今月の特集2

 2015年も残すところあと10日。ミシマガジンでも「今年の一冊座談会」を掲載する時期がやってきました。ミシマ社メンバーが東京と京都をSkypeでつないで、今年読んで一番感動した本について語り合います。
 みなさんは、今年一年、どんな本に出会いましたか? 一年の終わりに「今年の一冊はなんだろう...」なんて考えながら、読んでいただけたら嬉しいです。それでは、座談会スタートです!
 

2015年 今年の一冊! 座談会

2015.12.21更新


『大村智 2億人を病魔から守った化学者』馬場錬成(中央公論新社)

『大村智 2億人を病魔から守った化学者』馬場錬成(中央公論新社)

 私の今年の一冊は、中央公論新社からでている『2億人を病魔から守った科学者 大村智』です。これは、大村先生がノーベル賞をとられる前に出版されている本で、先生の小さいときからこの本が書かれた2012年頃までのことを取り上げた本なんです。実は、大村先生は最初から研究者を目指されていたわけではないんですね。農家の長男として生まれて、自分もまわりも家の後継ぎになると思っていたので、高校生のときもあまり勉強しないで、スキーを熱心にされてたんです。でも、やると決めたことに対する熱意が半端なくて、スキーでも全国大会行っちゃうとか、お父さんに「大学に行ってみたらどうか」と薦められて、受験することにしたときは、勉強しすぎて、親に精神病院に連れて行かれたとか。社会人になってから通っていたドイツ語塾では、「きみはよく勉強しているから、この塾の経営をしてみないか」と言われたり。やること全てが突き抜けてるんです。

 本自体はまったく難しくなくて、高校生でも読めると思います。というか、読みたかったです...。仕事をしている人には、ビジネス書としても読めるし、実は大学の経営もされていたので、経営という視点から読んでもすごく面白いと思います。心が洗われるような素敵な言葉もたくさんあるので必読です。

『帰還兵はなぜ自殺するのか』デイヴィッド・フィンケル 著/古屋美登里 訳)

『帰還兵はなぜ自殺するのか』デイヴィッド・フィンケル 著/古屋美登里 訳

 いまこそ読まなきゃいけないな、と思った一冊です。イラク戦争から帰還した兵士の多くが自殺したりだとか、精神を患って生活に支障をきたしてるという話をみなさん聞いたことがあると思んですが、この本ではその帰還兵の生活や葛藤を丹念に追っています。年表の上では戦争は終わったことになっていても、当事者にとっての戦争は死ぬまで終わらないんだなと強く感じました。

 アメリカ兵の平均年齢は、第二次世界大戦ではたしか26歳だったと思うのですが、まさにいま自分が26歳なんです。だから、もしいま戦争が起きたら、自分の世代が中心になって戦場に行くわけです。いまの日本の政府は「積極的平和」を掲げて法律を変えつつある中、ある意味ではどんどん戦場がこちらに近づいて来ていて、このまま行くと、自分や身近な人が戦闘に巻き込まれるかもしれない。そして命を落とさずに帰ってきたとしても、無事に日常生活を送れるほどに健康な心身であるとは限らない。だって目の前で人間が血まみれになったり、バラバラになったりして、正常でいられるわけがないですから。あまりの内容に読むのが辛くて、途中でくじけそうになる一冊なんですけど、ぜひ読んでほしい一冊です。



『たったこれだけの家族』河野裕子(中央公論新社)

『たったこれだけの家族』河野裕子(中央公論新社)

 私は、今は亡き歌人・河野裕子さんの『たったこれだけの家族』です。本は2011年の刊行ですが、今年に入ってから読みました。中学の国語の教科書に、河野裕子さんの「逆立ちしておまへが俺を眺めてた たつた一度きりのあの夏のこと」という歌が載っていたのが、河野さんとのはじめの出会いです。ほかにもたくさん素晴らしい歌があるので、ご存知の方も多いと思います。

 この本は、河野さんのご家族がアメリカに住んでいたころのことを中心に書いているエッセイ集です。旦那さんは、歌人であり細胞生物学者である永田和宏さん。私は河野さんの歌も大好きなんですけど、エッセイが猛烈によくて。お子さんが二人いらっしゃるんですが、アメリカに渡っての生活の話だったり、子どもが成長する姿だったり、毎日のことを書いているエッセイなのに、言葉の選びや書き方がずば抜けて素晴らしい。美しいです。これを読んでいるだけで心が洗われるというか、落ち着くというか......夜寝る前に読むと、むっちゃいい夢見れますよ(笑)。日々の忙しさに負けてしまいそうになるとき、こころの支えのように読んでいます。


『ねことペンギンカット集』長新太(トムズボックス)

『ねことペンギンカット集』長新太(トムズボックス)


 私は、長新太さんの『ねことペンギン カット集』を持ってきました。今年の一番初めに買った本で、その買った本屋さんであるトムズボックスが今月いっぱいで閉じちゃうので、これかなーと。それ以外とくに言うことはそんなになくて(笑)。説明すると良さが伝わらないので、とにかく見て欲しいです。


 本当に、ただ単にねことペンギンが1ページずつにいるだけなんですけど、可愛いっていうか、本当に見ていてほんわかした気持ちになるんです。最後の最後に絵本を編集した方が、この本を何故作ったのかを書いていて、それは「長新太さんのカットを愛でるだけの手のひらサイズの本を作ってみたかった」っていうそれだけの理由で作ったみたいで。某M社から「コーヒーと一冊」っていうiPhoneより軽い本が出たと思うんですけど、それより軽いです(笑)。

 

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