ある日の数学アナ

第11回 中国エネルギーと人、人、人!

2010.05.14更新

先月末に上海万博の取材をしてきた。
久々の海外取材で、若干浮き足立って出かけていったものの、
現地で体調不良に見舞われてしまった。
あ~、この冬は一回も風邪をひかずに乗り切れた!
なんて思っていたのに、異国の地で風邪になるなんて・・・
前日の打ち合わせ中はややグロッキーだったが
周囲の素晴らしいアシストに助けられ、何とか乗り切ることが出来た。多謝!!

さてさて。
今回の出張、滞在期間はわずか数日だったので、それほど多くを見聞きできなかったが
著しい勢いで伸びようとする国の勢いを肌で感じ、そして思った。
「ああ、このパワーには到底かなわないなあ」と。

万博が始まって以来、各局のキャスターが現地から中継、
現地報告をしているのでどこかでご覧になった方も多いと思う。
そして皆、口を揃えて中国のパワー、勢いについて言及する。
万博の開幕より一足早く上海から中継をして帰ってきていた私は、
テレビで中継を見るにつけ「やっぱりそう感じるよなあ」とひとり頷いていたのだった。

よく言われていることだが、北京と上海では雰囲気がまるで違う。
上海はとにかく自由で華やかな活気がある。
ともすると貧しい人々が存在することをうっかり忘れそうになるくらいだ。

浦東と呼ばれる新興の地域にそびえ立つビル群は我こそが一番だと
誇示するかのように天に向かっているし、
すぐ隣を見れば、追いつけ追い越せとばかりに新しいビルが建設中だったりする。
無機物であるはずのビルが、上海の空という空を一飲みにしているようで、
ちょっとおどろおどろしい。

でも、路地を一本入ると、そこにはまるで時間が止まってしまったような
昔からの生活が広がっているエリアがある。
そこには日本でいう「昭和の匂い」がある。とっても不思議だった。

家の軒先でタライに足を突っ込んでいるおばあさん。
ゲームに興じる人たち。
食用の鶏を処理する人たち。
日本ではとうに見かけなくなった光景が広がっている。

そういった時間が止まっていたような風景は近代化された都市の陰に隠れて見えづらいが、
覗こうとしさえすれば、意外なほどあっさりとその姿を見せてくれる。
そして思うところ大アリだ。

中国は圧倒的に人の数が多い。
地下鉄に乗っても、ラッシュアワーでもなんでもないのに、人、人、人!
どこからこんなに人が沸いて来るんだと何度思ったことかしれない。

それと同時に成長速度も凄まじい。
数字の確度については議論の余地があるところだが、それでも今年の中国のGDPは
9%とも言われている。日本は2%がやっとなのと比べれば、いかに大きいかがわかる。

成長が著しいということはそれだけ人の移動も活発だということだ。
そう、まるで運動エネルギーの法則を地で行っているようなのだ。
まさに人と人がぶつかり合うことが大きく作用し、実際の数字以上のパワーを
生み出しているんじゃないだろうか。

中国では強い意志を持っていないと、ありあまるエネルギーに飲み込まれてしまう。
明日は今日よりもいい日であるという確信が明日への成長、
そして新たなエネルギーを生み出していく。

私は日本の60年代を経験していないから想像でしかないが、
高度成長期に皆が感じていた雰囲気ってこんな感じだったんだろうか。
「この浮き足立ってる感じ、ちょっといいなあ」
と、羨望と憧れの混じった複雑な気持ちとともに日本に帰ってきたのだった。

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倉野麻里(くらの・まり)

テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ…」。離れてみてわかった数学への愛。いや、数学への一方的な愛!!数学への偏愛から見える日常のあれこれを語る。
KYOTO的の人気連載「くらまりの日々是数学」をタイトル改め、本誌で新連載。

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