ある日の数学アナ

第15回 期限切れ

2010.09.10更新

9月に入ったというのになかなか暑さが収まりませんね。
今年の夏は本当に暑かった。何度暑いと言ったかわからない。
文句なんて言っても仕方ないとわかっているのに「暑い、暑い」と言ってしまった。
無駄だとわかってはいるんですけどね。

こう暑いと食べ物の傷みが早いのが気になる。
あっという間にダメになってしまう。
冬場であればちょっとくらい賞味期限を過ぎても気にしないが、
夏ともなるとそうはいかない。
あの、悪くなってしまった食べ物を食べてしまった時の嫌な感じ・・・
想像しただけでぶるっとする。
全身の毛が逆立っているんじゃないかと思う。
で、結果、「うえーっ」と吐き出すことになる。
(お食事中の方ごめんなさい)

ちなみに、私はあまり細かいことは気にしないタイプで
ちょっと悪くなっているくらいでは気がつかずに食べてしまう方だ。
以前は封を開けた豆乳の期限が過ぎているのに気がつかず、
「スタバ風のソイラテは家で飲むとなぜ酸っぱいのかな?」などと思った後に
「・・・あっ、悪くなっているのか!」と気がついたくらい。
ホント、酷い話です。

でも、パッケージを見ていると賞味期限が表示してある場合と
消費期限が表示してある場合とがある。
なんとなくはわかるが明確な違いは、というと、あれ? という方も多いのではないだろうか。

ざっくり言えば、賞味期限とは、
「風味などを損なわないよう品質を保ったまま美味しく食べられる期間」を言い、
消費期限は「安心して食べられる期限」を表す。
つまり、消費期限までであれば口にしても問題ないよ、というものだ。
この消費期限や賞味期限は基本的には食べ物に対して使うことが多いけれど、
意外と身の回りにあるあらゆるものに当てはまる。

たとえば、服。
服の賞味期限はかつてよりもずっと早くに来てしまう。
時代の回転速度がかなり速いのだから仕方がない部分もある。
そこでなるべくトレンドに左右され過ぎないよう長く着られる服を買いたいのだが、
手ごろなものといえばどうしてもある程度は流行に乗ることになるし、
流行に乗ること=お洒落という価値観が大勢を占めている以上はまあ仕方がない。
で、一シーズン終わって次にまた同じ季節が来た時に改めて見てみると、
「この服、消費期限は来てないけれどちょっと古いかも・・・」
なんてことになって登板回数が減ってしまうなんてことは、女性の多くが経験済みだろう。

日々ニュースをウォッチしていると、私たち若い世代から見ると
従来のやりかたが賞味期限を過ぎて、そろそろ消費期限が近いからこそ
起きてしまった結果なのではないかと思うことが多々ある。

政治の世界で起きている人間劇もそのひとつに思える。
突き詰めると人間そういう幸福とか利害の奪い合いにしかならないんだから
仕方がないなんて言ってしまうとそれまでなのだが、
背後に浮かび上がる権力闘争、ポストの奪い合い、睨みあいを感じた瞬間に
表層のドロドロ劇が陳腐で仕方なく思えてくる。
そして悲しい。
どうしてもニュースでもそういった権力闘争やドラマはテーマとして取り上げやすく、
話題になりがちなのだが、一歩引いた目線で、見ることの重要性を日々痛感している。
みんな、いろんなものの賞味期限はとっくに過ぎていることはわかっているけれど、
それに敢えて目をつぶっているだけなのだろうか。
それとも気がついていないのか。

まあしかし、賞味期限や消費期限というのは、厳しい言葉だなあ。
ひとつ確かなのは、あまり安易に使わない方がいいということくらいか。

それでは、また。

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倉野麻里(くらの・まり)

テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ…」。離れてみてわかった数学への愛。いや、数学への一方的な愛!!数学への偏愛から見える日常のあれこれを語る。
KYOTO的の人気連載「くらまりの日々是数学」をタイトル改め、本誌で新連載。

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