スポーツ紙バカ一代

第63回 「1年目から、書けるヤツは書けたでしょ?」

2012.09.10更新

パ・リーグが大混戦です。昨日(9月9日)のゲームでは首位・西武が楽天に3タテを食らい、2位・日本ハムがオリックスに勝利。ついに1位と2位のゲーム差が0になりました。春先に首位を快走したロッテは8連敗の泥沼で5位転落。楽天が4連勝で4位浮上、クライマックス・シリーズ(CS)進出をうかがうなど、「熱パ」が吹き荒れます。

中でも就任1年目、栗山英樹監督率いるファイターズの健闘は、讃えられて然るべきでしょう。絶対的エースに君臨したダルビッシュ有がレンジャーズに移籍。開幕前は、「ダルの穴はそう簡単には埋まらない」「指導者経験のない栗山さんに、いきなり監督は厳しい」など、Bクラスを予想する声が圧倒的でした。プロの世界は結果がすべて。9月になってもAクラスを死守し、首位奪回をもくろむしたたかさには、敬服するしかありません。

栗山監督の凄いところは、どこでしょうか。わたしは「思い切った若手の登用」を挙げたいと思います。昨日9月9日のオリックス戦(京セラドーム)では、1番打者に20歳の西川遥輝、2番打者に21歳の杉谷拳士を抜擢しました。あまりにもフレッシュな並びです。

プレイボール直後の初回、西川はいきなりセンター前にヒットを放ちます。続く杉谷が確実に送りバントを決め、3番・糸井嘉男のタイムリー安打を呼び込みました。二塁から俊足を飛ばし、一気にホームへと到達する二十歳の姿は、鮮烈でした。

投げても20歳の中村勝が7回無失点の快投を繰り広げ、ゼロ封リレーで勝利。本来なら2軍で汗と涙にまみれていてもおかしくない若武者たちが、9月のヒリヒリした優勝争いの渦中で、思い切り自らの個性を解放し、躍動しているのです。

試合後のベンチ裏。栗山監督は自らの哲学をこう話してくれました。

「ハタチだろうが、全然関係ないんだよ。できるヤツはできるし、できないヤツはできない。記者のみんなもさ、1年目から(原稿を)書けるヤツは書けたでしょ?」

カントク、まさにおっしゃる通りです-。

「1軍での1打席は、2軍での30試合に出るよりも勉強になる」。かつてそんな話をしてくれたコーチもいました。主力の戦線離脱はチームにとって急降下を招きかねない危機ですが、それすらも若手の台頭を呼び込むチャンスにしてしまう。さらには若武者がのびのびとやりやすい環境を自然に作っている、中堅やベテランの存在も見逃せません。

育てながら勝つ。勝ちながら育てる。ひとりの若者がスターへと躍り出る過程を追っていくことは、スポーツを見つめる最高の楽しみとも言えます。残り21試合。熱血指導者の挑戦を、最後まで注視していきたいと思っています。

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加藤弘士(かとう・ひろし)

1974年4月、茨城県水戸市生まれ。水戸一高ではプロレス研究会に所属。慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、97年に報知新聞社入社。広告局、出版局を経て、03年からアマ野球担当。05年にはアマ野球担当キャップ。06年は巨人番(投手担当)。07年からアマ野球キャップに復帰し、09年には楽天・野村番。10年はまたもやアマ野球キャップを務め、斎藤佑樹の大学ラストイヤーに密着。11年は日本ハムと西武の遊軍記者。好きな言葉は「そのうち何とかなるだろう」。カラオケの十八番は「夜空」(五木ひろし)。173センチ、61キロ。右投右打。

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