今月の特集2

左)『佐藤純子のひとり飯な日々』佐藤ジュンコ(ミシマ社)/右)『ぼのぼの』いがらしみきお(バンブーコミックス)

 

 ときは7月3日(金)。場所は仙台、SENDAI KOFFEE。その夜、夢のようなご対談、名づけて<Friday Night Fever>が開催されました。
 いがらしみきおさんの大人気ロングセラーコミック『ぼのぼの』の第40刊発売と、ミシマ社の新シリーズ<コーヒーと一冊>から佐藤ジュンコさんの『佐藤純子のひとり飯な日々』の発刊とを記念して行われたこのイベントには、定員の50名を超えるみなさまからお申し込みいただき、立ち見も出るほど。
 お二人の妄想と現実入り交じる、ほのぼのトークの模様の一部を、みなさまにお届けしたいと思います。どうぞお楽しみください!

(構成:星野友里、構成補助:大沼真理奈、写真:池畑索季)

いがらしみきおさん×佐藤ジュンコさん <Friday Night Fever(3)>

2015.08.19更新

―― 続きまして、ジュンコさんの「ひとり飯」にちなんで、ここ仙台の、「お二人の好きなお店、好きなご飯」をご紹介いただきたいと思います。じつは今ちょうど、『佐藤ジュンコのひとり飯な日々』にも出てくる、私も編集しながらずーっと、よだれが垂れそうだった「ホルン」さんのカレーを、食べてきまして...。

いがらしえぇ、もうこの人たち、カレーとか食って(笑)

ジュンコすいません、カレー食べてきちゃいました。

いがらし僕はただのアイスコーヒーだったんですけど、「お前、カレー食うのか!」と思って。

ジュンコいま、すごい満腹(笑)。喫茶ホルン、行かれたことがある方も多いかと思うんですけど、ホントいいところですよねー。カレーはおいしいし、コーヒーもおいしいし、居心地がよいし。いがらしさんが「えっ、カレー食べんの?!」とおっしゃる目の前で、もりもり食べて、しかもデザートまでいただいてしまい...。

いがらしなんかあの、インドのかわからないけど、にんじんを使ったスイーツですよね。

ジュンコにんじんを刻んで甘く煮詰めたような。

いがらしインド、にんじん、スイーツって...これまあ一応「食べます食べます」というわけで私ももらったんですけど。ところが、これがおいしい。なんというか、食感がずんだっぽい(笑)。にんじんのずんだみたいな。「にんじんのずんだですね」って言ったら誰も反対しなかったよね(笑)

ジュンコ私と星野さんも食べて、「ほんとだ!ずんだだ!」って。いがらしさんもぜひ、次回はカレー、いっしょにゆっくり食べましょう〜。


もうこれは蕎麦ではない

いがらし私のほうは、あのー、あんまり紹介できるようなお店とか、ハッキリいってないんですよ。たいがい昼飯とかおんなじ店ばっかり行きます。曜日ごとにもう決まってます。火曜日はどこに行くとか、月曜日はどこに行くとか...。

ジュンコ曜日制なんですね。日替わり定食みたい。

いがらし月曜日は、蕎麦食いに行くんだけど、そこは、何がうまいのかみんなに聞かれるんだけど、そういう蕎麦ね。

ジュンコえっ、じゃあ、あんまりおいしくないお蕎麦...?

いがらしおいしくないというより、もうこれは蕎麦ではないっていう...(笑)。もし東京の人が来てそこに連れていったら、俺の文化度が疑われるっていうね(笑)。

ジュンコでもそう言われると、そのお蕎麦、食べてみたくなりますけどねぇ。

いがらしでしょ?! そうなんだよねー。今の時代うまいものおいしいものいっぱいあると思うんですよね。だけど、まずいものってなかなかないでしょ(笑)。だけどまずいからいいのかっていうと、そうじゃないでしょ。まずいもの食いに1週間に1回、もう10年くらい通ってるんです(笑)

ジュンコそんなに通ってるんですね。まずいと知りつつ...。

いがらし要するに「じゃあ好きなんでしょ?」って言われるんだけど、好きなんでしょうね。アシスタント2人いるんですけど、その2人にその蕎麦屋に行かせたら、もうディスるわディスるわ...もうとんでもないことに。だから、アシスタントには「まだあそこ行ってるんですか」っていわれます。名前出しませんけどね(笑)

ジュンコ気になる~(笑)。お蕎麦もですけど、もう、そのお店に対する愛着のような?

