復活!ミシマガジン

第11回

森の案内人・三浦豊さんと行く! 京都御所ツアー(1)

2019.09.24更新

 こんにちは、ミシマガ編集部です!
 今年もいよいよこの季節がやってまいりました。『ちゃぶ台』Vol.5「宗教×政治号」、10月20日刊行です!(予約はじまりました!

ちゃぶ台5_装丁ラフ.jpg

 『ちゃぶ台 Vol.5 「宗教×政治号」』ミシマ社編(ミシマ社)

 今年の『ちゃぶ台』、特集タイトルは「ぼくらの宗教 みんなのアナキズム」です。
 宗教特集ということもあり、『木のみかた』(コーヒーと一冊)の著者三浦豊さんから、「森の案内人、『糺の森』の言霊に迫る!」についてのご寄稿をいただきました。
 下鴨神社の境内という立地、そして「ただすのもり」という言葉の響きからわかるように、神聖な場所として敬われてきました糺の森。聖地と人々がどのように関わってきたのか、森の案内人の三浦さんが迫ります。

 さて本日と明日のミシマガは復活ミシマガジン。『木のみかた』刊行直後の2017年4月に掲載された記事を再掲します。今日は前半をお届けします。

木のみかた.jpg『木のみかた』三浦豊(ミシマ社)


 ミシマ社メンバーが京都御所の森を、三浦さんに案内してもらいました!
 「木のみかた」がわかると、森へ出かけたくなります!


 3月16日に発刊した森の案内人・三浦豊さんによる『木のみかた』。読むと、普段何気なく歩いている街も実は「森」が存在していたことに気づき、街の風景がガラッと変わる。街歩きが楽しくなる一冊です。

 さっそくこの本を持って街に出よう! 

 ということで、オフィスから歩いて10分。京都の中心、京都御所を、本書片手にミシマ社メンバーと著者の三浦さんが散策をしてきました! 

ツアー開始!

―― さて出発! オフィスを出て、御所へ向けて歩く途中、
1本の木の前で三浦さんが立ち止まりました。0410-12.jpg

三浦 さっそくありますね〜。欅の木です。この木はめちゃめちゃ大きくなるんですよ。僕は「ケヤキの悲劇」って呼んでいます。
 大きくなりすぎるケヤキの枝をバッサリと伐ってしまって、ケヤキも人も悲しい気分になる光景になるのです。

―― 通勤路にありながら、普段見向きもしなかったケヤキ。むしろあることすら認識してなかったこの木が、そんなに凶暴だったとは・・・。そしてこのペースで行くと御所にたどり着くまでに一体どれくらいの時間がかかるのか...。という一抹の不安を抱えつつメンバー一同、鴨川へ移動します。

0410-13.jpg

三浦 あれはみなさんご存じ、柳ですね。ここから少し北に「出町柳」という地名がありますけど、あれは町に出る、町を出る玄関口だから「出町」で、そこに柳が生えていたから出町柳なんですね。
 この木は植えられたものですけど、川沿いには野生の柳も生えてます。僕はワイルド柳って呼んでるんですけど(笑)。よく見るとけっこう鴨川沿いにも生えているんですよ。
 あと、アイヌの伝説には、柳の葉っぱが川に落ちてシシャモになったという話もありますね。

―― まさか鴨川の柳からアイヌの伝説まで跳躍するとは・・・、スケールの大きさに感動しながら、鴨川を渡ります。
 鴨川を渡り終えた先に待っていたのは、おしゃれな洋食屋さん。そのお店の前で三浦さんは足を止めました。

0410-14.jpg

三浦 ユーカリの木です。この木、おしゃれに生えていて、女子にも人気の木なんですけど、これも死ぬほど大きくなるんです(笑)。50歳くらいになったら、もうこの建物壊す勢いです。 あと、人間が食べるとお腹壊しますね。コアラが食べるので有名ですけど、コアラも消化に時間がかかるので、ずっと寝ているんですよ。

―― たしかにコアラって22時間眠る、なんて話も聞いたことがありますが、そんな事情があったとは。
 河原町通り横断して少し行くと、御所の生垣が見えます。いよいよここから京都御所ツアースタートです!

