今月の特集2

 「邦楽」と聞いて、何を思い浮かべますか?
 J-POP、いま人気のあのバンド、アイドル......いろいろとありますが、今回取り上げるのは「日本の伝統音楽=邦楽」。小鼓や箏(こと)、締太鼓など、日本には古くから何百年にもわたり受け継がれている音楽がたくさんあります。

 実はミシマ社、この「邦楽」に纏わるフリーペーパーを、京都市さんと一緒に制作させてもらいました。その名も「京都 和の文化体験の日『邦楽入門の入門』」。京都市さんが去年からはじめた、「京都 和の文化体験の日」というイベントの一環です。

右が冊子、左がチラシ。デザインはいわながさとこさん、イラストは小幡彩貴さん。



 「何からはじめたらいいのかわからない」「知りたい気持ちはあるけれど、ハードルが高い」と感じている人たちに、「入門」の扉を叩いてもらうための一歩になれば...と思い、京都に拠点を置く出版社として、これはがんばらねばー!と気合いをこめました。

 冊子の中身も、(我ながら)超豪華。京都市立芸術大学の竹内有一先生には、ずばり「邦楽ってホントに面白いの?」とぶっちゃけ質問。人間国宝・曽和博朗さんを祖父に持つ小鼓奏者、曽和鼓堂さんには「伝統を引き継ぐということ」を伺いました。
 さらには、いとうせいこうさん、細川貂々さん、ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文さんの書き下ろしも!

 とはいえ、ミシマ社一同、とくに邦楽に詳しい者がいるわけではありません。右も左もわからないまま走り出した「邦楽入門の入門」への道。そもそも、なんでこの冊子を作ることになったのか? 共に茨の道を駆け抜けた、京都市役所文化市民局 文化芸術企画課の原さん・藤川さんのお二人に、お話を伺いました!

(文:新居未希)

邦楽入門の入門 web編(1)京都市役所さんに聞く!

2015.11.19更新


「京都 和の文化体験の日」って、なに?

ーー 「京都 和の文化体験の日」というイベント自体は、去年からされているんですよね。これは、どういった流れで開催されることになったんでしょうか。

東京オリンピック・パラリンピックの開催が、一昨年の9月に決まりましたよね。オリンピック・パラリンピックって、文化の祭典でもあるんですよ。オリンピック憲章に、「スポーツと文化の融合」と定義されているんです。
 2012年ロンドンオリンピックのときに、これまでにないくらい、その「文化」という面がアピールされました。イギリスのエレクトロニック・ミュージックユニット「Underworld」が音楽監督を務め、映画監督のダニー・ボイルが芸術監督を務めていたことが記憶に新しいですね。

ーー うわー、そうそう! びっくりしましたもん、あの時。ダニー・ボイルとアンダーワールド。開会式、すごいかっこよかったですよね。

そうなんです。世界的にも「すごい」という受け止められ方をしていたので、日本・東京で開催するときにも、文化の面を盛り上げていきましょうという話が、もともと誘致の段階から、話題になっていました。
 そうして開催が決まったので、では京都市としてはいち早く「文化プログラムというのを作ろう!」と、市長が大号令をかけました。オリンピックとなると、海外からもお客さまがたくさん来ます。ですがもう少し、自分たちがこの国の文化を見つめ直すところから始めないと、そもそも何をもって外国からのお客さまをお迎えするのか、きちんとわからないな、という話になったんですね。とくに若い年代の人たちに、もっと日本の文化に親しんでもえるようなものを考えよう! ということで、この「京都・和の文化体験の日」が生まれました。

ーー でもたしかに、わたしもこの冊子に関わるまで、本当に知らなかったことがたくさんありました。とくに京都は伝統芸能との距離もなんとなく近いように感じるけれど、やっぱりハードルは少し高い気がして。

藤川そうですよね。

河原町御池にドーンとそびえる京都市役所庁舎。しかし文化芸術企画課は、この庁舎のなかではなくて、道路を挟んで向かい側の、ビルの中にあるのです。意外。



第2回目が、スタートライン!

ーー 去年が第1回目だったわけですが、第2回目の今年とは、どういう違いがあるんでしょうか?

もう、まったく違いますね。去年は第1回目で本当に手探りな状態だったので、何をやったらいいのか、いろんなところに相談しながらだったんです。はじめ、市長が号令をかけたときは、かなりたくさんの人を相手にお茶を飲んでもらったり、大茶会のようなイメージを持たれていたようでした。けれど調べてみると、いろんなところで大茶会のようなことをやっているんですよね。それも、半端ではない規模で開催されていて、この路線ではあかんやろう、と(笑)。

第1回目はこちら。歌舞伎俳優・片岡愛之助さんがゲスト!

藤川それに、お茶だけではなくて、京都には歌舞伎もあれば能楽もあり、いろんな伝統芸能があるので、そういうものを広くまとめることで、まずは1回目をやってみようか、とスタートしました。去年は、片岡愛之助さんが来てくださったんですよ。

ーーおお! では、「毎年焦点をあてるテーマを変えていこう!」となったのは、今年から...?

そうですね。どうしても予算も限られているので、総当たり的に手広くやっても、手薄になってしまうところが出てきてしまう。打ち上げ花火のようなことはしたくなかったので、きちんと一つひとつ順番に、体系的に取り上げながら、丁寧にやっていこう、ということになりました。


けれどもなんで「邦楽」に?

