今月の特集2

 2006年に創業したミシマ社は、おかげさまで昨年10月に10周年を迎えました。本日は、9月24日(日)にミシマ社自由が丘オフィスにて行われた「1年遅れのミシマ社創業10周年フェスティバル!」をミシマ社の新入りノザキがレポートします。

ミシマ社創業10周年フェスティバル!潜入レポート(3)

2017.10.04更新

フェスティバル、夜の雑談 ~平川克美さん×小田嶋隆さん×三島邦弘~

 3日間にわたってお伝えしてきたフェスティバルレポートも本日が最終回(1日目2日目は←こちら)。フェスティバルの最後の締めくくりは、平川克美さん、小田嶋隆さん、三島邦弘による濃密トークでした。ミシマ社に思っていること、現在執筆中の本のことなどざっくばらんに語っていただきました。盛りだくさんの90分をぎゅっと厳選してお伝えします。どうぞお楽しみください。


畳と和式便所は日本の恥!?

平川俺、三島さんが『計画と無計画のあいだ』(河出書房新社、2007)の中で、社員旅行で三島の駅に集合してから、さあこれから泊まるホテルを探そうって。あれに感動しちゃってさ。

三島そうでしたか。

平川俺以上に無計画でいい加減な人っていないと思ってたんだよ。そしたらここにいるわと思って。

小田嶋確かにね。以前ミシマ社の新年会に来た時に内田樹先生が、いやしかしここを借りたのは凄いよね、という話をしていて、本当に借りちゃうところが三島さんの底の知れなさだよね、と。

平川俺はすごく羨ましかったわけ。やられたなと思った。もっと汚ねえとこないかなって思ってた。

会場:(笑)

平川今日フェスティバルを見ていて、お子さんを連れていらした方が結構いて、お子さんがこの辺でバタバタやっていて。それを見ていて、ああこれ会社の理想だな、よくいい会社作ったなあと思った。

小田嶋結構この場に影響されることってありますよね。これが「オフィスです」っていう感じでスチールの机が並んでいたら、仕事ぶりがスチールの仕事みたいになっていくでしょ。

三島やっぱり畳だからだと思うんですよね。

小田嶋俺、畳大嫌いなんだけど。

三島そうでしたか。(笑)

小田嶋大嫌いというと語弊があるけど、畳の暮らしには適応できないんだよ。

平川じゃあ畳ないの?自分の家。

小田嶋ないですよ。畳と和式便所は日本の恥だ、みたいな。

会場:(笑)

三島全く正反対じゃないですかうちと。

小田嶋子供の頃は和式便所だったけど、洋式便所を経験してから和式には極力入らないという暮らしをしてて。どうして我々はこんなものを使っていたんだろうって。自分の中では、竪穴式住居、和式便所...。

三島だいぶ飛躍がありますね。

小田嶋文明開化以前の話なんです。実際俺が初めて洋式便所を見たのは、赤羽台団地っていう団地があった時に、小学校の時に友達の家に遊びに行ったんですよ。そしたらそこが洋式便所で、これどうするんだ?どうしたらいいか分からないっていうのが最初の経験でした。でも一度洋式に慣れてみると和式って何事だってなりますね。うちの息子たちだって和式じゃ出ないって言ってるし。

三島なるほど、僕京都に移り住んだんですけど、京都のデパートとかにはまだ和式が残ってますよ。

平川今もう東京にはないよね。今の若い子が見たら、なんだこれはってなるんじゃない。

小田嶋でっかいスリッパかなって思いますよね。

平川そうは思わないと思うけど、あそこに座っちゃうんじゃないかな。

会場:(笑)


托鉢のすすめ

三島『「消費」をやめる――銭湯経済のすすめ』(ミシマ社、2014)を作っていた頃、平川さんは「本を書いて借金返していくわ」ということをおっしゃっていて、なかなか凄いことを言うなとずっと思っていたんです。

平川でも借金はそういうふうにしていたら返せないんで、途中で方針を変えたんですよ。金持っているやつを探すっていう。借金するんじゃなくてその人から貰うことにした。今度の最新刊はそれがテーマです。お金っていうものは天下の回りものだから、金持ってそうなやつから貰う。

小田嶋それを嗅ぎつける能力。

平川そのためには大変な努力をしなければいけない。タダで貰うっていうのはありえないわけですよ。100万円なら100万円分の何かを与えなきゃいけないわけで。ただこれは金目のものである必要はないんです。

小田嶋なるほどね。新しい経済学ですね。

平川いや実はこれは古くて、もともとはそうだったんでしょう。全体給付のシステムっていうやつだけど、モースなんかと同じです。俺は一応、お金持ちから文無しへと物凄い勢いで落ちたから、こういうことを言う権利があるなと思ったんです。前に釈徹宗先生と対談をやったことがあるんです。その頃に、僕は借金ですごく苦しんでいて、そしたら僕の友達の画家が、僕にあることを言った。「平川、金なんて借りちゃダメだよ。貰える人間を20人30人周りにちゃんと見つけることだよ」って。画家って全く食えないんですよね。だからそういうことを言ってきた。その話を釈先生にして、俺もそういうふうに生きることにするって言ったら急に釈先生が、「平川さん、師匠と呼ばせてください」って。だからそれ以来、釈先生からの呼称は「師匠」なんです。

