今月の特集2

『ネコリンピック』益田ミリ/作、平澤一平/絵

 2014年12月、ミシマ社刊の絵本第3弾『ネコリンピック』が発刊になりました。
 著者は、『はやくはやくっていわないで』『だいじなだいじなぼくのはこ』(どちらもミシマ社)でおなじみ、益田ミリさん(作)・平澤一平さん(絵)のコンビです。
 読んでくださった方から、「我が家でなんでも語尾に『にゃー』をつけるという現象がおこっています」というお声をたくさんいただいている本作。どうやら日本全国で「にゃーにゃー」旋風が巻き起こっているようです。

 しかーーし、この『ネコリンピック』のよさを、もっと多くのひとにお伝えしたい!!!
 もっとたくさんのひとに、手にとってほしい!!!
 そんな思いから、今月は『ネコリンピック』を総力特集!
「じつはこんなに仕掛けがあります・造本裏話」「書店員さんのお声をたっぷり」の二本立てでお届けします。

絵本って面白いにゃ〜! 『ネコリンピック』大解剖編

2015.03.02更新

憧れのcozfishさん

 よーいどんで走らなくて いいんだってにゃー。
 好きなところからで いいんだってにゃー。

 自由奔放なネコたちにほわ〜んとなりつつも、あわせてぜひチェックしていただきたいのが、その造本の面白さ!
 今回は本のデザインを、cozfish(コズフィッシュ)さんにお願いしております。

 祖父江慎さん率いるcozfishは、『伝染るんです。』『未来ちゃん』『かないくん』など斬新なデザインで注目を集めるデザイン事務所。本の装丁だけではなく、「スヌーピー展」「岡崎京子 戦場のガールズライフ」などの展示やグッズデザインなども数多く手がけられています。

 「これどうやって作られてるんだろう」という本や、「なんだかすごい!」というパワーを持つ本を書店で目にして、ブックデザイナーは...と調べると、「やっぱりcozfishさん!」ということも多々あります。そんな憧れのcozfishさんにブックデザインをお願いするのは、ミシマ社の本ではこの『ネコリンピック』がはじめて。大緊張しながら依頼をさせていただいたところ、たまたま直接電話に出られた祖父江さんに、ご快諾いただいたのでした。

 初めてお会いした祖父江さんからは、やわらかで軽やかで優しいお人柄のオーラとともに、印刷・造本等に関する膨大な知識が溢れ出ていました。一方のミシマ社編集チームは、まだ絵本を出すのも3冊目、オールカラーの印刷や特殊な製本には、なかなか慣れておりません。結果、打合せでは「うわー、そうなんですか!」「ほほー!」「『サイド』ってなんだろう、後で調べておこう(ホシノ、心の声。のちに、『彩度』のことだと判明)」などなど、さながら勉強会のようになっていました。

 今日はそんな、どきどきな打ち合わせの一部をちらっとお届けします。


呪文のような色指定

 11月某日。この日は、印刷会社・出版社・デザイナーの三者が集まっての打ち合わせ。今回の印刷を担当してくださった、図書印刷のプリンティングディレクター(印刷加工に精通している印刷の専門家)さん、営業さん、編集のミシマとホシノ(+レポート係のアライ)で、cozfishを訪れました。

 妖精のごとく現れた祖父江さん。お持ちした平澤一平さんの原画をお出しすると、さっそく話は本題へ......


祖父江「あ〜、ネコがボールに乗っかっちゃってるんだ。うーん、これは、楽しそうだにゃ〜」

(さっそく「にゃー」語を使ってくださっている!)


祖父江「そしてこんどは...これはゴールの場面かな? あ、これ、この色はなかなか出すのが難しそうだね。テストしなきゃ、にゃ〜」


祖父江「あ、これもだねぇ。これも難しい色だにゃ〜。あと、白色のところはペタッとするんじゃなくって、ちゃんとムラをつけましょう〜」

(白色にムラを出す・・・?)
「あの、色を出すのが難しいっていうのは、どこらへんが......?」

祖父江「こういう、白い絵の具がはいったりモヤっとしている絵は、印刷で綺麗に出すのがむずかしいんですよ。いろんな製版法が考えられるの。だから色校正を全部出しちゃわないで、一度テストして方向性を確認しあうの」

「なるほど!」

祖父江「そうだ。本文ページの天地を短くして、カバーチリを長くしませんか? そうすれば、さいごのページで応援してるネコちゃんたちもず〜っと見えてて楽しそう。めくっも、めくっても、がんばれ〜って応援し続けてるの。いいでしょ?」

(天地を短くというのは、ずばりこういうことです!)


実際はこんな感じになりました!


祖父江「うーんと、製本機って、MAX天地何mmまで本文よりチリを伸ばせるのかわかります? 機械でやんないと、定価が高くなっちゃうからにゃ〜」

図書印刷「うーーん、ちょっとすぐわからないので、いちどテストしてみます...」


祖父江「じゃあ、原画コピーしたやつに、製版で気をつけてほしいことを書いちゃいましょう〜。えっと、オレンジとキミドリは元気に明るく。グレーは色が転ばないようにプレーンめに。黒はしっかり、スミを強く。バックのYMCは気持ち弱めに、白は、絵の具らしく......」

(な、なんだか呪文のようだ...!)

・・・こうして打ち合わせはどんどん進み、編集部一同、茫然そして感動。その後も打合せを重ねるたび、たとえば本文の書体をどうするか、文字の配置はどうしたら楽しい感じがするか、漢字とひらがなの使い分けはどうするのがよいか、等々、細部のいたるところまで練りに練られて、『ネコリンピック』は完成したのでした。

 先日の「BOOK MARKET 2015」に来てくださったお客さまも、『ネコリンピック』を手に取るとみなさん目が輝いて、かなりの確率でご購入くださいました。ここまで読んでくださったみなさま、ぜひぜひ実際の『ネコリンピック』を、書店の店頭でお手にとって見て、買って、「にゃーにゃー」旋風にまきこまれてくださいませ!

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