ーー 一番聞きたかったのが、なんでその1回目のテーマをあえて「邦楽」にしたのか、ということなんです! 言わば、歌舞伎や能楽のほうが知名度はあるし、ある程度参加者の人数も見込めますよね。

今おっしゃった通りで、歌舞伎や能楽、落語は、ある程度お客さんが見込めます。ということは、文化芸術として比較的、一般の人にも浸透している領域なのかな、という思いがあったんですね。邦楽にもすごく豊かなものがあるのに、どうしても少し、お客さんが見込づらい状態というのができてしまっていて。とくに演者さんの高齢化がだんだん進んでいて、若い方が少ない状態なんです。一番活性化させないといけないんじゃないかな、という気持ちがありました。

ーー なるほど。

世の中でうまくまわっているものは、行政でやる必要がないので。まわり方が鈍いんだけれども、がんばっている人の背中を支えるのが行政の仕事だな、と僕は思っています。

「顔出しは恥ずかしいのでNGで...」と言われた図。左が藤川さん、右が原さん。お二人ともお若くて、超柔軟。デキる方々です。




知ると、知るだけ、面白い!

ーー あのー...原さん、ものっすごく邦楽にお詳しいですよね。私、はじめこのお仕事を一緒にさせていただくことになったとき、本当にトンチンカンだったので、「師匠......!」って思ってました。

いえいえそんなことないです!(笑) 僕も勉強して、好きになって、すこしずつ詳しくなって、という感じです。

藤川わたしもまったく詳しくないので、ゼロからのスタートでした。でもすごく、学ぶことが多かったですね。

ーー 「邦楽」って言われても、正直「......お琴?」というイメージしかなくて。でも今回一緒に冊子を作らせていただいて、邦楽って知れば知るほどいろんなものがあって、奥深くて、面白いんやなあということをすごく感じました。

藤川うんうん。わたしもすごく、印象が変わりました。今回のこのイベントと冊子で入り口を知れたことによって、遠い存在ではなくなりました。
 たとえば、箏(こと)ってすごく大きい楽器だということを、生で見て初めて知って。弦の多さにも驚いたし、「知ってた楽器と違う!」と感じました。

ーー たしかに、箏(こと)は全身運動ですもんね。おしとやかに弾いているイメージがありましたけど、全然そんなことないですよね。あれはすごく体力を使う楽器やなと思いました。

藤川今までは、たとえば着物を着たり、伝統文化に親しんでいる人に、「かっこいいなあ」という遠い存在への憧れみたいな気持ちを持っていました。けれどそこに、「自分は入れない」とは思わずに、意識せずに気軽に触れてみると、意外と世界は近くにあるんだな、ということを感じました。実際に演奏を聴いたり楽器を触ってみると、すごくワクワクするし楽しい。遠いものだと思わずに、ぜひこれをきっかけに、たくさんの若い方に「初めての伝統文化」を楽しんでほしいです!


(次回は、冊子にも登場くださっている京都市立芸大の竹内先生がご登場。
冊子では伝えきれなかった、インタビューの特別編を掲載します!)

  

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「京都 和の文化体験の日」


ショーイング・プログラム「はじめまして 邦楽」
日本の伝統文化「邦楽」に気軽に触れられる公演です。冊子にも登場していただいている、京都市立芸術大学・竹内先生の解説付きなので、初めてでもわかりやすいこと間違いなし!
三味線、太鼓、笛などの演奏は、生で一度聴いてみるべき。おすすめです!

日時:平成27年12月12日(土)14:00〜
場所:大江能楽堂(京都市中京区押小路通柳馬場東入橘町646)
解説:竹内有一(京都市立芸術大学 日本伝統音楽研究センター 准教授)
演奏:重森 三果、藤舎 華生、中村 寿慶、常磐津 都代太夫、常磐津 都史、常磐津 若音太夫(竹内 有一)、細野 桜子(東京藝術大学)、堀越 日向子(同志社大学)、堀越 花音(京都市立西京高校)
参加費:無料
定員:250名


ミーティング・プログラム「聴いてみよう、触ってみよう にっぽんの音」
邦楽には欠かせない楽器、「小鼓」「三味線」に触れてみよう!
演者・職人さんそれぞれのお話もじっくり伺えます。

<小鼓編>
日時:平成27年12月12日(土)18:00〜
場所:ちおん舎(京都市中京区衣棚通三条上る突抜町126)
講師:曽和鼓堂(能楽囃子方 幸流 小鼓)
参加費:1,000円(お茶付き)
定員:20名

<三味線編>
日時:平成27年12月13日(日)14:00〜
場所:宮川町歌舞練場 広間(京都市東山区宮川筋4丁目306)
講師:野中智史(三味線職人)
参加費:無料
定員:20名


お申し込み 〜11月23日(月・祝)
京都いつでもコール 電話:075-661-3755/FAX:075-661-5855
http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000012821.html
1. 催し名,2. 氏名,3. 年齢,4. 郵便番号・住所,5. 電話番号,6. 同伴者の人数(ショーイング・プログラムは2名まで,ミーティング・プログラムは1名まで)をお伝えください。

Twitter:@Kyoto_wanobunka / Facebook:facebook.com/KyotoWanobunka



● チラシや冊子は、京都市内の区役所・図書館・文化施設や飲食店・書店・ギャラリーなど各所で好評配布中! 欲しいけど見つからないという方は、京都市文化芸術企画課(TEL:075-366-0033 MAIL:bunka@city.kyoto.lg.jp)へお問合せください。

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