今月の特集2

 今週発刊しました『逃げない・めげない カイシャ道』(藤井大輔著)。

 昨日から3回にわたり、『書いて生きていく プロ文章論』の著者であり本書ができるきっかけをつくってくださったライターの上阪徹さんをゲストにお迎えし、お二人が考える「カイシャ」についてのお話をお届けします。

 2回目の今回は、『R25』の創刊秘話や仕事への姿勢のお話をお届けします。どうぞお楽しみください!

(聞き手:星野友里、長谷萌 構成補助:野津幸一)

藤井大輔×上阪徹 カイシャって、どうでしょう。 〜『逃げない・めげない カイシャ道』刊行記念対談〜第2回

2014.02.18更新


大喜利の司会のようだった『R25』会議

上阪『R25』の話を聞いたのは、仕事をご一緒していた編集者が「藤井くんっていう後輩が、厄介なプロジェクトを立ち上げようとしていて、すっごく大変そうにしているんですよ。上阪さん、助けてあげてくれませんか」と言われたのが最初ですね。「なんかフリーペーパーをやろうとしていて・・・」みたいな話を聞いたときに「あ、これは絶対コケるな」と思いました。「これは、やめたほうがいいよ」とか言ってましたよね(笑)。

藤井僕自身も、「いや、これ絶対無理だろうな」って思ってました(笑)。


上阪でも、藤井さんにとっては、いろんな意味で大きな転機になりましたよね。例えば、外注の猛獣たちをコントロールすることもそう。僕もそのとき初めて後に有名になる『R25』の編集会議「レビュー会議」に出たんですけど、名刺交換してて「みんな変わってんな~」って思いましたもん(笑)。

藤井上阪さんも思われていたと思います(笑)。

上阪僕だけスーツ着ていたしね(笑)。しかも、会議に出ていると、全然まともに進行しないんですよ。ずっと喋っているやつがいたり。そういう猛者たちをコントロールするのは大変そうだなと思っていましたね。

藤井大喜利の司会みたいでしたね。

上阪僕が一番覚えているのは、会議の終わりで、ネタを十数個選んで藤井さんがホワイトボードに書くわけですね。そしたらリードとかサブタイトルみたいなものが、きちんとできていて。「これ、いつ考えているんだろう」ってびっくりしました。不思議でしたね。

藤井あれは、一回会議が終わって、みなさんタバコとか吸いに行くじゃないですか。あの休憩の15分ぐらいでガーッと考えて書いていました。

上阪そうだったんだ。いや、すごいなと思って。やっぱりああいうのってナマモノだから、その場でやんなきゃダメなんですよね。持って帰るんじゃなくて、あの場でパパパッと考えてしまうのが一番いい。

藤井そうなんですよ。一回だけ、持って帰って考えようとしたことがあるんですけど、結局考えられないですし、できたとしてもなんとなく、空気感が違うんですよね。やっぱりナマモノだと思います。


好きなことを仕事にしたら幸せ?

上阪そうそう、本『逃げない・めげない カイシャ道』の中でもうひとつ、「働き方」でおもしろいなと思ったところがあって。「好きなことを仕事にしたら幸せ?」という章の中で、「好きな仕事は飽きる。嫌いな仕事は慣れる」と書かれていて。「飽きは快感を薄くしていく。慣れは苦痛を減らしていく」っていう観点は、すごくおもしろかった。

藤井ありがとうございます。

上阪みんな「好きなことを仕事にしたい」、「嫌なことはできればしたくない」と言っているけど、実は「飽きる」って盲点ですよね。

藤井そうですよね。本にも書いたんですけど、そういうのって「自分が悪い」というか、「ワクワクしない自分がダメなんだ」みたいな考え方になって、自分を責めがちになったり、袋小路にはまりやすい気がするんですよ。

上阪あー。好きな職に就けただけに、余計にね。

藤井介護の世界を勉強したときに、ある先生がおっしゃっていたのですが、デイサービスのレクリエーションにパッチワークがあって、ファッションデザイナーをずっとやっていた方に良かれと思って「ぜひ一緒にやりましょう」と言ったら、すごく拒絶されたらしくて。
 なぜかというと、その方はずっと「仕事として」やってきたからなんですね。趣味で手芸をやられていたような方は夢中でやっているのに、「私はいい。やりたくない、疲れるから」と言っていたらしいです。

上阪うーん。やっぱり今もまだ「好きなこと探し症候群」みたいなものは若い人のあいだに残っていて、「好きなことじゃないから、仕事がうまくいかない」っていうのが言いわけになっているような気がします。実をいうと僕は、文章を書くのも読むのもキライなんですよ。だけどこういう仕事をしていて、うまくやっていけているというか、いろいろ仕事をやらせてもらっているので、不思議なものだなあって思いますね。

藤井あー。客観性みたいなものが、あるのかもしれませんね。僕も以前は、介護や高齢者にまったく興味がなかったんです。でも今はすっごくおもしろいですよ、介護の世界。ある種「対象化されている」というか、自分との距離がある分、「あ、こういうこともできそう。ああいうことも」とか思いついたりして。


介護の世界を見て考えたこと

藤井これは本を書いていたときにはぜんぜん考えてなかったんですけど、介護の勉強をここ1カ月くらいしていて思ったことがあるんです。介護の世界って、「給料が安い」とか、「労働環境がきつい」とか、そういうことが主要因で離職率が高いとか聞くんですけど、現場に出てみると、「意外とそうでもないな」って気づいたんですよ。
 みなさんけっこうマジメすぎるというか、やさしい福祉の心をもった職員さんなんです。 利用者の方々に介護をしに行くと、最後は亡くなる方が多いですよね。そしたら「私、3カ月前にこういうことを頼まれたんですけど、あのときああしてあげればよかったな、と思って」とか、「亡くなる3日前に、『こういうことがしたい』って言っていたけど、忙しくてやってあげられなくて。あれ、やってあげれば良かったなあ」とか言うんですよ。なんというか、寄り添いすぎてキツくなっちゃう、みたいな。
 
上阪ちょっとマジメすぎるんだ。看護師とかもそうだよね。 むしろ、ぜんぜん向いてなさそうな、けっこう荒っぽくて、性格も営業マン系の、リクルートとか行ったら営業で売れそうなタイプの子が、見事にやっていたりする。医者に気に入られ、現場で気に入られ、サバサバしているからか患者にも気に入られる。不思議だなあと思いますね。

藤井そうですね。うちの母親とかもまったく介護とか向いてなさそうなタイプで、「あれは参入の機会があったからやったんだ」みたいなことを言うんですよ。「私に介護の心はあまりありません」とか言って(笑)。従業員にもすぐ「金」みたいな話をする。儲かりそうにない仕事はしない、って。そんなこと言うんですけど、意外と人望厚いんですよ(笑)。

上阪あはは(笑)。でも、意外とそういうものなのかな、って気はしますよね。好きなものって、自分の持っているイメージと違うものに遭遇したときに、耐えることができないのかもしれない。憧れのイメージが大きすぎちゃって。

藤井そうですね。ある種対象化してしまったほうがいいのかもしれない。

上阪うん。仕事は仕事として割り切る、みたいな。


※明日はいよいよ最終回。引き続き仕事との距離の取り方や『カイシャ道』の歩き方などをお届けします!

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