ある日の数学アナ

第19回 アンテナ感度を「高」に設定!

2011.01.13更新

皆さま、新年明けましておめでとうございます。
今年はうさぎ年だし、ぴょんぴょん跳躍できるよう、準備だけは整えておきたいと思います。

そうそう、忘れる前に年末にお話していた件について。

「筆の扱いは下手だし、書くのイヤだなあ、苦手だなあ」と思いながら
いったい何を書いたのか。

今回は「支」という文字です。

去年は折に触れ、自分がいかに周りにいる大事な人たちに支えられているかを
実感することが多かった気がして・・・「いつもありがとう」の気持ちを込めて、
下手なりに(前回の記事をご参照下さい)一生懸命書きました。
こういう機会でもないと筆なんて触る機会がまずないからなあ。
ホント感謝です。
でも、来年こそはもう少し上達したいところだ。

さて。
上述の支えられているの仕事編で言えば、私が担当している夕方のニュース番組も、
いかに多くの人に支えられているかを実感する機会が非常に多い。
番組が終わってスタジオの外に出てくると、実に多くのスタッフが反省会のため一堂に会している。
50人、いやそれ以上?
ニュース・報道フロアにひしめきあっている。
30分程度の番組でさえそうなのだから、1時間番組や、特番で数時間も放送する番組となれば
その数は夥しいものになる。

私はキャスターとして出演するのが仕事だけれど、実に多くの「番組に出演しない人」たちの
応援があってはじめて「出演することが可能な状態」になる。
いわば準備完了な状態だ。

スタイリストさんやメイクさんにお世話になっているのはもちろんのこと、
放送するVTRをつくる人がいて、いや、それ以前に取材に応じてくれる人が存在しているし、
それらを収録するためには機材を扱うカメラマンや音声さんがいる。
その後、取材してきたものをテキパキと編集してくれる編集さんもいる。
かと思えばいわゆる事務的なバックアップ、例えばお金の管理をしてくれる人もいるし、
色んな部署との折衝をしてくださっている上司もいる。
番組の字幕いわゆるスーパー表示の加工をしてくれる人もいるし、時間管理をしている
タイムキーパーさんもいるし、音効さんも・・・
スタッフロールに毎日書き出すことにしたら、何枚あっても足りないくらい、
それこそ溢れんばかりの数の人がいるのです。

放送されるひとつひとつのVTRは多くの記者やディレクターが取材し、まとめあげたものなので
ものすごい量の情報が集約されている。
つまり限られた放送時間のなかで、本当はVTRのなかに入れたかったけれど収容しきれずに
泣く泣く落としてしまっている情報だってかなりの量あるというわけだ。

ニュースの裏側というと大げさ過ぎるけれど、多くの人は実際にニュースをつくったり
テレビの仕事に関わるとたった1分の放送のためにどれだけ多くの手間がかかっているかに驚く。
私自身もそうだった。
編集や取材に対してかける時間は言わずもがなだけれど、
その他にも実際には放送しないものの、情報としては自分のなかにいったん落としこみ、
放送では特に触れられない。そんな情報が沢山ある。

それらも含めて日々ものすごい量の情報に接し、理解しようと努め、「処理している」のだから
情報処理の訓練はかなりできていると思う。
一方で「自分から何かを繰り出す能力」は、以前と比べると衰えてきているように感じている。
とっても残念なことだけれど。
自分のなかの考えをまとめたり、ゆっくりとひとつのものごとについて考える時間と、そういう時に使う脳内の筋肉みたいなものが、減ってしまっている気がするのだ。

「いやーこれはよくないな。何とかしなくちゃ・・・」

なんて思っていた矢先、年末に友人と見た「バーレスク」という映画。
久々に「うおおおっ!」と叫びたくなるくらい感激した。
もともとクリスティーナ・アギレラという歌手が好きだというのもあるし、
CHICAGOやオペラ座の怪人などの映画が好きな私だからこそかもしれないが、
いやいや、それらを差し引いたとしても、出演している人たちのパフォーマンスが
文句なしに素晴らしく、感激、感動の嵐なのだ。

鄙びた田舎町に住んでいたアリは、成功を夢見て単身都会に出てくる。
アリはLAにある伝説の舞台「バーレスク」に、持ち前のガッツで転がり込む。
もともと得意だったダンスに加えて素晴らしい歌唱力をテスという女性経営者に見込まれ
またたく間にバーレスクの看板スターになる。
そんな彼女がスターになるまで、そしてスターになってから色鮮やかな日々が描かれる。

・・・と、こうやって書いていると正直言ってありきたりだし、
自分で言うのもなんだけど、素晴らしさがまったくといって言いほど表現できていないなあと思う。
ああ、残念。
でもはっきり言ってストーリーはそれほど重要ではないのだ。
とにかく皆が真正面から全力投球している姿ががっちりと観ている人の心を捉えて離さないし、
それはもうびしびしと心打たれるわけですよ。
見ている間ずっとスクリーンからエネルギーをもらいっぱなしだった。

主人公を演じていたアギレラさん、恐らくかなりダンスも練習したことだと思う。
圧倒的に唄のうまい彼女のことだから、そんなにダンスを頑張らなくったって
充分スクリーンのなかで存在感があったと想像できる。
でも、鬼が金棒を持ってしまったとはまさにこれを言うんだな、もうはみ出さんばかりの
圧倒的な迫力で観客に襲い掛かってくる。
エンディングでスタッフロールが流れている間の
あの独特の興奮、高揚感はとても久しぶりに味わった感覚だったなあ。

映画を見たからといってクリエイティブ能力がすぐに磨かれる訳ではないけれど、
刺激を受けたのは確か。
ニュース番組は一口にエンターテインメントと位置づけるわけにはいかないけれど、
それでも視聴者の心に何らかの形で足跡を残す仕事であることは疑いようがない。
決して土足で踏み散らすようなことがないよう意識して今年もまた頑張ろうっと。

やっぱりいい形でものごとをアウトプットしていくためには
適切なインプットをしていかないとダメだなあとつくづく感じた。
改めて多くの人、モノに刺激を沢山受けられるよう自身のアンテナ感度を
「高」に設定しておかなくちゃ。
そして、ここで少しでも多くを還元できるよう頑張ります。

最後になりましたが、今年もよろしくお願いいたします。

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

倉野麻里(くらの・まり)

テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ…」。離れてみてわかった数学への愛。いや、数学への一方的な愛!!数学への偏愛から見える日常のあれこれを語る。
KYOTO的の人気連載「くらまりの日々是数学」をタイトル改め、本誌で新連載。

テレビ東京アナウンサー室blog

バックナンバー