石井ゆかりの闇鍋インタビュー

第3回 脱線編 紙谷さん・その1

2014.05.12更新

インタビューさせて頂く相手が誰だか解らないまま出かけていって、
その場で事前情報なしに「初対面」で始めるインタビューシリーズ、
第3弾・・・となるはずだったのだが
4月はなかなかスケジュールが合わず、5月に日延べとなった。
が、最近ちょっと面白い、ある意味「闇鍋」な出来事があったので
そのときのお話を今回はご紹介しようと思う。

本当にひょんなきっかけで、先頃
ティアラデザイナーの紙谷太朗さんという方に
お話を聞く機会があった。
結婚式で、ウェディングドレスとともにつける「ティアラ」を
オーダーメイドで作っている方である。
花嫁さんひとりひとりに、その人専用のデザインを考え、
かたちにしているという。
この「デザイン」は、事前に本人、あるいはパートナーに
綿密にヒアリングを行い、そこからモチーフを考える。
その人の大切にしているものやモットー、
周辺にあってその人「らしい」ものを盛り込む、
というスタイルでやっているのだそうだ。

私は結婚式には、二度しか招待されたことがない。
そんなわずかな経験で言うことなのだが、
あんなに「自分のことを他人からあれこれ言われる」機会は
結婚式以外にはあまりないだろうと思った。
葬式もそうだが、葬式での話は、
当人にはもう聞くことができない(聞いてるかもしれないが)。
いろいろな人がスピーチをし、祝辞を述べる中で
「新郎新婦はこんな人で・・・」と話す。
まるで、今までの人生の履歴書を、
人に書いてもらってるみたいである。
私が見た結婚式では、新婦がスピーチを聞いて
「ええっ、私のことそんなふうに見ていたんですか?」
と驚く場面がけっこうあった。
着飾るとか、注目を集めるとか以上に、
そういう意味で「主役」なのだと思った。

紙谷さんは第三者として、「新婦」を表現する。
それはたいへん、面白そうなことだと思った。
私も、個人のホロスコープを見て
「この人はこんな人」というのを書くことがあるが、
ヒアリングでやれるなら、もっとぴったりしたことが
ざくざく解るのだろう。
紙谷さんにそういうことを聞けるかも、と思い、
話を聞かせて欲しいとお願いすると、
面白い言葉が返ってきた。
私がTHREE TREE JOURNALというWebマガジンに寄稿した、
「美」に関する記事を、読んで下さったというのである。


「すがたかたち」ではない、「美」。

紙谷さんによれば、「美」は、
「ティアラ」を創る上で、とても重要なテーマだという。

「僕は男性だからなのか、
『美しい』ということをずっと探しているんです、
本当の美しさってなんだろう?
というのが、ずっとテーマなんです。
そのときそのときの一瞬の美しさではなくて、
『普遍的な美しさ』みたいなものとか、
国境を越えるような美しさとか、
そいうものを探していて、
ティアラを作るときにも、それを形にしたい、
と思っているんです。
僕は男性だから、そういうものを、
余計に、探しているところがあると思います」

「でも、これは男性としては逆に特殊かもしれませんが
『すがたかたち』は、関係ないんです。
ティアラを作るとき、お客さんのことをいろいろ、聞くわけですが、
メールでやりとりすることがほとんどで、
直接には相手の姿を見ることは、あまりありません。
写真も、できれば、見せられたくないんです。
『すがたかたち』は、極力、見ないようにしています。
そういうものでない美しさをかたちにしたいからです」

紙谷さんの作るティアラには、
様々なモチーフが入る。
たとえば、その人が大切にしている言葉が入ることもある。
家族を大切にしている人には、
両家の家紋が用いられたことがあった。
名前に「雪」という文字が入っていて、
それが、本人の清らかな雰囲気とぴったりだったときには
雪の結晶をモチーフとした。
その人が大切にしているもののなかに、
その人の美しさが表現される、ということなのだろう。

しかし、紙谷さんの言う
「すがたかたちではない、美しさ」
は、具体的には、どういうものなのだろう。
紙谷さんが、どんなことを
「美しい」
と言っているのか、そのナカミが気になった。
誰もが「美しい」という言葉を知っていて、
日常的にそれを用いるが、
その言葉によって意味すること、そのナカミは、
ほんとうに、さまざまだ。
たとえば、「道徳的である」「倫理的である」という意味で
「美しい行動」のように使うこともある。
紙谷さんは何を「美しい」と思い、
それをティアラにしようとしているのだろう。
それを、すこしつっこんで聞いてみた。

「何に惹かれているんでしょうね......
僕の中で『美しい』と思っているものが2つあって
それは、『美意識』『品格』みたいなものなんです。
そいういうのを、とてもうつくしいと思っている。」

美意識、とは、どんなものか、と聞くと、
いくつか、キーワード的な言葉が返ってきた。

絶対的なルールのようなもの。
人を幸せにしたいから生まれるもの。
きよらかなもの。
自分の意志。
時代を経ても失われないような強さ......。

「そういうものを見ると、衝撃を受けます。
この人はこれをうつくしいと思ってるんや!
と、驚くんです。
他人がどう思おうと、自分が美しいと思っている、
そのルールを守る、という態度です。それが美しい。
たとえば、石井さんが毎日ツイッターで占いを続けてるじゃないですか、
お金ももらわないのに、毎朝やっている、
それも『美しい』と思うんです。
それもひとつの、美意識じゃないですか」

ツイッターの「今日の占い」を続けて、
もう5年ほどになる。
病気で「お休み」したのは、一度ほどで、
時間は昼になることもあるが、
たしかに、ずっと続いている。
誰に言われたのでもない、自分で決めた「ルール」で、
それを守り続けている。
何の意味もない。
けれど、やっている。
意味はないし、誰に言われたのでもないけれど、
やっている。
そういうことが「美意識」と言われれば
たしかに、そう呼ぶことも出来るかもしれない。
やめようと思えば、いつでもやめてしまえるはずだ。
正直、面倒になることも、ないとは言えない。
でも、やめない。

「自分なりにルールを作ってそれを守っていたり、
大切なものを、頑張って作っていたりするのは
『美意識』で、それは美しいんです」
たとえば、惰性みたいなものから生まれる品格って
ないですよね。
ドロドロした美意識、というのもない」

*つづく・その2は明日更新します

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石井ゆかり(いしい・ゆかり)

ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆、独特の文体で老若男女を問わず人気を集める。著書に『12星座シリーズ』(WAVE出版)、『愛する人に』(幻冬舎)、『月のとびら』(阪急コミュニケーションズ)、『星の交差点』(イースト・プレス)など多数。

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