徹さん著)の発刊記念トークイベントのゲストとして藤井大輔さんにお越しいただいたことがきっかけでした。

 打ち上げの席で、藤井さんのトークの引き出しの多さに感銘を受けた仕掛け屋ハセがミシマガでの連載依頼を敢行。「脳内会議」「仕事で少し傷ついた夜に」として連載いただいていたものを、このたび書籍として再構成、発刊の運びとなりました。

 今回は、ある意味この本ができるきっかけをつくってくださったライターの上阪徹さんをゲストにお迎えし、お二人が考える「カイシャ」についてお話いただきました。長くキャリアを積まれてきたお二人だからこその、「カイシャ」の意外なありがたさや、独立にまつわるいろいろなお話。全3回でお届けします。どうぞお楽しみください!

(聞き手:星野友里、長谷萌 構成補助:野津幸一)

藤井大輔×上阪徹 カイシャって、どうでしょう。 〜『逃げない・めげない カイシャ道』刊行記念対談〜第1回

2014.02.17更新





リーダーになるという宿命

上阪今回の本を読んでいると、「うわ藤井さん苦労してんな~!」って思いましたね(笑)。

藤井あはは(笑)。そうなんですよ、今回本を書かせていただくときに三島さんに言われたのは、「とにかく失敗談を書いてくれ」ってことで。かなり惜しみなく披露していますね。

上阪本のなかに、ひとつ印象に残っているフレーズがあって。「会社員をやるかぎり、リーダーになるのは宿命です」って言葉なんだけど。「お~、そのとおりだな」と(笑)。

藤井ありがとうございます(笑)。本にも書いたんですけど、「先輩と後輩」になった途端に、リーダー的なものって求められると思うんです。最小単位で組織を動かしていく力が、入社して3、4年目くらいから求められるようになると思いますね。


上阪以前、ブックライターとしてお手伝いした『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(岩田松雄著、サンマーク出版)が、30万部売れたんですね。そのときに、「リーダーの仕事をやらなきゃいけない」って自覚している人は実はけっこう多いことと、その「リーダー」ってものについてみなさん誤解をしていて、「とんでもないことをしなきゃいけない」みたいなイメージを持っている、ということが頭の中でつながったんです。こういう本を求めている人は、案外多いのだなと。
 
藤井上阪さんは、基本的に組織とかチームとかではなくて、ひとりでお仕事をなされていると思うんですが、やっぱり気楽さ、みたいなものはありますか。

上阪僕、組織やチームに向いてないんですよ(笑)。前の事務所はかなり広々とした場所だったので、スペース的には何人かスタッフを雇ってもよかったんですけど。奥さんいわく「自分ができることを人ができない、ってことに対する苛立ちが顔に出る」と。「あんたみたいなのには絶対ついていかないよ」ってバッサリ言われました(笑)。

藤井なるほど(笑)。でもそういう意味でいくと、僕も基本的には自由が好きでした。僕の場合、『R25』の編集長みたいなところから始まってしまったので、「自分がおもしろいものを作るから、お前らがついてくればいいんだ」みたいな雰囲気で途中までやってきたんですけど、どこかで業務量としての限界がくるんですよね。限界が来ちゃったから、自分を変えないとどうにもならなくなって、「リーダー」に向き合うようになった気がします。


「断れない」から成長する

上阪なるほど。そういう限界みたいなものは一人でやっているとコントロールできるので、「無理だ」って断っちゃうんですよね。断れちゃう。

藤井あー。たしかに、そう考えると会社って、断れないですね。

上阪でも、そういうふうにして、組織にいる人は強くなっていくと思うんですよ。いろんな意味で。フリーの場合は、自分に甘えてしまうと、何でも「もういいや」となってしまうリスクがけっこうあるんですね。
 
藤井なるほど。会社組織にいても、フリーっぽい働き方をめざす人もいるじゃないですか。そういう人たちってけっこう、仕事の話が来ても「いま忙しいから無理です」とか言って断っちゃう。でもそういうことをしちゃうと、自分が成長できる機会を失っちゃうんですよね。

上阪思ってもみない仕事を押しつけられたりとか、自分のこなせる範囲を明らかにオーバーしている仕事を理不尽に押しつけられるって経験は、とくに若いころはしておいたほうがいいと思いますね。そういう経験ができることも、会社員のメリットじゃないかなあ。

