今月の特集2

 2014年も、残すところあとすこしとなりました。
 みなさんは、今年一年、どんな本に出会いましたか?
 小説やエッセイ、ノンフィクションに人文書、ビジネス書......きっとたくさんの、素敵な本たちに出会ったのだろうなあと想像します。一年間読んだ本たちを振り返るだけでも、「そう言えばこの本を読んだときは、こんなことを考えていたな」といろんなことが思い返されますよね。

 ミシマ社では毎年、年末に「今年の一冊!」を決めるふたつのイベントを開催しています。ひとつは、紀伊國屋書店梅田本店の書店員・百々典孝さんによる「百々ナイト」。そしてもうひとつが、メンバー内で「今年一番面白かった本」を紹介し合う「今年の一冊座談会」です(その様子はこちらから)。
 今回はそのうちのひとつ、毎年恒例「第3回百々ナイト」の様子をお届けします!

(構成・写真:新居未希)

2014年 今年の一冊! 百々ナイト編

2014.12.29更新


書店としてできるひとつの動き



『銀二貫』髙田郁(幻冬舎文庫)



『仏果を得ず』三浦しをん(幻冬舎文庫)



三島百々さんの2014年は、いかがでしたか?

百々今年も面白かったです。2013年に大阪の書店員有志ではじめた「Osaka book one project」では、第一回を受賞した高田郁さんの『銀二貫』が今年NHKでドラマ化に発展。今年は第二回受賞作も発表することができました。ちなみに第二回の受賞作は、三浦しをんさんの『仏果を得ず』です。これは文楽のお話なんですが、三浦しをんさんの文楽熱はもちろん、文楽というものに興味を抱き、大阪の文化に造形を深めるきっかけになる一冊だと感じ、選びました。
 文楽はいま、府から予算が削られてしまって大変なんですよね。この本が、文楽という伝統文化の維持のために、書店としてできるひとつの動きなのではないかなと。

三島なるほど〜。

百々あともうひとつは、大阪の書店員で『西加奈子と地元の本屋』という本を作ったことです。西加奈子さんという、大阪で育った作家さんの『円卓』という小説が、この6月に映画化されたんですね。そのときに、大阪の作家さんの本が映画化になったんやから、何かしないとあかんやろ! とお酒の席で盛り上がって(笑)。

三島酔って打ち合わすと、加速しますよね(笑)。

百々じゃあ本屋同士で集まって、『円卓』の映画化を応援するものをつくろう、という話になりました。西加奈子さんを知って映画を観る。映画を観て、西さんの本を読む。そういう循環で、大阪の書店を盛り上げていこう! ということなんです。


作られたものを売るだけが本屋ではない

百々いまはもう、ほとんどの出版社が東京にあります。そうなると、大阪が舞台の小説ってマーケットが大阪にしかないから、本にしにくいんです。大阪でもそうなので、地方を舞台にした小説はどんどん舞台が東京に変わってしまう。この田舎の風景は鎌倉にしましょう、というふうに。昔だったら地方に小さい出版社があったけれども、いまはなかなか難しいですよね。その最初の一歩として『西加奈子と地元の本屋』を、大阪の出版社である140Bさんと一緒に作れたのはすごく面白かったです。

三島この本、ライブ感があってめちゃくちゃ面白かったです。はじめのほうの、西加奈子さんと津村記久子さんとの対談なんて声だして笑いました。

百々本屋って、作られたものを売るだけではない。力をあわせれば、守っていけるものがあるのではないかと思えた1年でした。とくに地元の文化を発信するという意味では、地方の出版社だと書店との距離がすごく近いから、手と手を取り合ったらすごくいいものができると思うんですよね。

三島ちなみに今年の直木賞・芥川賞は、どちらも関西の作家さんでしたよね(直木賞は黒川博行さん、芥川賞は柴崎友香さんが受賞)。

百々今年は関西の作家が波にのってますね。それをもっとアピールしていきたい。大阪って、出版業界においてはマイノリティなんですよね。高尚なものは東京から、みたいな雰囲気があるじゃないですか。あれ、これ思ってるのって僕だけかな(笑)。

三島たしかに少しその感じはありますね。校正者の方は、基本的に標準語に直そうとします。たぶん染み付いてらっしゃるんですが、「ほかそか」などと書いてると「よくわかりません」と指摘が入ってくる。無言の標準語圧力があるんでしょうね。出版って、小さな単位でできるからいいと思うんです。いろんなことで自分たちのセンスを発揮できるからいいのであって、ひとつの価値で動くほど面白くないことはないですよね。


今年は「デザイン思考」

『ピクサー流 創造するちから』エド・キャットムル、エイミー・ワラス(ダイヤモンド社)

百々では、第3回百々大賞を発表! ......のまえに、一冊『ピクサー流 創造するちから』(ダイヤモンド社)という本を紹介したいと思います。ビジネス書には毎年なにかしら流行があるんですが、今年の流行りは「デザイン思考」でした。今までのビジネス書では、松下幸之助、本田宗一郎など各界のリーダーが書く「俺についてこい!」というような感じのものが主流だったんですね。けれどこの「デザイン思考」というのは、一人のリーダーが引っ張って行くのではなくて、みんなで協力してみんなでつくりあげよう、という本なんです。「デザイン思考」系の本は今年数多く出たんですけども、この本が断トツで素晴らしいですね。

三島おお〜。

百々ピクサーって、『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』、そして『アナと雪の女王』など出すもの全部ヒットしてるんですよね。それもシリーズをブラッシュアップするのではなく、いちから創って。あれほど成功しているメーカーはないですよね。
 ピクサーは、社員一人ひとりがプロ意識を持っていて誰もが妥協しないし、一人でも反対すると、またゼロから作り直す。だからこそ失敗がないんです。社員のなかに一人でも納得しないものがいない組織をつくる。それがピクサーなんですよね。そんなピクサーの秘密「デザイン思考」について書いてある、すごく面白い本でした。

三島売れる本だけを作り続けるというのは、出版社的には嘘だろうとなるんですけども、映画という世界でそれを実際にやっているんですよね。

百々それでかつ、子どもたちに夢も与えている。流行りで売れた本は、あとから読んだら恥ずかしいようなものもありますよね(笑)。けどピクサーの映画はそうはならない。それはなぜなのか、興味深く読みました。

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