今月の特集2

 2014年10月10日、青山ブックセンターにて作家の早見和真さんと、ミシマ社代表三島邦弘のトークイベントが開催されました。

 東京を離れた地で傑作『イノセント・デイズ』を書き上げた早見さん。
 東京を離れて「出版不毛の地」で出版社をつくる動きをとった三島。

 作家、編集者の立場から、「東京一極集中」とは違う世界、「地方の可能性と現実」を語り合いました。2人とも鼻炎(東京のせいという説あり?)を抱えながらも、おおいに盛りあがったトークの様子を3回にわたりお送りします。

 2回目の今日は、ミシマ社の経営の話が飛び出しました。

(構成:星野友里、写真:池畑索季、構成補助:高橋賢治郎)

早見和真×三島邦弘 地方で作家、出版社をするということ

2014.10.30更新

一人出版社なら地方でもできる

三島(伊豆にこもっているときは)若干さびしい?

早見基本さびしがり屋なんです。でも一つ、これは伊豆に行ってみるまでわからなかったこととして、ぼくの今の基本的なルーティンはひと月4週間伊豆で没頭して誰ともしゃべらず書いて、一週間東京来て、打ち合わせしたり、友だちと会ったりなんです。そうすると、東京で惰性で人と会っているときよりも、その一週間のほうがはるかに人と向き合ってるし、会話できてる。伊豆でフルーツグラノーラ食ってるぼくが東京では1日7食くらい食ってるんですよ。

三島人と会いますもんね。東京って本当にすごい町で、いるだけで何かが動いていて。雑談だったりとか、とくに打ち合わせとかじゃなく会ってたりとか、そういう時間が圧倒的にあって、その土台があるからこそ向き合った打ち合わせが活きてくる。編集者としてはけっこう大きいなと思いましたね。

早見なるほど。

三島城陽おって、一番なかったのがそこで。雑談をする人がおらんというのが一番しんどかったですね。京都から東京にくると、完全に出稼ぎ状態ですから、この一日の中で絶対に全部を決めないといけないというふうになると、本当は色んなものをゆったりと構えてると、全然違うものが見えてきたりするときもあるんですが、瞬間的に視野狭窄になって、自分では集中しているつもりでも、視野が狭くなるっていう打ち合わせをけっこうしていたなって。この3年、振り返ってすごい思いますね。

早見そのへんは編集者のほうが大事かもしれないですね。

三島そうなんです。ひとつ思ったのは、作家さんは地方で全然できるなと。出版社も一人出版社ならできるなって。ただ、その一人出版社というのは裏を返せば作家的な感じじゃないですか。その人が全面的に出てその人の個性だけで成り立つ。表現の延長上にあるような出版社だったら、どこだってできるから、城陽でも一人ならできるな、というのはけっこう思いましたね。


Thinkしない経営

早見なんか、最初に2008年に三島さんとお会いしたときは、全然マネージャーとしての三島さんは見えてこなかったんですよ。いちプレーヤーとしての三島さんがぼくに会いにきてくれたし、プレーヤー同士でしゃべったような気持ちだったんです。でも、全然悪い意味ではなくて、年々マネージャーとしての三島さんの顔が見えてくるんですよね。これ絶対に今だって葛藤していると思うんですけど、どっかでどうにもならない日がくるとぼくには見えていて。社長三島さんと編集者三島さんがどうにもならない近い未来が。「あなたの組織の理論いらないんですけど」ってぼくが怒るような日が。そしたら次、もう一歩いくのかなという気もするんですけど。どうすか、そこらへん?

三島そうだと思いますね。生涯いちプレーヤーとしてずっと生きていこうと思っていて、その流れとして最初一人で出版社をつくったわけです。それが社員が1人、2人と増えてくと、そこはぼくの責任になって来るわけですから、最初、うわーこれきついなって。それでもその頃は、社員が増えても、徹底してプレイヤーとして日々やっていくことが、結果として会社も動いていくことになると思っていたんです。それはたしかにそうで、自由が丘一拠点でならそれでよかった。ぼくのパフォーマンスが上がったら、会社のパフォーマンスも上がる、これが比例していた。

早見うん。

三島二拠点になったらそれは絶対無理で、それぞれが独立したチームとして動いていくことしかない。そこからすごく考えて葛藤しだしたりして。でも単にいちプレーヤーとしてしかやってなかったとしたら見えてなかったものの実感とかを持てて。基本的には実感ベースで動いていきたいんで、そこは視野は広がったかなとは思いますね。それは編集のほうでも往復運動的に活かされるものがあるんでないかと思ってます。

早見こじつけではないですけど、感覚として編集者はFeelで、マネージャーはThinkだと思うんですよね。

三島きっと、そうだと思うんですよ。でもぼくはThinkしない経営です・・・ねぇ。城陽時代にThinkしたんです。考えて、考えて、考えて、考えるほど会社は上手くいかなかったです。それを解放するためにこの本を書いたってところもあって、そうだったんだーって自分の中で発見を書いて、そうして最後書き終わったときに、パッて開かれた感じがあって、よし、これからは感覚だけで生きていこうと思って。そこからいい感じですね。

早見いい感じは伝わってきますよ。いい感じのときしか、連絡くれないから(笑)。

三島そうかもしれない、たしかに。


地方のものづくりでしか、できないこと

早見城陽の2年間は出版点数のアベレージも悪かったんですよね。

三島はっきりいって、その間なにもやってないですもん。だって古墳と向き合っても本はできないですよ。

早見京都市内に移ってからはそこは解決しました?

三島数と回転し続けるということに、ある種価値があって、そこから何かが生まれるというのはダイナミックだしすごく面白いんですけど、これは東京でしか成り立たない。そのやり方を地方で求めていったら絶対無理だと思うんですね。逆に東京では、自分の足下がどうなっているかをあまり知らずにやってる。それが京都では自分の足下から見える所でしかできない。回転しないんで、とりあえず足場を固めましょう、ということをいまやってます。

早見うんうん。

三島農業のたとえでいったら、タネをポンとまいたらポンと出るのが東京なら、東京以外の場所なら土をやわらかくしてからかなという感じですね。そこは時間がかかりますし、短期間で促成栽培的にやるっていうことが基本的に不可能で。でもそういうものづくりの中でしかできないことってのがあるんじゃないかいうことが、京都でやっているからこそ自分のなかで見つかった。それをちょっとずつ実践しているんですね。


    

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早見和真(はやみ・かずまさ)

1977年、神奈川県生まれ。大学在学中より、ライターとして活躍。2008年、『ひゃくはち』で作家デビュー。同作は映画化、コミック化されベストセラーとなった。他の著書に、『スリーピング・ブッダ』(角川書店)、『ぼくたちの家族』(幻冬舎)、『ポンチョに夜明けの風はらませて』(祥伝社)、『6(シックス)』(毎日新聞社)、『東京ドーン』(講談社)がある。

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