小田嶋托鉢の師匠ですね。

平川そう、つまり人から貰って生きるというのは托鉢なんです。仏教の世界では托鉢僧がいますけど、托鉢僧は修行だから金稼ぎをしてはいけないんです。あげる人はお金をあげて、絶対お礼を言わない。今、デヴィッド・グレーバーという人の、『負債論――貨幣と暴力の5000年』(以文社、2016)というこんな分厚い本を読んでいるんだけど、これがめっぽう面白くて。いろんな事例が書いてあるんだけど、文化人類学者がエスキモーの取材かに行って、肉を貰うんです。で、お礼を言うのね、肉を貰ってありがとうと。するとエスキモーは怒り出すわけ。要するに、お礼なんか言ってほしくないと。お礼を言った瞬間に、奴隷を作るっていうの?俺は奴隷なんか作りたくないんだっていうことで、基本的にそれは一方的な贈与なんです。互酬性というのは贈与交換で、必ず返礼があるじゃないですか。でも返礼はやっぱりしちゃいけないんです。

小田嶋返礼を求めるのは卑しいんだ、という話なんですよね。

平川貰う方が頭を下げる必要はなくて、貰ってやると。そういうことなんですよ。私に金をくれる人はいないんですが、そういう社会をこれから作っていきたいと、私は待っています。

会場:(笑)


電車運賃はタダにしたらいい

平川今、絶滅危惧職種モールというのを作りたいと思っています。銭湯と書店と出版社とパン屋。パン屋もきついらしいんです。確かに1個70円のパンを何個売ったら人件費が払えるんだっていう感じで、棚が小さいとパンを並べられない。やったって一日1万とかで精いっぱいで、2万売れたらいいほうで。

小田嶋自分の店だからやれているけど、家賃払ったらとてもじゃないけどやれない。

平川喫茶店もそうだよね。だからそういうのだけを集めて、絶滅危惧職種モール。

三島それいいですね。

平川これ結構流行るんじゃないかと。昔はこういうことを考えると自分んでやみくもに突き進んでやっていたんです。それで大損こいたんだけどさ。だから今はこういうのをやる後継者を今育てたいと思っていて、その第一候補が三島君。

三島いやいやいや(笑)。

平川積極的に損しにいくっていうね。でもそういうやつがいないと面白くないじゃない。だから銭湯なんてどう考えたって生き残れないんですよ。この間も、銭湯の絵を描いている人と言ってたんですけど、銭湯は公共空間だからタダにすればいいと思うんですね。地方に行くと共同湯っていうのがあって、自治体が少し援助している。

小田嶋20代のころTBSのADをやっていた時代に、関東ローカルで「アクションタイム」っていうラジオのADをやっていたんです。毎日ゲストが来るんですけど、そこにニスギなんとかっていう元国鉄総裁だった人が来た時に、ずっと心に温めていた鉄道ってこうあるべきじゃないかって思っていたことを言っていたのが、「みんなニコニコロハ鉄道」っていうやつで、鉄道なんて全部タダにしちゃえという考えです。

三島それすごくいいと思います。

小田嶋そうすると改札も出札も要らないでしょ。駅の設備は全部スルーでいきなり入れると。電車だけ出ていて、電車の運行だけをやればよくなると。全部タダで乗ると。そうすると何がいいかっていうと、運賃収入はゼロになるんだけど、税金で動くようにする。電車が動くことによって経済効果があるから、タダだってことなら移動しようかっていう人とか、ちょっと暇だから京都に行ってこようとかそういう人が増える。そうすると退屈したやつがちょっと京都に日帰りであんみつ食って帰ってくるとかいうことが起こるでしょ。その経済効果を考えると、いろいろ考えるとタダにしたほうがいいって。

三島賛成です。

小田嶋そこで「それだと赤字になりませんか?」ってキャスターがつっこんだときに、「黒字の消防署がありますか?」って。これは名セリフでね。要するに公共のものって赤字でいいんだと。黒字にしないといけないという強迫観念に囚われているのがいけないんだって言っていた。俺はADとして聞きながら、なるほど、辞めた役人っていうのはいいこと言うんだなって思った。

平川それはありうるんじゃない?それやってるとこあるんじゃないかな?

小田嶋消防署もお金とらないでしょ?

平川山で遭難した時に、いわゆる地域の消防署がヘリを飛ばすのと、それから救助センターからくるのがあって、救助センターからくるヘリに乗っちゃうと100万円とか請求されちゃう。で、消防署はドクターヘリだからタダ。だから救助センターからくるヘリが来たら隠れるの。間違っちゃうと大変なことになる。

小田嶋人の命に関わることって、火事だって今なら200万円で消してやるとかだったら酷い話でしょ。だからやっぱり公共的なものはタダじゃなきゃいけない。

平川しかも、銭湯なんて大田区が一番多くて30件で、品川区が次で20件ぐらいなんです。だから全部合わせたって大したことないわけ。オスプレイの羽ぐらいで買えちゃうんです。だから国営にして、みんなでやればいいと思います。老人監視の場所にもなるし。それで番台権っていうのを配る。

会場:(笑)

平川まあそんなところで。

三島平川さん、小田嶋さんありがとうございました。

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 3日間にわたるフェスティバルレポートはいかがでしたか? お越しいただいたみなさま、愉快なお話をしてくださった平川さん、小田嶋さん、そして日頃からミシマ社を支えてくださっている皆様に心より感謝申し上げます。これから先もたくさんの人の共感と愛着が集まる場ありつづけられるように、新人ノザキも日々精進いたします! 引き続きミシマ社をどうぞよろしくお願いいたします。


   

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