ある日の数学アナ

第34回 アナウンサーの技術(中編)

2012.05.25更新

前回
①度胸=自信
②できる限りの準備をする
③開き直る
この3つが必要だという話だった。

続いて・・・

④謙虚でいること
そのためにもコミュニケーション力を磨く努力をすること。
この場合は長期というよりは、瞬間的なという意味で。

例えば、友達の多い少ないというのはある程度ロングタームでの
コミュニケーション能力が問われる。
どのくらい頻繁に連絡を取るか、温度感はどうか、趣味はどうかなど
様々な要素が関わるからだ。
言葉や気持ちのキャッチボールがうまいからといって
必ずしも密な友人関係を築けるわけではないのは、ご想像に難くないのでは。

だからこそ「自分はあまり人間関係が得意じゃないし・・・」という人も
全然諦める必要はないのではないか。

かくいう自分もいわゆる女友達とべったりというのがあまり得意な方ではないので、
周りにいる友人はわりにさっぱりした人が多い気がする。
連絡を密に取っている期間もあればそうでもない時もある。
定期的に女子会をしているというわけでもない。
そういう意味では月イチでは必ず集まろうね~などという
最近の女子とはちょっと違うのかもしれない。
あのべったり感が心地よい時もあるが、too muchに感じてしまうこともあるのだ。

でも自分は彼女たちとはかなりの信頼関係があると思っているし、
困ったことや悩んでいる時は彼女たちに相談してきた。
それは自分だけの一方通行ではないと思っている。
たぶんだけど。
だって"A friend in need is a friend indeed."(まさかの時の友)というのが
私の座右の銘なのだ。
そのくらい彼女たちには助けられている。

ちょっと話が逸れてしまったが、瞬間的なコミュニケーション力を磨く努力は
それほど難しいことではなく心がけひとつでできることだと思う。

コミュニケーションは互いにボールを投げ合っているのだとすると、
いい球を投げ返すためには相手のボールをよく見極め、
どこに返せば相手は気持ちが良いのか、どういう球を投げ返せば
相手も気持ちよく投げ返してくれるのかを瞬時に見極めればよい。
一方で、どっしりと受け止める方が難易度はずっと高い。
相手が自分の嫌なところに球を投げてきた場合は
とくにその意味をよく考える必要がある。
そんな時に、謙虚な気持ちでいることを忘れてしまうと、
相手を投げ負かすことばかり考えてしまい、本来の目的を忘れてしまう。
「コミュニケーションを円滑にする」という原点だ。

また、相手の投げてくれたボールが大いにヒントに満ちたボールであったとしても
投げ負かすことばかり考えていた場合は、
そのヒントにすら気づくことができない。
自分を成長させる機会をロスしてしまうなんて勿体ないことこの上ない。

とはいっても「謙虚な気持ちでいること」という当たり前な結論に
辿り着くまでには、もちろん紆余曲折があった。
それでも自分が携わってきた仕事の成り立ちは、決してひとりでできるものではなく
常にチームワークの上に成り立っている仕事であるからこそ、
多くのアドバイスをもらってきたし、極めて単純な結論に至ったのかなという
気もしている。

⑤相手の話を聞く
これは「本当に」相手の話をよく聞き、理解しようと努めることだ。
冷静に考えてみると、特に新人の頃など経験の浅い頃は、
インタビューをする場合などに失敗してしまうことが多かった。

具体的には、相手の話を聞いているようでいて、あまり聞いていないのだ。
言うなれば「聴いてい」いるつもりでも「聞いていない」状態だ。
もちろん耳には入ってきているのだが、きちんと頭で理解できていなかったり、
胃の腑にまで落として「聞いている」とは言い難い状態がこれに当たる。

日常の会話でも相手の話を本当に聞いているか、怪しくなる場面に
遭遇することは、ままある。
「あれ? この人、私の話、ちゃんと聞いてくれてたかな?」というような。

自分にも話したいことがあるときなどは大いに気をつける必要があるが、
そういう時こそ相手の話に真摯に耳を傾け、相手の言葉をキャッチし、
それは? と思う点にはきちんと耳と心を傾けるということが必要だ。
と自戒を込めてそう付け足したい。
自分の場合は、周りにそういったコミュニケーションの達人が多く、
日々勉強させてもらえるというとても素敵で幸運な立場だったりする。


(つづく)

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倉野麻里(くらの・まり)

テレビ東京アナウンサー。理工学部数学科を卒業した後、放送局アナウンサーという一見、数学とは縁のない世界に飛び込む。仕事は十二分に充実しているものの、数学、数字には触れない日々。「モノタリナイカモ…」。離れてみてわかった数学への愛。いや、数学への一方的な愛!!数学への偏愛から見える日常のあれこれを語る。
KYOTO的の人気連載「くらまりの日々是数学」をタイトル改め、本誌で新連載。

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