今月の特集2

2016年、みなさまにとってどんな年だったでしょうか?
ミシマ社は10周年を迎え、多くの方々の支えを感じた一年でした。
今年も、ミシマ社メンバーの「今年の一冊!座談会」で、それぞれ一年間に読んだ本を振り返りました。
東京と京都をSkypeでつないでおこなわれた模様をお届けします!

2016年 今年の一冊! 座談会(2)

2016.12.27更新


『夢を描き続ける力』ディック・ブルーナ(KADOKAWA)

 私、毎回この座談会で「とにかく見て!」しか言ってないんですけど、今年も......とにかく見てほしい!(笑) ミッフィーちゃんの生みの親であるディック・ブルーナさんの『夢を描き続ける力』です。
 ミッフィーちゃんがかわいいことはみなさん知っていると思うんですけど、グッズとかではなく、一枚の絵で見てほしいです!
 この本は、ブルーナさんの言葉と絵が一つずつ見開きで掲載されています。ブルーナさんは、絵を一枚描くために何百回も下書きをしているんだそうです。今年、ある展示を見に行ったとき、ブルーナさんが絵を描いている映像が流れているのを見たんですけど、すごく丁寧に時間をかけて書いていることがわかりました。
 ミッフィーちゃんの絵本は、誰かが亡くなってしまうとか「負の部分」も出てくるんですが、生きることや死ぬことなども含めて、「子どもたちに良いものをちゃんとした形で伝えたい」という想いが感じられます。子ども向けだけど、ただかわいだけじゃないんです。とにかく、本当に、ミッフィーちゃんの絵を見てほしいです!

ホシノハセガワさんの熱い愛が伝わってきますね。

『イグアナの娘』萩尾望都(小学館)

 私は、萩尾望都さんの『イグアナの娘』です。
 今年は、「読んだことのなかった傑作漫画を読む1年にする」と年始に自分で決めまして、その中で猛烈にインパクトがあって、何度も読んだのがこの本です。
 自分の娘がどうしてもイグアナにしか見えない母親とその娘、という異色のファンタジー作品。自分にはイグアナに見えるんだけど、周りの人は普通の女の子に見えてるんです。でも、その娘自身、母親から「かわいくない」「ブサイク」なんかのひどいことを言われて育ってきたから、自分はそうなんだとしか思えない。自分の娘をまったく可愛いと思えない、そして娘も親を愛せない、両者の描かれ方がものすごかったです。
 今から20年以上前に描かれた作品ですが、ここ数年メディアなどでも話題になってる母娘問題なんて全部ここに描かれてるな、と感じました。家族ってなんなんだろう、とすごく考えるきっかけをもらった。萩尾望都さんはやっぱり本当にすごいです、素晴らしい。

イケハタ90年代にドラマ化もされてましたよね。

アライえー、そうやったんや!

『晴れたら空に骨まいて』川内有緒(ポプラ社)

『晴れたら空に骨まいて』川内有緒(ポプラ社)

 すでに社内でもさんざんこの本について語っていますが、私は川内有緒さんの『晴れたら空に骨まいて』を選びました。
 親しい家族や友人を失って見送り、世界のどこかに遺骨を撒いたり、撒こうかなと考えている、五組の方々の語りをまとめたノンフィクションです。
 「死」というインパクトの強いエピソードの語りには、その亡くなった方の輝きや、見送った方たちの鮮やかな思い出がにじんでいて、読んでいるうちに、すごく親しい人たちの話を読んでいる気持ちになってきます。
 たとえば「マカルーで眠りたい」という章では、「もし自分が死んだら、遺骨はマカルー(ヒマラヤにある8000m超の山)に撒いてほしい」と頼んでいた著名な登山家が亡くなります。遺された家族は、なんとかそれを叶えてあげたいと思うんだけれども、奥さんは山が大の苦手。それでも、マンションの階段を何十往復もして訓練をして、世界各国にいるほかの家族の予定を五年越しで調整して、マカルーを目の前にみることができる5000m超の山に登り、散骨するというエピソードがあります。
 川内さんがあとがきで、現代社会には、人が亡くなったときに「いつまでも悲しむのは健康的じゃない」という空気感があるけれど、心ゆくまで悼んであげていいんだ、と書かれていたのも印象的でした。自分自身、身近な人の死に触れると気持ちの行き場がわからず、ぽっかり穴が開いたような感覚になりますが、その穴は急いで埋めなくてもいいんだと思えました。本書で描かれている「死」は悲しいだけじゃなくて、ちょっと笑えたり明るさがあって、さわやかな気持ちになる一冊です。


『ギケイキ』町田康(河出書房新社)

 僕は文学作品を紹介します。町田康さんの『ギケイキ』!
 日本人にとって源義経はヒーローですよね。ヒーロー像の原点という義経を、この現代の21世紀に蘇らせているのがすごい。ちゃんと史実に基づいて当時の京都を描写しながら展開していくけれど、現代のスマホを使った技術描写なども混ぜながら展開していて、「古典を読む」というところとまったく違う次元になっているんです。
 単に現代語訳をしたのではなく、現代の表現と科学技術を駆使しながら、当時の義経記を表現しているという。たとえば、ネガティブキャンペーンのやり方が現代のやり方に書き換えられていたりして、実際に弁慶はこうしていじめられていたんだろうなってすごくわかる(笑)。
 これが第一巻で、まだまだ連載は続いているんですが、壮大な大河をやっていることに、町田さんの作家としての体力を感じます。
 元々の義経記をちゃんと読んだことのある人ってなかなかいないと思いますが、義経記ってどんなものか? と1ページ読みだしたら止まらないですよ。
 第二巻が待ち遠しいし、この時代に読める幸せを感じます。日本人の必読書ではないか、と声を大にして言いたい。町田康さんを読んだことがない人は、この作品から入ってもらえればいいんじゃないかと思います。


『きっといい日になりますように』寺田マユミ(かもめブックス)

 私が選んだのは、寺田マユミさんの『きっといい日になりますように』です。
7月末に神楽坂で行われたBOOK MARKETで、かもめブックスさんで買いました。この本はかもめブックスさんにしか売ってない本なんです。ちょっと高かったんですけど、BOOK MARKETでしか出会えない本だと思って買いました。
 パン屋を営んでいる男性が主人公で、パンの中には小人が住んでいます。そんなパン屋に来る人との交流を絵だけで描いているという本です。セリフも出てくるんですが、かもめブックスの柳下さんが、お話を絵だけ伝えるために文字を最小限にしていると仰っていました。BOOK MARKETに一般のお客さんとして参加していたら、きっと買っていなかったと思います。サイズも絵本のような不思議な装丁です。今年の思い出の一冊ということで選びました。

ワタナベ一人口がうるさい客が、パン屋の店主に「このパンとこのパンはまずくて最悪だった」と言ってきて、その二人が向かい合うという作品です。タブチくん、読んだら良いかもしれませんね。

タブチ(......どういう意味だろう......)


 最後に、メンバーが「読みたい!」と思った本に投票して決まる「座談会大賞」の発表です。今年の大賞は、星野の紹介した『晴れたら空に骨まいて』になりました。星野は二年連続の大賞。強い。
 ミシマ社メンバーのおすすめの本、気になったらぜひ手に取ってみてください。

 

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