ある日の数学アナ

第18回 今年の一字

2010.12.10更新

早いもので・・・と毎年言っている気がしますが、
あえて言おう。
2010年もいよいよ幕を閉じようとしています。
皆さんにとって今年はどんな一年だったでしょうか。

なんてゆるゆると書き出してみたものの、私にとってはどんな一年だっただろうと
あらためて考えてみる。
毎年この時期になると、会社で今年の一文字を書いてください~と言われるので
(視聴者用のプレゼントです)
うんうん唸りながら書いている。

毎年、清水寺で日本漢字能力検定協会による今年の一文字が発表されるのも
だいぶ定着してきた。応募数も年々増えているようです。
この協会は協会の私物化などが問題になりましたが、
せっかく皆さんが漢字へ親しみを持つよいきっかけになっているのだから
早く立ち直ってほしいな、と思っています。

そして私としては皆さんにも自分だけの一文字を考えてみることをお勧めしたい。
というのも、この作業が意外と楽しいのです。
自分だけの一文字というのがポイントで、世の中を無理に絡めたりしなくてよい。
となればとっても気楽です。

たとえば「肉」なんてのもアリ。
たっぷりの贅肉を身につけてしまったのかもしれないし、
沢山肉を喰らったのかもしれない。
まあ要するにどっちでもよいのです。

ちなみに去年は一体何を書いたんだろう?
と一生懸命思い出しているんだけれど、かなり頑張らないと思い出せない。
忘却の彼方とはこういうことか。
前述の「肉」みたいな場合はともかく、自分なりにそれなりに考え抜いた一字を
抽出しているのでかなり深い一文字になっているはずなのだけれど。

ああ、ようやく思い出した。
去年は「知」にしたんだったかな。ああ、自分はまだまだものを知らないなあと
思うことが多かったとかそんな理由だったかしら。多分ですが。

で、気になる今年をあらわす一文字はいったい何にしたのか。
本当は言ってしまいたいのだけれど、それを言ってはプレゼントにならないので
さんざんひっぱったあげく泣く泣くやめておきます(笑)

毎年思うことだけれど、やっぱり達筆な方が羨ましい!
「実は、私、書道の師範代なんです」とか「八段持ってます」とか言ってみたい、
とつくづく思う。

この年になると冠婚葬祭の記名をするときなど、筆で字を書かねばならないことが
意外にあって、それも不意打ちとも言えるようなタイミングでチョクチョク訪れるんですよね。
そして嫌が応にも自分の筆文字の達筆じゃない具合を見せつけられ
って自分で書いてるのでなんとも言えないんですが、それでもがっくりくる。

思い起こせば(年末だから思い起こしてばかりいても許してください)
私の中学時代には名物先生とでも呼ぶべき書道の先生がいらして、
それはそれは厳しかった。
授業中に咳やくしゃみをしようものなら「静かになさい!」とすぐに檄が飛んでくる。
そんなこと言われたって生理現象なのだから止めようがない。
じゃあ、どうしても出てしまう咳やくしゃみはどうすれば「正しい」咳やくしゃみになるのか。

もよおしてしまったあとに「失礼!」とみんなに聞こえる声で言う。
それが正解。
こうすれば正しい咳やくしゃみへと昇華し、許される。
「だってアナタ、このクラスに心臓病の人がいたらどうするのよ~」というのがその理由だ。

しかもこの先生は書き初めを冬休みの宿題として全員に与える。
小学校で授業程度にしか書を嗜んでこなかった私には、因数分解10000問なんて
出されるよりもよっぽど気の重い宿題で(そんな宿題ありませんでしたが)
嫌で嫌で仕方がなかった。

いや、別にただ提出して添削されて終わりなら、それでいいんですよ。
しかし微妙に字の配置が間違っていたりするだけで
「はい、やり直し~」となるのです。
当時は先生の厳しい言葉とあの朱筆が憎くて憎くてたまらなかった。

私は硬筆はそれほど汚くない(と自分では思っている)はずなのですが、
筆で字を書くとなると、まったく勝手が違う。
そもそも筆は持った瞬間に緊張して手が震えるし、
思うようにトメやハネ、はらいはできないし、
書いていても途中で墨はかすれるし、消しゴムで消せないし。
そうそう、墨で手は汚れるし、しゃべっちゃいけないし・・・
ああ、もうホントにイライラすることばかり!
だから年次が上がって書道の授業がなくなった時は、
それはそれは嬉しくて、
「これで二度と書き初めの宿題をしなくてすむ」と思ったものでした。

ところが、です。
冒頭の通り人さまの前で書を披露しなくてはいけなくなってしまったわけです。
別にこの視聴者プレゼントの趣旨を考えるに、字がウマかろうが下手であろうが、
そこはあまり問題ではないはずなのですが
それでも下手よりは上手がいいに決まっている。
まれに上手、下手の枠を越えた、味のある字を書かれる方もいらっしゃるけれど
私のは多分それとは違う。
頑張って斜めに眺めてみたところでべつに何か味があるわけではないことは
自分が一番よくわかる。
となればやっぱりもう少しうまいこと書を書ける術を身につけておくべきだったなあと
毎年反省するのです。

先ほどの先生、野田先生とおっしゃるんですが、厳しいご指導のおかげで
習い始めは成績がダメダメだった私も、
先生の授業が終わるころには多少評価があがっていたので、
もう少し授業を受けていたら、今よりもうちょっとマシなプレゼントになったんじゃないだろうか。
なんて、中学時代がはや15年も前であることに驚きつつも懐かしくなった
今年の終わりでした。

皆さんよいお年を。

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倉野麻里(くらの・まり)

テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ…」。離れてみてわかった数学への愛。いや、数学への一方的な愛!!数学への偏愛から見える日常のあれこれを語る。
KYOTO的の人気連載「くらまりの日々是数学」をタイトル改め、本誌で新連載。

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