ある日の数学アナ

第10回 無限空間を持つ私になる

2010.04.09更新

4月。
今月から新しい環境に身を置くという方も多いのではないだろうか。
かくいう私はと言うと、前クールに引き続き夕方ニュースの担当なので生活は余り変わらなかったりする。

だがしかし。
気持ちも新たに今年も色々と新しいことにチャレンジしていこう! と決意も新たにしている。
実はこの原稿を書いている今日は、20代最後の日なのだ。
明日からは新しいステージへ突入だ。
皆から「早くこっちへいらっしゃい」と言われる。
・・・ちょっと寂しい。

何故だろう。10代から20代になるときには言われなかったのに、
「これでようやくあなたも大人の仲間入りよ、むふふ」と言わんばかりにニヤッとされる。
やっぱり20代と30代には大きな差があるということなのか。
とにかくこの一歳の差は、単に一年という幅以上の何かを含んでいるようで
特殊な階段を踏んでいるような気がしてくる。

日本で成人は二十歳ということになっているが、現代のそれは儀式に過ぎず、
精神的にもあまり成熟しきっていないので単なる通過点でしかなくなっていると聞く。
実際自分自身も成人した頃なんててんで子どもだったと思うし、
今だってじゃあ大人なのかと言われれば、いやいやいやいや・・・と思う。
目の前に困難があったときに、それを乗り越えるだけのタフさだとか粘り強く何かに向き合う力は、多分二十歳の頃よりは身についた、ような気はするが、それでもまだまだだなあと反省することが多い。
こんなに早く三十路を迎えることになるとは思わなかった。
自分の中では25、26歳で止まってしまっている気がする。

でも、どうしたら成長って実感できるんだろう?
そう思うことはないだろうか。

自分として、これはひとつのヒントになるのではなかろうか、と思ったのが
「いかに自分のなかで変数を多く持っていられるか」ということ。
いきなり変数といってしまったが、要はこういうことだ。

例えば直線であれば当然変数はひとつで表される。
ax+b =0
この場合、変数はxのみだ。
そして言わずもがなだが、この式は直線を表す。

次に、変数がふたつに増えると
ax+ by +c =0
変数はxとyで、2次元・平面を表す。
以後は変数が3つなら立体、と高次元化していく。
4次元になれば時間の概念が導入されて、 その後は表現できないし、
見ることもできないけれど、数学上の世界では無限に広がっている。

当然直線よりは平面、立体と、うちに抱え込む容量のというか、
懐の大きさみたいなものが大きいのは直感的に頷いてもらえると思う。
ということは、沢山の変数、いわばベクトルを持って自在にその空間を泳ぐことが
できたならば、しなやかで強いその人は多少の風にはびくともしないのではないだろうか。

だから、30代の私は、沢山のベクトルを持とうと思う。
自分自身の空間を無限大にするために。

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倉野麻里(くらの・まり)

テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ…」。離れてみてわかった数学への愛。いや、数学への一方的な愛!!数学への偏愛から見える日常のあれこれを語る。
KYOTO的の人気連載「くらまりの日々是数学」をタイトル改め、本誌で新連載。

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