明日の一冊

2018年6月

空が青いから白をえらんだのです―奈良少年刑務所詩集―新潮社

空が青いから白をえらんだのです―奈良少年刑務所詩集―

寮美千子/編

子どもらしい子ども時代を過ごせなかった子どもたちの、真っ直ぐな光のような詩です。大人に読んでほしい一冊です。

ミシマ社サポーター 高瀬真由美さん

2018.06.18

切りとれ、あの祈る手を河出書房新社

切りとれ、あの祈る手を

佐々木中

「本」というものの素晴らしさ、偉大さをご存知だろうか。「本」に埋もれた部屋に住み、「本」で溢れかえる書店へと勤める私だが、これまで「本」についてほとんど何も知らなかった。知らなかった、という事実を本書により知り得ることができたのである。読後の世界は一変していた。文学に終わりなどないのだから、もっともっと、私達は「本」と向き合わねばならない。

三省堂書店 有楽町店 野沢広樹さん

2018.06.15

フリーメイソン 秘密結社の社会学小学館

フリーメイソン 秘密結社の社会学

橋爪大三郎

フリーメイソンへの偏見にはいい加減あきあきとしている。誤解や憶測から導出された都市伝説ばかりが飛び交う、謎の組織とされてきた。本書では、そんなフリーメイソンへの、過った知識で編まれた粗悪なベールを剥ぎ取り、歴史や活動など、とにかく詳細に組織本来の姿が書かれている。フリーメイソンは怪しくも恐ろしくもないのである。

三省堂書店 有楽町店 野沢広樹さん

2018.06.13

はじめての沖縄新曜社

はじめての沖縄

岸政彦

「沖縄」を論ずる本は数多くある。メディアでもたびたび取り上げられ、今もなお多角的に語られている。だが「沖縄」をこの視点、この角度から描ける者は他にいないのではないだろうか。脚色も贔屓も偏見もなく裸眼で眺め続けた、社会学者である岸先生ならではのあたたかい文と写真。結論など無く淡々と優しく綴られた「沖縄」に浸り続けていたいと願う。

三省堂書店 有楽町店 野沢広樹さん

2018.06.11

目の見えない人は世界をどう見ているのか光文社新書

目の見えない人は世界をどう見ているのか

伊藤亜紗

私たちは日々視覚に頼って生きている。外から得る情報のうち8割は視覚に由来するのだそうだ。たしかに、目で見ておいしそうと思ったり、危険を察知したりしている。ヘッドフォンをしながら歩いてる人なんて10割を視覚に頼っているもんな。では、目の見えない人はどうか。私たちと異なる身体感覚を持っているのではないか? ということを探っているのが本書だ。以前、真っ暗闇の中を歩く「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を体験したとき、ほんっとうに何にも見えなくて一歩を踏み出すことが怖かった。そんな中で、視覚障がいのあるアテンドの方だけすいすいと歩く。「そこ、危ないよ」「すぐ右手にスロープがあるでしょう」...うん、その通りなんだけど、なんでわかるの! そのときは驚いたけれど、見えないからこそ見えるものがあるのだと、むしろ自分の感覚が当然なわけではないと、この本を読んでますます「おもしろいなぁ」と思った。人間の身体はすごいです。

ミシマ社 新居未希

2018.06.08

はじめての沖縄新曜社

はじめての沖縄

岸 政彦

著者の岸先生は、若かりしころ沖縄に夢中になり、「沖縄病」になったのだという。そこからはじまるこの本は、読んでも沖縄の歴史や観光地に詳しくなるような類のものではない。沖縄のことを考えて考えて考えて、あっちもこっちもゆらゆら、でも何かを「これはこうだ!」と言うわけではない、そんな文章がつづく。
恥ずかしながら、私は沖縄についてまったく詳しくない。歴史や文化は数冊の本でかじった程度。訪れたのは2回だけ。沖縄に基地を押し付けているといううしろめたさがある。自分が沖縄についてなにか意見を抱いたり、言葉にすることはおこがましいとどこかで思っていた。そういう気持ちが、この本でものすごく揺れ動かされたのだけれど、それをなんと表していいのかわからない。いろんなことをぐじぐじ考えながらこの文章を書いているので、ますます書くのが難しくって、何度もキーボードをいったりきたりしてしまう。ちょっともう一回読み返そう。とにかく、とてもいい本です。

ミシマ社 新居未希

2018.06.06

長いお別れ文春文庫

長いお別れ

中島京子

認知症になったかつて中学の校長先生だった父親と、介護をする母、3人の娘を描く長編小説。いつか誰の身にも必ず訪れる親の介護のこと、うまく想像もできなかったことがどんっと目の前に現れたようだった。介護の姿やとりまく家族の動揺、少しずつ変わっていく父の姿に、人はどうやって最後まで誇りを失わずにいられるのか、そのとき自分には何ができるかを思った。中島京子さんの、静かに綴られる文章がすばらしくて、ここから中島作品を一気読みしてしまいました。

ミシマ社 新居未希

2018.06.04

漫画の仕事幻冬舎コミックス

漫画の仕事

木村俊介

漫画に詳しくなく、本書に登場する4人の漫画家の方たち(荒川弘さん、いくえみ綾さん、海野つなみさん、冬目景さん)の作品もあまり知らない。けれど、4人が自身の仕事について訥々と語るこのインタビュー集は、とてもとても面白かった。10年、20年、30年と創作を続けていくうち、数値化できないような深化が、それぞれの方に、それぞれの形で起こっていく。その過程を読み進むうち、自分の仕事に置き換えて、いろいろ考えたりもした。読むタイミングによって、その都度、自分に合った言葉をもらえるような一冊。

ミシマ社 編集チーム 星野友里

2018.06.01

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