隣町探偵団

第12回 兄弟の家の前の踏切の謎(後)

2013.06.01更新

 図版23、24(第11回 兄弟の家の前の踏切の謎(前)参照)で○でかこまれた、黒い三角形の木枠のようなものは、子どもたちが取っ組み合いをしていた踏切には見当たらないのだ。
 ところが、家をでてから直進して歩む前方の踏切には、黒い三角形の木枠が映っている。

 これは何を意味しているのだろうか。
 兄弟の家の近くには踏切が二つあるのだろうか。それとも、わたしたちは何か勘違いをしているのだろうか。
 もう一度、細部を確認しながら踏切が出てくるシーンを検証してみよう。
 この場所(下の写真)は、家の玄関を出てすぐのところにある道であり、悪ガキたちの背後には黒い三角形の木枠のある踏切がある。遠くに高い鉄塔のようなものが見える。






第12回 兄弟の家の前の踏切の謎(後)

(図版25. 悪ガキたちが兄弟の家の前で待ち構えている)




 鉄塔も、三角形の木枠も、先生と父親が立ち話をしていた場所の背後に見えていたものと同じである。
 そしてこの道は踏切を超えて、その向う側に延びており、道の右側には電柱、左側には灌木が並ぶ並木道になって続いているように見える。
 その少し後のシーンを見てみる。






第12回 兄弟の家の前の踏切の謎(後)

(図版26. 逃げる悪ガキと、進入してくる電車)




 悪ガキたちは踏切の手前を進行左の道へ逃げ去り、電車が南西から北東方向へ急な角度をつけてこの踏切に進入してきている。また、兄弟が玄関を出てから踏切までの道脇には数軒の家が建っている。踏切を渡った道はまっすぐ前方へ伸びており、右側には電柱、左側は灌木の並木が見える。灌木の並木はかなり先に進んだところから始まっている。
 さらに、注目すべきは、画面左側に白く光る帯が見えることである。
 いったい、この白く光る帯は何なのか。






第12回 兄弟の家の前の踏切の謎(後)

(図版27. 兄弟が家から道に出た瞬間)




 この線路の向う側に延びている道を吉井家の家の庭から見ると、どう見えているのか。背後の灌木の並木と電柱の関係から、この道は家と直角に伸びでいるのではなく、家の近くを通って、斜めに角度をつけて伸びているように見える。もし、この道が吉井家の左側を線路まで垂直に伸びているならば、電柱と灌木の林はこの位置からは見えないはずである。
 いったい、吉井家の庭と、母屋と、二つあるらしい踏切の関係はどうなっているのか。






第12回 兄弟の家の前の踏切の謎(後)

(図版28. 吉井家の庭から見えるもの)




 もう一度、黒い三角の木枠のない踏切のシーンを見てみよう。
 「映画」の中盤で、悪ガキたちと兄弟が玄関先で喧嘩をして、悪ガキのふたりが泣きながら踏切を渡るシーンに出てくる踏切である。この踏切は、兄弟が学校へ向かう先にある踏切と明らかに異なった踏切である。踏切を渡った先の風景がまるでちがうのだ。
 先生と父親が立ち話をしている背後の踏切(あるいは兄弟が学校へ行くときに玄関を出た先に見える踏切)の先の道は、右側が電柱が並び、左側が灌木の並木のようになっていた。
 しかし、喧嘩して泣かされた悪ガキが渡った踏切の先の道は次の写真(図版30)のように、右側に電柱がなく、左側に電柱の列があるだけである。これは一体どういうことなのか。






第12回 兄弟の家の前の踏切の謎(後)

(図版29. 取っ組み合いの踏切)









第12回 兄弟の家の前の踏切の謎(後)

(図版30. 取っ組み合いの踏切を渡って泣きながら去っていく悪ガキ)




 これらのことから分かるのは、吉井家の近くにある踏切は、悪ガキが泣いて渡っている踏切(先生と父親が渡ってきた踏切も同じ)だけだということである。
 兄弟が家を出て学校に向かうときに先方に見える踏切のようなもの(右端に三角形の木枠が見える踏切)は、「映画」のなかでは一度も渡られていないのだ。

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平川克美(ひらかわ・かつみ)

1950年東京生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒業。渋谷道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを内田樹らと共に設立。現在、株式会社リナックスカフェ代表取締役。また、株式会社ラジオデイズにて音声コンテンツダウンロードサイト「ラジオデイズ」を運営。2011年からは立教大学ビジネスデザイン研究科の特任教授に就任し、ビジネスから教育へと活動の場を広げている。

著書に『ビジネスに「戦略」なんていらない』(洋泉社新書)、『株式会社という病』(講談社現代新書)、『俺に似たひと』(医学書院)、『移行期的混乱―経済成長神話の終わり』(ちくま文庫)、『移行期的乱世の思考』(PHP研究所)、『小商いのすすめ』(ミシマ社)など。

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