石井ゆかりの闇鍋インタビュー

第11回 リアル篇、プチレポート。その2

2015.02.03更新

自由と、奇跡。

「演劇って、すごく時間がかかるんです。
歌舞伎とか、あの、決まった様式がある大衆演劇の世界は、
全員集まって何日も稽古、というのをしなくても、
ぱっと合わせるだけでできるのもあるそうです。
でも、私がやっている、いわゆる新劇の世界では、
何時間でも稽古をするんです。
たとえば、俳優がセリフをひとこと言うのでも、
ただただ言うだけでは、話が繋がらないというか、
人間に見えないんです。
それが、人間の会話にちゃんと見えるまで、
すごく何回もやるんです。
ただ一言なにか言って、それに応える、というだけで、
ものすごくたくさんの言い方があります、
選択肢がたくさんある、つまり、自由があるということです。
その中からたった一つのこたえを見つけるために、
延々と稽古をするんですが、
それがすごく大変なんですね。
でも、そこに自由がある、と言える。
この3月に公演があるんですが、
去年の5月から俳優に集まってもらってやっています。
道筋は決まっていて、
それが見えてくる、ということなんだけど、
そこですごーく(!)『選べる』。
それは、本当に自由なんだ! という感じがするんですね」

そこで阿藤さんは、
「演劇している人はみんな......」
と言いかけて、ふいにお客様に問いかけた。
「この中で、演劇やってる人、いますか?」
誰も手をあげない。
「ああ、いないですか、
いや、今言っていることは、私が思っているだけで、
演劇している人の中でも、いや自分はちがう、と言う人は
たくさんいると思います。
私はどうも、自分がその集団の真ん中に居るという意識が持てないというか、
『演劇人は』とか『女の人は』とか『日本人は』とかいう話が苦手です。
自分がその人たちの『代表』になれないんですね。
なので、今から言うことはちがう人もいるかもしれません」

こう前置きして、彼女は続けた。

「演劇している人は、
世の中に奇跡が起こる、って
知っている人だと思います。
というのは、だいたい、初日の前にはかならず、
みんな、もやもやするんです。
でも、ある日突然、
ぜんぶが『とおる』日が来るんです。
何の問題もなく、本当に、最初から最後までが、
すらーっとぜんぶ通る。
その日はみんな、もう大興奮で、
終わった後に、お疲れ様でした−、って帰りがけに、
後ろから俳優がたたたたっと駆け寄ってきて
『阿藤さん! 今日はできてましたよね!!』
って言ってくる、
本当にそういうことがあるんです。
その奇跡が、毎回起こるんです。
世界って奇跡で成り立ってるんだ、って
いつも思います。
だから、演劇やっていて、
神様を信じない、という人が信じられない(笑)
だってナマでやるんですよ、
なにがおこるかわかんないんですよ!
神様を信じないと、演劇やれないとおもう。
いや、信じない、と言う人もいるけど(笑)」

私もそういうことは、たまにある。
どうしても書けなかった原稿が魔法のように書ける瞬間が
ときどき、訪れる。
同じことをもう一度やれと言われても絶対書けない、
そういうことがある。
それを「なにかが降りてきた」みたいに言う人もいる。
私は、「降りてきた」とは感じないのだけど、
言わば
「どこかに行ってきた」
みたいな感覚に近いかもしれない。


パラレルワールド。

「ホンを書くようになって17年になりますが、
最近、古い作品をやって頂けるようになりました。
知らない方々が、ホンを読んで、
これを上演したいのですが、と言ってくださるんです。
そのときは必ず、
『稽古を見せてください』って、見に行きます。
今まで断られたことは一回しかありません(笑)
ベテランの俳優が演じたものを、
高校生がやることもあります。
それはもう、本当にちがいます、
年齢もまったく違うし、
下手と言えばまあ、下手なんだとおもうんですが、
とにかくまったくちがう。
でも、そんなにも本当にちがうのに、
なにかが同じなんです。
まったく同じ。
パラレルワールド、みたいです。
これは、『運命』に、すごく似てると思います」

「運命って、決まっているのかもしれないけれど、
『同じ』じゃない。
百パーセント、開かれているんです。
たとえば、Aという役があって、
その人が『好きです』と言って、
Bが『ごめんなさい』って言う、
たったそれだけのやりとりに、
言い方が本当にたくさんあるんです。
そういうことに、似ていると思います」

1つの物語を、全く違った人が演じる。
それはまったく違っているけれど、
なにかが完全に一致する。
それが、『運命』と、似ている。
不思議なイメージだけれど、
妙なリアリティがある。

ここまでが、阿藤さんが話してくれたことの概要だ。
このあと、私が話し、そのあとさらに、
2人の対談になった。
そのことをここに書こうと思ったのだが、
どうにも、書きにくい、ということがわかった。
なぜなのかはっきりとはわからないのだが、おそらく
この連載が「インタビュー」をテーマとしているから
ではないかと思う。
インタビューは、誰かの話を聞いて、
それを書く、という作業だ。
そこにどんなに私の考えや解釈が挟まっていたとしても、
それらはあくまで「反応」にすぎない。
ゆえに、自分の話をどかんと書くのが
なんかヘン
という感じがしてしまうんだろうと思う。

私が話したことは
主に「オイディプス王」の伝説のあらすじと、
いくつかの書籍からのエピソードのご紹介で、
よく考えると、「入り口」レベルだったような気がする。
私にとっては、
このイベントがなければ立てない「入り口」だったので
非常に大事な機会だったけれど、
聞き手の皆さんにはどうだったか、不安だ。
でも、阿藤さんが前の「闇鍋インタビュー」で語ったように
そこには「はかりしれないもの」があるのだ、
と、思うことにする。
この話は、私の中で、いろんな意味で
「続く」となっている。
あの「続き」を、どこかで書いたり、話したりする機会があると思うけれど
今回、この連載においては
なにしろ「聞いた話」ではないので
ここまでにしたい(というか、それしかできなかった)。
自分でも、ちょっと不思議な気がする。


●編集部よりお知らせ 阿藤智恵さん劇作の舞台が3月に公演されます。ぜひ!

春の劇場30 日本劇作家協会プログラム「詩人の家」
劇作・演出:阿藤智恵

2015年3月4日(水)〜8日(日)座・高円寺1
[料金(全席自由・税込)]一般3,500円 3/4プレビューは2,500円
[前売開始] 2014年12月24日[水]
[チケット取扱い]
 ぷれいす 03-5468-8113(平日11:00〜18:00)) 
 ローソンチケット(Lコード:33013)
 予約受付電話番号:0570−084−003(Lコード必要)
           :0570−000−407(オペレーター対応)
 インターネット予約 http://l-tike.com/(パソコン・携帯共通)
 店頭販売:ローソン・ミニストップ店内Loppiで直接購入いただけます。
 座・高円寺チケットボックス03-3223-7300
 (月曜定休・TEL10:00〜18:00/窓口10:00〜19:00)
 座・高円寺WEBチケット
[お問合せ] ぷれいす 03-5468-8113 (平日11:00〜18:00)


  

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石井ゆかり(いしい・ゆかり)

ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆、独特の文体で老若男女を問わず人気を集める。著書に『12星座シリーズ』(WAVE出版)、『愛する人に』(幻冬舎)、『月のとびら』(阪急コミュニケーションズ)、『星の交差点』(イースト・プレス)など多数。

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