10年後を考える

第1回 時代はローカル!未来は明るい!ってホント?

2017.11.01更新

 みんなのミシマガジンの読者の皆さま、はじめまして。小倉ヒラクと申します。
 僕は「発酵デザイナー」という不思議な肩書の仕事をしています。微生物の研究とデザインをかけ合わせたような仕事をおりまして、微生物が生み出す世界各国の不思議な発酵文化の面白さを、アニメや絵本、ワークショップなどを通して伝えています。
(詳しくは僕のWEBサイトを見てみてくださいね→リンクはこちら

 そんな「微生物大好きニンゲン」である僕に、ミシマ社の編集ホシノさんからコンタクトがありました。いわく、

ホシノ「これからの働きかたや暮らしかたについての本を一緒に作りませんか?」

ヒラク「えっ、発酵とか微生物じゃなくて?」

ホシノ「ヒラクさん全国の地方行って、地元のメーカーとか自治体とか若い人たちといっぱい仕事していますよね? 日常的に地方の課題に向かいあっているヒラクさんなりの未来の社会の姿を聞いてみたいと思ったんです」

 なるほど。
 確かに発酵の仕事をすると必然的に都市圏よりも地方に出向くことが多くなります(都市は発酵砂漠だからね)。例えばお味噌ひとつ取ってみても、そこには原料の大豆や米をめぐる農業の問題、食文化のグローバル化をはじめとする文化継承の問題、地元の雇用や産業と紐付いた働きかたの問題があるわけです。

 今年の春に上梓した『発酵文化人類学』でも、発酵文化に関係する社会的トピックスをたくさん取り上げました。

 発酵と向かいということは、地域文化と向かいあうことであり、農業や食や産業構造と向かいあうことであり、何よりそれをつくる人と食べる人と向かい合うこと。
 つまり僕は微生物の視点を通して社会のカタチを見ているのですね。

 その時に鍵になるのは、やはりローカルのものづくりや文化。そしてそこに受け継がれてきた価値観や自然への向かい合いかた。

 ローカルには可能性がいっぱい。これからはローカルだ!そうだそうだローカルしかない!

 そんな謎の確信のもと、かつてgreenz,jpというWEBマガジンのインタビューでも「これからの日本の未来は地方から生まれるのだ!」と威勢のいいことを語ってそれなりに色んな人に読まれたりしたこともありました。

・キーワードは"豪族2.0″! これからは一旗あげるために地方へ行く。発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが考える、今とこれからの日本のカタチ

ホシノ「この話の延長で社会的なことを書いていってもらうのどうでしょう?」

 ふむふむ。それではこんな感じで「ローカルから見る日本の未来」みたいなことを書いてみようではないか...!といざ具体的に準備しはじめてみたんだけどさ...。

ヒラク「ホシノさん。あのですね。ローカル最高!未来は明るい!みたいなこと書こうと思ってたんですけど、自信なくなってきました。これは単なる僕の希望的観測であって、シビアに考えていくとローカルは衰退するしかなく、世代の分断は進み、灰色の顔をした民草が荒廃した街を亡霊のようにさまよう...そんな絶望的な未来が待っているのかもしれません。ていうかこんな大それたこと、ただの微生物好きに何が言えるのかと? 無理です〜!」

 世のリアルを見てみたまえ。
 世代間格差があり、地方格差があり、少子高齢化があり、経済はシュリンクし、政治は混乱し、コミュニティは荒廃し、勉強したくても学校にいけない子どもたちの貧困が進み...という厳しい状況に目をつむり、僕たちはyoutubeでハリネズミの赤ちゃんのお腹をフニフニする動画とか見て現実逃避しているではないか。

 そんななか、無責任に「ローカル最高〜!これから明るい未来が待ってるぜ〜!」とかまあ簡単には言えないよね。

ホシノ「確かにそうですよね。ただウケの良さそうなことだけ言ってリアリティない本つくってもしょうがないですもんね」

ヒラク「はい。いちおう僕サイエンス(微生物学)を扱う者でもあるので、あんまり無根拠なこと言えないですし」

ホシノ「.........」

ヒラク「.........」

ホシノ「じゃあこういうのどうですか?そうやってヒラクさんが悩みもがき苦しむさまを、ミシマガジンでリアルタイムに連載するという...」

ヒラク「僕の、悩みもがき苦しむさまを、衆目に晒すと」

ホシノ「はい・ヒラクさんのその悩み、等身大でリアルだと思うんですよね。個人として幸せに生きていきたいという期待があると同時に、大きな社会の流れに飲み込まれてしまうんじゃないかという不安もある。その両極のあいだで悩むのが私たちフツーの人なわけじゃないですか。いわゆる専門家としてじゃなくて、いち個人が『自分ごと』としてこれからの社会をどう考えていくのか。そういうの読みたい人、確実にいると思うんですよね。」

 うーむ、なるほどね。
 自分のことを棚に上げて「これからはローカルだ!」というのは簡単だけど、実際山梨のイナカに住んでいる自分の未来を考えてみるにだな。空き家だらけでゴーストタウンになるんじゃないの?とか学校がどんどん統廃合されて子どもの教育どうなるの?とか近所のボロい橋落っこちたらもう一回作り直す行政の予算あるの?とか差し迫った問題がいっぱいある。こういう「具体的な気づき」からこれからの社会を考えてみるのは、自分にとっても有意義だし何より読んでみたい...!

ヒラク「わかりました。じゃあまずはそのセンで行ってみましょう。ただいくつか懸念点が。まず、悩みもがき苦しんだ結果、『もう未来は絶望しかない!未来ある若者は国外に脱出せよ!』みたいな結論が出るかもしれません。そしたらもはや当初の話とは全然別なことに...」

ホシノ「それはそれで面白いと思います( ー`дー´)キリッ 本をつくる企画はいったんリセットして、まずはヒラクさんなりのリアルを書いてみてください」

ヒラク「あとあと!漠然と『未来』と言われても、どれくらい先のことをイメージすればいいのかわかりません」

ホシノ「そうですね。じゃあ両手で数えられる数...じゅう...10年でいいんじゃないですかね!10年後を考える、でいきましょう!!」

 ということで。
 これからこのミシマガジンの場を借りて、僕小倉ヒラクが10年後どのような未来を生きるのか、悩みもがき苦しむさまを皆さまにお届けしたいとします。だいたい月に一回更新する予定ですが、悩みが深すぎたらちょっと間があくかもしれません。

 皆さまが「面白い!」と思ったら本になる...かも。とりあえず次回は「10年後の未来を考えるメソッド」について書いてみたいと思います。

 どうぞよろしくお願いします。ペコリ。

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小倉ヒラク(おぐら・ひらく)

発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市の山の上に発酵ラボをつくり日々菌を育てながら微生物の世界を探求している。『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014を受賞。新著に『発酵文化人類学』。

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