ある日の数学アナ

第30回 ドライフルーツ、ゴロゴロ

2012.01.23更新

2012年が始まってだいぶ経ちますが、改めて今年も新しい気持ちで
連載を続けていけたらと思っていますので
どうぞお付き合いくださいませ。

さてさて。
今年はどんなテーマで書き出そうかなあと思っていたところ、
以前に自分でちゃちゃっとメモした文言を見つけた。
「ドライフルーツ、ゴロゴロ」だ。

これだけ読んでも「一体何のこっちゃ?」と思われるでしょう。
でも書いた当の本人はちゃんと覚えていますよ!
いや、覚えていてよかったというのが正直なところなのですが、
幸運にもちゃんと覚えていたので今回はこの話をしてみようかということに
相成りました。

前回は(といってもだいぶ前だ・・・)リズムの話をした。
リズムのあるものにはどうしても耳を傾けてしまう、と。
そもそもこの「ドライフルーツゴロゴロ」は確か、商品の説明として書かれていた文言だ。
これが「ドライフルーツがたくさん入った」と書かれていたならば
特に気にも留めなかったはずだ。
でもこの「ゴロゴロ」という表現に、視覚的にも語感的にもやられてしまった。
ゴロゴロ自体には特段リズムがあるわけではないけれど、
声に出してみるとこの言葉の持つ独特の語感を一層味わえる。
どうですか。
なんとなく、所狭しとぎゅうぎゅうに、いや、ぎっしりとドライフルーツが詰まったような
感じが目に浮かんできませんか。

私たちは何気なく擬態語を使ってしまうけれど、
擬態語に対して持つ印象は、国によってまったく違う。
まあ考えてみればその通りなのだが、改めて考えてみたことがなかった。
ところが先日同僚とお昼を食べている時にその話になった。
例えば、「ずんぐりむっくり」という言葉を初めて聞いた外国の人は、
それがいったいどんな様なのかまったく想像がつかないらしい。
私たち日本語を当たり前のように使う側からしてみると、
ずんぐりむっくりと言えば、こう、説明するまでもなくあの独特のシルエットが浮かび上がるし、ずんぐりむっくりという様というよりはそういう言葉としてその意味も記憶しているので当たり前といえば当たり前なのだが。
しかもずんぐりもむっくりも平仮名そのものが丸みを帯びた文字が多用されているし、
見た目も意味もぴったりだなという気がしてくる。
ところが、かくかく・・・と無理に尖ってそうな平仮名を思い浮かべてみたらやはり、
こういう擬態語もちゃんと存在しているし、意味も角ばっているということなので
これまたぴったりだ。

私がアナウンサーとしてとても魅力的に感じている仕事のひとつが、
映像にナレーションをつける仕事だ。
別に文字を上手に読むだけならば日本語を読める人であれば誰でもできるのに、
そこには明らかに上手い下手が存在する。

うんちくを語らせたらキリがないので今回は控えておくとして、
とにかく、文字を文字として読んでいてはナレーションはちっとも魅力的に聞こえてこない。

「文字の背後にある意味、温度感、形、とにかく想像しうるものを想像するのが重要だ」
と以前大先輩に言われたことがあるのだが、それをこのドライフルーツゴロゴロで、
改めて思い起こした。
テクニック的にこうすればある程度うまく聞こえるというのはもちろん存在するがそれだけではやはりダメなのだ。

コピーライターはともすると埋もれてしまいがちな商品をどうやって人の目に
留めてもらえるか、日々考えているわけだけれど、
この「ドライフルーツゴロゴロ」に関して言えば、本当によくできているなあと
感心してしまった。
そしてこういうものに出会うと、コピーがうまいんだよな、と思いつつも
つい手を伸ばしてしまうのが私なのであった。
職業病なのか?

ではまた。

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倉野麻里(くらの・まり)

テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ…」。離れてみてわかった数学への愛。いや、数学への一方的な愛!!数学への偏愛から見える日常のあれこれを語る。
KYOTO的の人気連載「くらまりの日々是数学」をタイトル改め、本誌で新連載。

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