ある日の数学アナ

第12回 情報の交通整理人

2010.06.11更新

新緑が気持ちいい季節になりましたね。
皆さまお元気でお過ごしでしょうか。

「偏った愛で、OKですから!」

ミシマさんにこう言われて始まった連載も、
幾つかの季節をその時々の自分の言葉で切り取るうち
気づけば結構な時間が経った。

弊社でも4月入社の新人が配属された後、研修に精を出している真っ最中。
ついこの間まで学生だった子たちが、
プロの「アナウンサー」になるべく頑張っている。
彼らのフレッシュな姿を目にするたびに、
私も当初はこんな感じだったのだろうか。。。としばし懐かしさに耽ける。

とある作家がこう言っていた。
「今はみんなが何かのプロ」だ、と。
心して仕事をすべし、ということを言いたかったのだと記憶している。

「オタク」(敬意を込めてこう呼ばせて頂く)の皆さんもそうだし、
それを生業にしていなかったとしても、何かの知識に精通していて
尋常ならざる量の知識をお持ちの方は山のようにいらっしゃる。

そしてニュースの現場は、そういった色々なプロの言葉や知恵を借りて
初めて成り立っている。
私たち自身がある特定のジャンルに関する知識や出来事の専門家
というわけではない。

たとえば、口蹄疫が広がっている、という状況を受けて
専門家に見立てを聞き、対応に問題はなかったか、今後どのようにして防げばよいか。
そもそも口蹄疫ってどういうものか。
そういった次から次へと起こる疑問をその道のプロに聞いていく。

限られた時間の中で起こった集約した情報を伝えるのには
何が正解で何が不正解というわかりやすいものではない。

あくまでも沢山の情報のなかから何を選択し、何を捨てるか。
どのように構築してどういうニュアンスの結論に着地させるか。
その一連の作業に尽きる。
ちょうどパズルを組み合わせる作業のようだ。
情報の交通整理人という表現もなかなかしっくり来るなあと
個人的には思うのだが。

ただ、テレビとなると当然「枠」という概念が発生して、
時間との闘いだ。
この時間の存在が非常に厄介で、もっと時間があれば丁寧に伝えられるかな。
あるいは実はサイドにこんな情報もあるんだけどな。
なんてこともある。
10取材したうちの1くらいしか出せないというのは、こういうことだ。

ちなみに自分はいったい何のプロなんだろうかと考えてみると
疑う余地もなく、「伝える」プロだ。
どういう声色が一番しっくりくるのか。
どういう表現をするべきか。
どんな言葉で引きつけたらいいだろう、語順を引っくり返すか。
恐らく見ている方たちはあまり気にならないであろう小さなことを
あれこれ考えている。

。。。と、ここまで原稿を書いていたら、
鳩山総理、小沢幹事長が辞任というニュースが飛び込んできた。

また政治が大きく動きそう。。。
だからニュースは向き合っていると興味が尽きない。

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倉野麻里(くらの・まり)

テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ…」。離れてみてわかった数学への愛。いや、数学への一方的な愛!!数学への偏愛から見える日常のあれこれを語る。
KYOTO的の人気連載「くらまりの日々是数学」をタイトル改め、本誌で新連載。

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