スポーツ紙バカ一代

第24回 斎藤佑樹に学ぶ「声に出して読みたい日本語」

2010.01.18更新

12球団で最も早い、球団トップからの「求愛」でした。ロッテの瀬戸山球団社長が14日、今秋ドラフト1位指名を早大・斎藤佑樹投手1本に絞ることを明言しました。

「斎藤あるのみ。どれだけ競合してもぶれません。この時期に確定したのは、今までにない」

ドラフトは秋です。異例の早期決定に、斎藤獲得への強い決意を感じます。ロッテの他、ヤクルトも1位指名が有力と見られている。4月に開幕する東京六大学野球春季リーグ戦、大学日本一を決める6月の全日本大学野球選手権、7月30日から日本で開催される世界大学野球選手権と、斎藤の登板時には数多くのスカウトが投球内容をチェックし、その実力を見定めることになるでしょう。今シーズンのピッチングが斎藤にとっての「就活」とも言えそうです。

プロのスカウトだけでなく、我々スポーツマスコミも斎藤の一挙手一投足に熱視線を送ることになる。仕事の傍ら、ふと我に返り、考えます。注目され続けることで、過度なプレッシャーはかからないのだろうか、と。報道陣のフィーバーが、アスリートとしての斎藤佑樹に、余計な負担を強いることになりはしないか、と。

大学1年生だった斎藤に単独インタビューした時のことを思い出します。あれは確か6月。まだ19歳になったばかりの「佑ちゃん」は高校時代からずっと、登板した公式戦25試合連続負けなしという記録を継続していました。驚くべき勝ち運を、わたしたち記者は「不敗神話」と書き立てていた。

そんな中、マウンドに向かう時、重圧はないのか? 返ってきた答えが、今でも耳にこびりついて離れません。

「自分が成長するのに、いい負荷がかかる、みたいな感じです。苦しみの中で、もっと勝ち続けたい」

たまげました。世間からのプレッシャーをまさか「いい負荷」と捉えているとは。夏の甲子園で優勝投手に輝く若者は、こういう思考をしているのか。ただただ、感服しました。

せっかくこんないい話を聞いたからには、学ばなくてはもったいない。ここだけの話ですが、わたしはそれ以来、身の丈を超えた仕事に取り組む際には「自分が成長するための負荷だ」と自らに言い聞かせています。十代だった斎藤が三十路のオッサンに教えてくれた「声に出して読みたい日本語」です。

進路をめぐる報道はこの1年、加熱の一途をたどることでしょう。それすらも自らの肥やしにしてしまうようなしたたかさが、この若者にはあるような気がします。今季はどんな言葉で、ファンを魅了してくれるのでしょうか。今から楽しみでなりません。


【参考】佑に9球団21人!始動即ブルペンで30球!
http://hochi.yomiuri.co.jp/feature/baseball/saito/news/20100105-OHT1T00205.htm

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加藤弘士(かとう・ひろし)

1974年4月、茨城県水戸市生まれ。水戸一高ではプロレス研究会に所属。慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、97年に報知新聞社入社。広告局、出版局を経て、03年からアマ野球担当。05年にはアマ野球担当キャップ。06年は巨人番(投手担当)。07年からアマ野球キャップに復帰し、09年には楽天・野村番。10年はまたもやアマ野球キャップを務め、斎藤佑樹の大学ラストイヤーに密着。11年は日本ハムと西武の遊軍記者。好きな言葉は「そのうち何とかなるだろう」。カラオケの十八番は「夜空」(五木ひろし)。173センチ、61キロ。右投右打。

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