今月の特集2

『ネコリンピック』益田ミリ/作、平澤一平/絵

 特集第1回では、『ネコリンピック』の造本裏話をお届けしました。造本もこだわりぬいた『ネコリンピック』の魅力、すこしでもおわかりいただけたでしょうか...!
 
 しかしながら、絵本を出すのは3冊目、まだまだわからないことだらけなミシマ社一同。
 もっと絵本に近づきたい! そう思い、子どもの本専門「メリーゴーランド京都店」店長・鈴木潤さんの元を訪ねました。
 いい絵本って、どんな絵本だろう?
 絵本とふつうの本は、売り方も違ったりするんだろうか?
 などなど絵本にまつわるアツい話を、たくさん伺ってきました。

(文・写真:新居未希)

絵本って面白いにゃ〜! メリーゴーランド・鈴木さんインタビュー編

2015.03.03更新


心からいいと思うものは、年に3、4冊。

 本屋さんに行くたびに、「あ、こんな本出たんや」「この本も」「この作家さんももう新刊が......」と、どんどん出てくる新刊書籍の数に驚いたことがある方も少なくないのではないでしょうか。それもそのはず、なんと1年間で82,589点(2013年、「出版年鑑2014年版」より)もの数の新刊書籍が出ているのです。

 けれどそんな本のなかでも、絵本は何十年にもわたって読み継がれる、ロングセラーのものが多いイメージが。そんなに多い数の新刊書は出ていないのでは?

 と早速伺ってみると、「いや、絵本も相当な数が出ていますよ。1年間で3000点くらいは出ていると思います」と驚愕の返答が!
「すごい数ですよね。けれどうちは配本(取次が書店に新刊書籍を自動的に入れること
)を断っているので、新しい本がどんどん入ってくるわけではないです」

 毎年たくさんの絵本が出ているなかで、「この本はいい!」とおもう絵本って、なにか特徴があったりしますか? そう伺うと、鈴木さんは「うーーーん」と難しげなご様子でした。

「もちろんそんな、何千点もの数を毎年見ているわけではないんですけど、この絵本はいい、絶対に店頭からきらさずに置いておこう、と思うような絵本って、年に3、4冊くらいかなあ。
 新しい描き手さんか、ベテランの方かとかはあんまり関係がなくて、10年20年読み継がれていくものかどうかというのを、うちの店では大事にしています。心からいいと思わないと推せないし、棚にさしているだけじゃ動かない本もたくさんあるので」


にぼしのような絵本が大事

 あの、絵本に必要なものって、いったい何だと鈴木さんは思われますか?

「絵本は子どもの本ですが、字が読めない子どもたちに本を読むのは大人です。
 別に興味もないけど、子どもが読んで! って言うし読んどこか、という感じの大人が、読んであげているうちにのめり込んだりする。子どもも大人も面白いものが、絵本だと思うんですよね」

「何か飛び出してきたり、ボタンを押したら音が鳴ったり、子どもを一瞬喜ばせることは簡単。けれどそういうのはスナック菓子みたいなもので、瞬発力はあるけれど持続力はないですよね。最初はおいしいから嬉しいけど、毎日ずっと食べ続けているとだんだん「もうええわ」となってくると思う。
 そうじゃなくて、にぼしのようなもの、比べたらそのときはスナック菓子のほうが人気があるかもしれないけど、ずっと自分が大きくなるために食べ続けたいものかどうか、というのも絵本に当てはまると思います。
 本って、100年たっても読めるんですよね。大人になっても捨てられなかったり、自分が子どものころに読んでいた本を、子どもが生まれてまた本棚から出してきたりできる。その本がたとえ手元からなくなったとしても、出版社が出し続けてさえいたら、また出会える」

「子どもを抱っこしたお母さんが、「『ぐりとぐら』って、まだありますか?」とお店にいらっしゃったことがあります。
「ありますよ」と出したら「ああ! カステラ、まだ食べてる!」っておっしゃって(笑)。その時点でなんというか、存在しつづけた意味があるなあと思いました。それって目には見えないしお金では買えない、かけがえのないものですよね」


