スポーツ紙バカ一代

第34回 アンジャッシュ・渡部建さんのこと

2010.08.02更新

仕事にしてしまえば、会いたい人には誰にでも、会いに行ける。スポーツ紙記者稼業の醍醐味です。365日、選手や監督、コーチら球界関係者を取材し、原稿を書いている野球担当の小生ですが、担当外のひとにも、会って話がしたくなりました。

そんなわけで、7月上旬には連載を企画しました。各界著名人が夏の高校野球地方大会の魅力を語る――というフリートーク。題して、「熱いぜ夏」です。

ラインナップは以下の通りになりました。

第1回 岩崎夏海さん(「もしドラ」作者。100万部突破おめでとうございます)
第2回 ねづっちさん(同世代トーク、楽しかったです。いい紙面が「整いました!」)
第3回 三島衛里子さん(スピリッツ連載「高校球児ザワさん」作者。お会いしたかった!)
第4回 AKB48・倉持明日香さん(素敵なお嬢さんでした。アイドルの取材は人生初!)
第5回 アンジャッシュ・渡部建さん(言わずと知れた芸能界屈指の高校野球通)

5人が5人、筋金入りの野球ファン。放たれる言葉には随所に神が降臨し、インタビューはとても楽しいひとときでした。「毎日がこんな取材ばかりだったらいいのに」と思ったくらいです。現実はそうはいかないけどね。張り込みとかクレーム処理とか、キツイ仕事ばかりだし。

さて、その中でもアンジャッシュ・渡部さんの高校野球観戦に懸ける熱意は、常軌を逸しています。平日はJ-WAVE「PLATOn」のナビゲーターを務めるなど、売れっ子芸人であることは周知の事実。それなのに、ああ、それなのに。神宮球場はもちろん、沖縄から神奈川・平塚球場、横浜スタジアムに至るまで、この7月、あらゆる地方球場のネット裏で、本紙記者が激闘を見つめる渡部さんの姿を目撃しているのです。

「高校野球大好き!」ってひとは、たまにいます。でも、ほとんどが甲子園大会をテレビで楽しむ――というもの。渡部さんの「観戦術」は、ヒト味もフタ味も、違います。

「地方大会は、球場の風情がいいんですよね。好きな球場は八王子市民かな。予備校時代、行き詰まった時に、外野席の芝生で寝っ転がりながら高校野球を見ていました。選手と客席が近くて、『汗感』『砂感』が、より感じられる。甲子園って、やっぱりゴール。出られたら『勝ち組』なんです。そこを目指す過程が一番刹那的で、面白いですね」

「地方大会の開幕前、すでに選手はベンチ入りを懸けて、チーム内で戦っているんです。だから興味が、どんどん前倒ししていく。夏のシード権をとるためには、春に勝たなきゃならない。センバツに出るには、秋の大会がある。今は有望な中学3年生の進路が気になっています」

母校・日野高校のグラウンドで行われる紅白戦に熱視線を注ぎながら、夏のベンチ入りメンバー20人がどう選ばれるのか、思いを馳せる。練習試合で魅力ある選手を見つけると、父母会に「〇〇中出身の誰々」なのかを聞きに行く、とも話してくれました。我々スポーツ記者が見習わなくてはならないほどのフットワーク。最近はプロ野球のスカウトの間でも「渡部君、この前も見に来ていたよ」と、その情熱は評判になっています。

最後に、渡部さんに訊いてみました。これからの高校野球に望まれることとか、ありますか。

「高校野球が『教育の一環』というのは、わかります。マナー、モラルはもちろん大切です。でも僕はやっぱり『闘い』だと思う。命懸けでやってきている選手同士の『闘い』です。そこをあんまり規制しなくても、いいかなと思います。ヤジひとつとっても、作戦ですからね。彼らは自らの身に何があろうと、勝ちたくてやっている。その気持ちは、尊重してあげたいんです」

20歳も離れた若者に対する、敬意にあふれた眼差し。胸がグッとなりました。

渡部さん、あなたに見てもらえる高校球児は、幸せです。この夏も聖地のネット裏で、お会いしましょう。甲子園って、最高の夏フェスですよね。だって、エンディングが、予想できない。僕らの想像を遙かに超えた「奇跡」が、そこには満ちあふれているから――。

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

加藤弘士(かとう・ひろし)

1974年4月、茨城県水戸市生まれ。水戸一高ではプロレス研究会に所属。慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、97年に報知新聞社入社。広告局、出版局を経て、03年からアマ野球担当。05年にはアマ野球担当キャップ。06年は巨人番(投手担当)。07年からアマ野球キャップに復帰し、09年には楽天・野村番。10年はまたもやアマ野球キャップを務め、斎藤佑樹の大学ラストイヤーに密着。11年は日本ハムと西武の遊軍記者。好きな言葉は「そのうち何とかなるだろう」。カラオケの十八番は「夜空」(五木ひろし)。173センチ、61キロ。右投右打。

バックナンバー