隣町探偵団

第11回 兄弟の家の前の踏切の謎(前)

2013.05.25更新

 問題とは、吉井家をピンポイントで確定することができるかどうかという作業をしているときに発覚した。
 まず、下の三枚の写真を見ていただきたい。
 最初は、兄弟を挑発しに来た悪ガキが、「先生がきた!」という声で振り向いたところ。(場所は兄弟の家の庭先の柵のところ)

第11回 兄弟の家の前の踏切の謎(前)

図版19. 吉井家の庭の柵


 かれらの視線の先には先生と父親が踏切を渡っているところがみえる。それが下図。

第11回 兄弟の家の前の踏切の謎(前)

図版20. 先生と父親が渡る踏切


 場面が切り替わり、先生と父親が話し合っているところが下図。

第11回 兄弟の家の前の踏切の謎(前)

図版21. 先生と父親が踏切を渡った後で立ち話をしている場所


 先生と父親は踏切を渡ったところで立ち話をしているという設定である。

 次の写真は、これより前のシーンで、兄弟が学校をサボった日の午後のシーン。
 悪ガキたちが吉井家の庭先にやってきて「弱虫!なぜ学校へこないんだ」と兄弟を挑発し、兄弟が「もう一度云って見ろ」と応酬したあとの、取っ組み合いの喧嘩をしているシーンである。画面の右端には吉井家の庭の垣根らしき板組が映っている。
 もしこれが、吉井家の庭の垣根だとすれば、この踏切は吉井家の庭の西側前面に位置しているということになる。

第11回 兄弟の家の前の踏切の謎(前)

図版22. 子どもたちが取っ組み合いをしている踏切の手前


 当初、わたしたちは父親と先生が立ち話をしている場所(図版21)は、図版22の踏切(つまりは「踏切1」)を背にしたところであると思っていた。(「映画」の流れを見れば誰でもそう思うはずである)
 二つのショットを見比べてみれば分かるのだが、先生と父親が立ち話をしている背後には、黒い三角形の木枠(踏切のガイドなのか)が見える。

 ところが、子どもたちが取っ組み合いをしている背後の踏切には、その黒い三角形の木枠がないのだ。父親と先生が最初に渡ってきた踏切にも黒い三角形の木枠は映し出されていない。
 そうすると、父親と先生が立ち話をしているのは、「踏切1」を背にした場所ではないということになる。

 では、いったい父親と先生が立ち話をしているのは何処なのだろうか。黒い三角形の木枠のある踏切はどこにあるのだろうか。(この黒い三角形の木枠の正体は、後に判明するのだが、このときはまだ、わたしたちは踏切のガイドだろうと考えていた。)

 ここでフィルムを巻き戻してみると、謎はさらに深まることになる。
 兄弟と父親が朝、家を出て、線路方向へ向かうシーンを見てみよう。道の向うでは悪ガキたちが待ち構えている。よく見ると、この道の先には、先生と父親が立ち話をしていた場所があるあはないか。道が線路と交わるところの右隅に例の黒い三角形の木枠が映っている!

第11回 兄弟の家の前の踏切の謎(前)

図版23. 兄弟が玄関を出ると、悪ガキたちが待ち構えている


 このシーンの前では、ここにいる悪ガキたちと、玄関先の兄弟は向き合って話をしている。兄弟が家を出て、その後父親が出てきたので、悪ガキたちは逃げ出す。そして、「踏切1」の手前を左に曲がって走り去る。兄弟たちは右へ曲がって学校へ行くのだが、悪ガキたちは左に曲がって逃げて行った。(ということは、この道の先には踏切は無く、右へ曲がっても、左へ曲がっても学校に行く道につながるということなのだろうか)。

第11回 兄弟の家の前の踏切の謎(前)

図版24. 父親が出てきて悪ガキたちが逃げていく


 吉井父子は、玄関を出てから、この道を線路方向に進んで、先方の「踏切1」の手前を右折して線路脇の道を「踏切2」へ向かうというのがわたしたちの推論であった。

 この場面を何度も繰り返して見ているうちに、面白いことに気がつくことになる。
 家の玄関を出たところにある道の先方に見える踏切と、子どもたちが取っ組み合いをしていた踏切は別のものなのである。

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平川克美(ひらかわ・かつみ)

1950年東京生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒業。渋谷道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを内田樹らと共に設立。現在、株式会社リナックスカフェ代表取締役。また、株式会社ラジオデイズにて音声コンテンツダウンロードサイト「ラジオデイズ」を運営。2011年からは立教大学ビジネスデザイン研究科の特任教授に就任し、ビジネスから教育へと活動の場を広げている。

著書に『ビジネスに「戦略」なんていらない』(洋泉社新書)、『株式会社という病』(講談社現代新書)、『俺に似たひと』(医学書院)、『移行期的混乱―経済成長神話の終わり』(ちくま文庫)、『移行期的乱世の思考』(PHP研究所)、『小商いのすすめ』(ミシマ社)など。

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