本は大人の道具じゃない

 でもそれこそお店には、本当にいろんな方がいらっしゃいますよね。絵本はとくに、「優しい子になる絵本はどれですか」とか、そういう質問だったり問い合わせが多いのではないでしょうか。

「絵本イコールかわいい、やさしい、あったかいとか、読んだらお友だちと仲良くできる、兄弟仲良くできる絵本とか、そういうのって全部妄想で。「絵本なめんなよ」って思います(笑)。
 なにか大人の期待や下心があって、本をそれの道具と思っているのであれば、そんな都合のいいものなんてない。あくまでも楽しみなんですよね。だけど、こんなにも豊かな世界はほかにないっていうことを、大人が知らないと子どもには伝えられないと思う」

「大人が本を信頼しているかどうかということは、すごく大きいと思います。
 たとえば子どもと本屋さんに行ったときに、子どもがパッと本を選んできたら「こんなにいっぱい本あるんやから、もっといろいろ見て決めなさい」って言う。それで選んだら、「こんなに字の大きいのじゃなくて、もっといっぱい字のあるのにしなさい」って言って、選んだら「こんなに漢字いっぱいやったら読めへんでしょ!」。もう、落としどころどこやねん!(笑)
 別にその大人は、本が好きでも、買いたいと思ってないんじゃないかなあ。
 「これもう何回も読んでるからいいでしょ」とか、「よく似てるの持ってるやん」とか......そんなん言ったら、お母さんよく似た服いっぱい持ってるんちゃうのって思います(笑)。でも、子どもはつっこめないから」

「あと私は、絵本は大人向けにはしないほうがいいと思います。
 たまにね、『あとがき』でものすごくアツく語ってる絵本って、ありますよね。あれを見るたびに、「なんでそれを絵本のなかでしないんやろう」って思うんです。「あの絵は、実はこういう意味をこめて描いたんです」なんてことをあとがきで綿々と語られていても、そのあとがきを読める大人はいいけど、子どもに対してはどうなん? って。
 本は一人歩きをしていくもの、覚悟があって生み出さないのなら、絵本の顔をしていても、絵本ではないと思う。大人向けというだけで、そこに甘えが出てくると思うんです」


出し続けていく覚悟を持て!

 うんうん、と激しくうなづくようなお話がたくさんです。でも子どもってほんとうに、「え、それがいいの?」とか、「そうなる!?」という、奇想天外なことをしますよね。

「子どもってやっぱりわけがわからへんから、未知の生き物くらいに思っていたほうがいいですよね(笑)。
 大人が仕掛けたものに食いついてくれるけれど、子ども相手ってほんまはこわいことだと思います。大人にすごく人気がある芸人さんも、「子どもの前ではやりたくない」って言う方がいるくらい。大人はやさしいから義理でも聞いてくれるけど、子どもはそうはいかないから。子どもはこわいんですよね。でもその子どもに「面白い」って言ってもらえたら、むちゃくちゃすごいことやと思うんです。
 絵本の世界ってやっぱりそれを喜びと思わなかったら、やっていておもしろくないと思います」

 なるほど。最後に、これからも絵本を出していくために、私たちのお尻を叩いていただければと思います!

「子どもの本はベストセラーではなくてロングセラーだと言われていて、何十年もずっと読まれ続けている本が多いです。逆に、息が長く出していける出版社じゃないと、と思っています。
 絵本を売るのには、けっこう時間がかかるんですね。大人の本みたいに話題になって、いろんな書店で平積み(本の表紙が見えるように置かれること)をされて売れるものではない。そう考えると絵本は、儲からないと思います。けど、それでも出したいか、ですよね。そういう覚悟がないと、絵本を出してほしくないです。むずかしいけれど、それでも出し続けていく覚悟が、出版社には必要ですよね」

 うお〜〜、これからも出し続けるために、がんばります!

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*2015年で8周年をむかえる、メリーゴーランド京都店。この8年間で鈴木さんが出会った「この絵本はいい!」という絵本たちを、後日番外編でお届けします。お楽しみに!

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