いがらし俺のことね、たぶん知ってると思うんですよ。いつも同じものしか食わないし、伝票出さないんだけど、一度間違って返ってきたときあって。それをちらっとみたら、名前が席番じゃなくて、「マンガさん」ってなってるのね(笑)。じゃあ、おれ漫画家だっていうの知ってるんだなーって思って。

 その後、いつだったかなぁ、そこのオヤジが、でっかいカメラ持って、俺の写真撮ってるんだよね。どうみても写真撮ってるだろっていう感じで。「おっ?」って思って見たら、なんかオヤジが・・・(にこ~っとする)こんなんことやって。要するにあのなんか、なんていうのか、そういう所です(笑)

ジュンコいいですねぇ(笑)


しまっちゃうおじさん

いがらしあと別の蕎麦屋あるんですけど、そっちはおいしいとこです。「麺房 天正」といって、七北田の方にある。そっちも6~7年通ってるかなぁ。まぁ1週間に1回必ず行ってます。で、最近なんかテレビに出たりしたときにバレたみたいで、サインくれって言われて。その前に「エッ、なんで知ってるんですか?」って言ってレジ見たら、『ぼのぼの』のグッズぶら下がってるのね。「あっ、これ買ったんですか?」って言ったら「そうです」って言って。

 おかみさんのお嬢さんが『ぼのぼの』のファンだっていうんで、そうですかって言って、サイン持って行ったら、レジのとこにぶら下がってる『ぼのぼの』のグッズがだんだん増えてるのね(笑)。ガチャガチャのやつなんですけども、ボーズくんとか、ものすごいレアなキャラクターまであって。「要するに誰が好きなんですか?」って聞いたら、「しまっちゃうおじさん」だって言うのね。しまっちゃうおじさんだけまだ取れてないっていうんですよ。「じゃあ今度持ってきます」って。で、持っていたら、ものすごい感謝された。あ、そこは『ぼのぼの』のグッズがあるだけじゃなくて、お蕎麦おいしいです。

ジュンコしまっちゃうおじさんの話が40巻にも、帯(*)にもありますよね。しまっちゃうおじさん、みなさん、『ぼのぼの』読んだ方はわかると思うんですけど、ぼのぼのくんの、想像上の...。

*40巻の帯のいがらしさんのコメント:「しまっちゃうおじさんを好きな人って多いんですね。びっくりしました。なんで好きなんですか?」漫画家 いがらしみきお

いがらし想像上の・・・まぁ妄想ですね。

ジュンコ悪いことすると、しまっちゃうおじさんにしまわれちゃうんですよね。

いがらしそうそうそう、しまわれちゃう。なぜか人気あるんですよね。で、なんで人気があるのか、自分でもよくわからない。しまっちゃうおじさんというのは、ぶっちゃけていうと、罪の意識なんですね。悪いことしたんじゃないかとか、あとはヤバイことしたんじゃないかとか、そういうふうに思って自分で内緒にしたんだけど、人にばれるとなんかいやだなぁという・・・。そういうことをしまっちゃうおじさんが「それではいけないよ」というわけで、しまいに来る。

 自分が抱えた罪の意識みたいなものを、ずーっと内緒のままで生きていくって、けっこうつらいじゃないですか。むしろ、罰を受けたほうがスッキリするでしょ。で、そういう役割をしてるんですね、まぁ理屈で言えばですけど。だから人気あるのかなぁ。みんな人に言えないというか、罰を受けないままずっと抱え込んでる嫌なこと、思い出したくないこと、そんなことを思ってるのかなぁっていう感じがありますけどね。

ジュンコ『ぼのぼの』って、昔は、「あぁ、かわいらしいキャラクターたちだなぁ」って思ってたんですけど...けっこう深いんですよね...。子ども向けの本、かと思いきや、大人の私がいま読んでもドキっとするようなことがいっぱい書いてあって。

いがらしうん、まぁ、子ども向けって一口には言えないですよね。だからむしろ、子ども向けに書いてないという、まぁそういう気持ちはありますよね。まぁ、これからも子ども向けに描くものと、大人向けに描くものと、枝分かれしていくパターンが出てくると思います。描き分けちゃう。それはそれでおもしろいなと思うので、これはちょっと子ども向けの『ぼのぼの』っていう、アニメで育った人向けの『ぼのぼの』のマンガ、そいうものも出すつもりです。そんなとこです。

―― ではみなさん、お蕎麦屋さんに行かれてレジに『ぼのぼの』グッズがついてたら「ココだな」「おいしいほうだな」って思っていただいて(笑)

ジュンコそうじゃないほうのお蕎麦屋さんも探しつつ(笑)


   

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いがらしみきお
1955年宮城県生まれ。5歳の時、神の啓示により漫画家になろうと決意、24歳でデビュー。『ネ暗トピア』などで圧倒的支持を得る。『ぼのぼの』は大ヒットとなり、映画化、TVアニメ化される。ほのぼのとした絵柄に、不条理のギャグ、そこに生と死についてさえ問いかけるような鋭い洞察がにじみ出る、独特の作風を持つ。ホラー系の絵柄の作品も手がける多才・天才ぶり。神の啓示はホンモノであった。

佐藤ジュンコ(さとう・じゅんこ)
1978年福島生まれ。福島育ち、仙台暮らし。ひとり飯18年目。イラストレーター。
2014年4月に書店員を卒業。フリーペーパー「月刊佐藤純子」不定期発行、友人知人に押し配り。2012年『仙台文庫別冊佐藤純子』発売。残念ながら現在、出版社品切。宮城県内の見所を紹介する「マッチ箱マガジン」シリーズ(佐々木印刷所)では、松島編・白石編・仙台時間21~24時編を担当。

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