藤井けっこう大変ですよね、自分でそうやって負荷をかけるの。

上阪大変ですね。あとは、なにかしらの転機が訪れなければ、何十年もずっと同じ仕事をするのか、って話にもなってくるわけじゃないですか。その転機を会社が作ってくれるわけで。ただ、そういうふうに会社員のよさ、みたいなものを痛感する反面、「誰のせいにもしなくてすむようになった」っていうのはフリーになったメリットかもしれないですね。やれ「上司が悪い」だの「会社が悪い」だの言わなくてよくなった。とにかく「全部自分が悪い」ですから。


スーパーエリートサラリーマンになりたかった

上阪実は、僕はもともとフリーになるつもりはまったくなくて。転職して、エリートになりたかったんですよ。エリートサラリーマンに(笑)。

藤井・・・あの、上阪さんの若いころのお話を伺っていると、こう言うとあれですが、浅はかというか(笑)。

上阪そうなんですよ。若いころは地雷を踏みまくって生きてました(笑)。

藤井できるだけラクして稼ぎたい、みたいな(笑)。

上阪と思ってたら、落とし穴にズボーッとはまって、みたいなことの繰り返しです(笑)。
 最終的には、リクルートでコピーライターの仕事をするのを諦めて、逃げたんです。転職して、給料がどーんと上がり、役職もついて。ベンチャーだったので、そのうち経営陣にでもなるのかなー、なんて思っていたら、3カ月で潰れまして(笑)。そこから、なし崩しでフリーになった、という感じですね。まあ今思えば、フリーのほうが居心地よかったわけですが、それは結果論に過ぎません。でも、もう20年ですからね。

藤井すごいですね。20年・・・。

上阪で、話を戻すと、マネジメントっていう、やりたくないようなことをやって藤井さんは鍛えられてきているわけですよね。だから、この『逃げない・めげない カイシャ道』を読んだら、グッとくる方々がたくさんいるんじゃないかな、と思いました。僕自身は経験がないのでわからない部分もあるけど。

藤井ありがとうございます。


身内だからこそ評価してもらえる

藤井やはり30代ぐらいから「オレについてこい」スタイルでは回らない、というふうになって、もっと人のよさを引き出したり、モチベーションを引き出したりするやり方をしなければ、と思っていたんですけど、第三者評価的なサーベイみたいなのが来ると、いつも「人に冷たい」とか「目が笑ってない」って書いてあったりして(笑)。

上阪あれは、しんどいよね(笑)。

藤井はい(笑)。そういうのを見て傷ついたり、「人を動かすことの恐さ」みたいなものは学びましたね。

上阪なるほど。会社を辞めてみて思ったんですが、会社にいるのって身内じゃないですか。実は査定評価って、身内だからこそできることですよね。外部の人間は評価してくれない。仮に評価してくれたとしても、本気で言っているのかわからない。リップサービスかもしれませんし。

藤井あー。シビアなもので、「良かったです」と言っていた編集者からその後ひとことも連絡が来ない、みたいなことはありますよね。仕事が来ないとか(笑)。そういうところで、最終的には評価されるじゃないですか、フリーランスの方は。そういう部分で切った張ったをされていると思うのですが。

上阪そうですね。「0か1」なんですよ。僕はわりとそういうのが好きだったから受け入れられたんですが、結果がすべての厳しさはありますよね。後輩から、それこそ「目が笑ってない」とかいう評価をもらうのはたしかに嫌だけど、言ってもらえることによって自分を直すことができる。フリーの場合はそういう機会がきわめて少ないんですよね。返ってくるのは「気に入った」か「気に入らなかった」か、それだけなので。

藤井よく「強みを発揮して、強みで勝てばいい」みたいなこと言われていますが、やっぱり強みを活かすためには、弱みをある程度カバーしなきゃいけないですよね。で、その弱みがどうしても消せないのであれば、それはもう持ち味、みたいにして、強みにしていく、とか。そういうことを、それまでは考えたことがなかったんです。でもマネジメントのほうに入っちゃうと、そういう部分も見られているんだなって思いますね。

※明日は『R25』の創刊秘話などをお届けします!

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