スポーツ紙バカ一代

第66回 「挫折と思っていない」。斎藤佑樹、甦った強気

2012.12.10更新

12月1日付けで、担当替えがありました。わたしはこの2年間、プロ野球遊軍記者として日本ハム、西武をカバーしていましたが、西武専属になり、日本ハムの取材から外れることになりました。

思えば、ファイターズの取材を任されるようになったきっかけは、早大時代から密着してきた斎藤佑樹投手の入団でした。2年前の今頃、外は大雪の札幌ドームで行われた入団会見。当日、羽田空港から「ハコ乗り」して一部始終を追いかけたことを、昨日のことのように鮮明に覚えています。

2010年秋のドラフト、斎藤獲得に最も熱心だったのは、ロッテとヤクルトでした。2月の早大ロサンゼルスキャンプに同行取材を試みたところ、ロッテは斎藤本人に接触できないにもかかわらず、スカウト2名を派遣し、獲得への誠意をアピールしていた。

2球団のいずれかに行くのかな、どっちにせよ入団後は、Suicaで取材に行ける距離だな-なんて高を括っていたら、直前にソフトバンクと日本ハムも争奪戦に「参戦」してきた。4球団競合の末、進路は北の大地に――。そしてわたしも自ずと、札幌で過ごす時間が多くなりました。

この2年間、ファイターズナインや首脳陣、地元の報道関係者ら、北海道ではたくさんの出会いに恵まれた。これらの縁は元を正せば、すべて斎藤がもたらしてくれたものです。ドラフトで日本ハムが当たりくじを引いていなければ、札幌でこれらの方々とふれ合うことはなかったでしょう。

早大時代から、思い入れを持って追いかけた取材対象から離れることは、やはり寂しいものです。担当ラストデーとなった11月30日は、斎藤の話を聞いて終えたいと思いました。札幌のホテルを午前6時に出て、朝イチのフライトで帰京し、千葉・鎌ケ谷のファーム施設へと向かいます。

2年目の今季、斎藤は大きな壁にぶち当たりました。

栗山ファイターズの船出となった3月30日の西武戦(札幌ドーム)では開幕投手を務め、沢村賞投手・涌井秀章に投げ勝ち、1失点完投勝利。師弟の絆で勝ち取った白星はダルビッシュなきチームに大きな勇気を与え、開幕ダッシュの立役者になりました。

ところが、7月の球宴後にまさかの失速。2カ月を2軍で過ごす屈辱を味わいます。今季の成績、5勝8敗、防御率3・98はルーキーイヤーを下回る結果になってしまいました。

その間、斎藤を苦しめたのは自らの技術的な不振だけではありませんでした。週刊誌や夕刊紙は、輝かしい球歴を歩んできた男の低迷を、悪意を持って書き続けた。そのなかには、明らかに事実とは異なる報道も多く見られました。つらいシーズンだったことだろう。

初めての挫折になるのかなあー。そんなわたしの安易な問いかけに、斎藤は語気を強めて、こう否定しました。

「初めての挫折だと言われますけど、今回なんて全然、挫折だと思っていません。高校に入ったときの方が、つらかった。その時初めて東京に出て来て、兄ちゃんと二人暮らしで、なんか、いろいろと・・・。軟式から硬式に変わりましたし、勉強のつらさもありましたし。自分がやれる確信も、なかったですから・・・」

斎藤佑樹は中学時代、群馬県内ではよく知られた軟式野球の投手でした。それでも強豪・早稲田実業の門を叩いた当初は、このなかで3年間やっていけるのか、不安ばかりだったという。そこからはい上がり、夏の甲子園の優勝投手に上り詰めました。

「栄光に彩られた野球人生」というのは、実は表面のほんの一部かもしれない。本人にしかわからない苦労や葛藤を、アイツはこれまで幾度も乗り越えてきた。だから今回だって、どうってことない――。

来季、斎藤はプロ3年目のシーズンを迎えます。過去2年間、「主役」だった名護キャンプには、花巻東・大谷翔平投手のフィーバーが吹き荒れることになるでしょう。その裏で、じっくりと開幕に照準を絞り、心身を研ぎ澄ましてくれたら――。

2013年は札幌ドームの記者席から、担当だった頃とは違う気分で、そのピッチングを見つめてみたいと思っています。とはいえ、「斎藤佑樹の原稿を書かないオレ」に慣れるまで、しばらく時間を要するのでしょうね、きっと。


【お知らせ】
来たる12月30日、吉祥寺のスターパインズカフェで「フォーク大名2012」という音楽とお笑いの融合イベントをプロデュースします。わたしは高校時代から組んでいるバンド「ガッシ右松」のヴォーカルとしても、出演します(結成20周年)。現在、ウェブサイトを準備中ですので、後日「フォーク大名2012」で検索してみてください。冷やかし大歓迎。楽しいバンドと漫才師が来場をお待ちしています。

【開催日時】
2012年12月30日(日)16:00開場 16:30開演

【場所】
吉祥寺スターパインズカフェ(JR・京王井の頭線吉祥寺駅下車徒歩3分)

【木戸銭】
2300円(別途1ドリンク代がかかります)

【豪華出演陣】(タイムテーブルは後日公式サイト内で発表)
ガッシ右松
USA大山カラテ
Yuglet Waterloo(ユウグレ・ウォータルー)
相子トミヲ
ロッキングノールス
東京ペールワン
世界のうめざわ
(ほか、大物ゲストあり!)

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

加藤弘士(かとう・ひろし)

1974年4月、茨城県水戸市生まれ。水戸一高ではプロレス研究会に所属。慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、97年に報知新聞社入社。広告局、出版局を経て、03年からアマ野球担当。05年にはアマ野球担当キャップ。06年は巨人番(投手担当)。07年からアマ野球キャップに復帰し、09年には楽天・野村番。10年はまたもやアマ野球キャップを務め、斎藤佑樹の大学ラストイヤーに密着。11年は日本ハムと西武の遊軍記者。好きな言葉は「そのうち何とかなるだろう」。カラオケの十八番は「夜空」(五木ひろし)。173センチ、61キロ。右投右打。

バックナンバー