生垣のフロントマン ウバメガシ

0410-15.jpg

三浦 御所ツアー一発目はこの生垣に生えてるウバメガシです。本当は海岸沿いに生える木なので、京都には自生しません。京都御苑が、国民公園になってから生垣として植えられたのですね。
 海岸沿いに生えている木って、常にアルカリ性の風が吹きつけられるなかで、それに耐えられるようにできてます。だから葉っぱが分厚くコーティングされているんです。
 それで、潮風に強いということは、すなわちバスや排気ガスにも強い。だから交通量の多い道路沿いの生垣によく植えられる、というわけなんです。

―― なるほど! 木にも性格によって適材適所があるという・・・。
 ウバメガシとお別れし、入り口から御所に入ると、出迎えてくれたのは案内板。成り立ちを説明してくれました。

0410-16.jpg

三浦 京都御苑はもともとは公家街と言われてて、公家たちがヒソヒソ話をやらないように、一箇所で監視できるように豊臣秀吉が集めたのが始まりなんです。最初は200軒の公家屋敷があった。ですが、明治天皇が東京に行かれて、公家たちも一緒について行ったので、ここは廃墟になったんです。そうなると見るも無残な廃墟になってしまった。
 あるとき、明治天皇が久しぶりに帰って来られて、ここを見られたときにその状況を嘆いて、

「どうにかならぬか」とおつきのものに一言漏らされました。

 それから、この旧公家町を国民公園にしようという話になりました。それで、献木を募集したら、京都市民をはじめ、日本中から殺到したんです。そこから始まったのが「大内保存事業」というわけです。

 だからこの空間には、木の種類が3種類あって、古い順から

1 公家屋敷時代の庭木が生き残っている木
2 大内保存事業の市民の献木によって植えられた木
3 鳥などが種を運んできて自然に芽生えた木

 という木が生えているんです。
 どの木がどれに当たるのか、当てはめながら楽しんでくださいね。

ケヤキとモミジの距離感

―― 目の前にある木が、1、2、3のどの種類に当てはあるのか、というミッションを与えられたメンバー。眼差しも真剣になり、少し歩いたところでいきなり三浦さんが大声を出します。

0410-17.jpg

三浦 うわああ。これ、最高ですね!! モミジとケヤキの距離感がもう最高です。

―― ???

三浦 えーと、モミジはケヤキと比べて、横に広がってますよね。これがモミジの自然樹形です。モミジは直射日光を浴びる必要がなくて、ケヤキの枝間から溢れる木漏れ日が好きなんです。そこでこの距離感。相性が最高なんです。わかってらっしゃる庭師さんが植えてくださったんですね。もう愛しか感じません!
 あと、ケヤキの漢字(欅)が木へんに拳なのは、諸説あるんですが、幹にパンチしたようなあとがあるからなんです。この木は綺麗好きで、木の皮がずっとついてると苔がつくので、自ら皮を剥がして、落とすんですね。それがうろこ状になって拳の跡に見える。

―― おおお、欅の漢字、語源はそうだったのか! 他の木の漢字も調べて見たら面白そう、なんて妄想が膨らみながら次は庭へ移動します。

(つづく)

編集部からのお知らせ

2019年度ミシマ社サポーター、募集中です。

 ミシマ社では、日々の出版活動を応援してくださるサポーターを募集しております。2013年に「サポーター制度」が始まって以来、サポーターのみなさまといろんな活動をご一緒してきました。「サポーター制度」についての考え方は、下記をご一読いただけますと幸いです。

サポーター制度について

 また、サポーター制度の具体的な活動について知りたい方は、こちらをご覧ください。

具体的な活動をもっと知る

 現在、2019年度のサポーターを募集しております。サポーター期間は2019年4月1日〜2020年3月31日です。ミシマ社メンバー一同、これからもっとおもしろいことを、サポーターのみなさまとご一緒できたらうれしく思います。お力添えをいただけましたら幸いです。

2019年度ミシマ社サポーター概要

募集期間:201913日より
サポーター期間:201941日~2020331

どの月にご入会いただいても、次年度の更新時期はみなさま来年の4月で統一です。ご了解くださいませ。その年の特典は、さかのぼって、全てお贈りいたします。

2019年度のサポーター特典

以下の特典を毎月、1年間お届けいたします(中身は月によって変わります)

* ミシマ社サポーター新聞(1カ月のミシマ社の活動を、メンバーが手書きで紹介する新聞)
* 紙版ミシマガジン(年2回発行・・・の予定です!)
*『ちゃぶ台』をはじめとした、今年度の新刊6冊ほど(何が届くかはお楽しみに!)
* ミシマ社で作ったグッズや冊子
* サポーターさん限定イベントのご案内
* ミシマ社主催イベントの割引

・・・などを予定しております!(※特典の内容は変更になる場合もございます。ご了承くださいませ。)

お申し込み方法

新規でサポーターのお申し込みをご希望の方は、下記項目を、お電話、FAX、メール等にてご連絡くださいませ。

クレジット決済をご利用の場合には、こちらから直接お手続きいただくことも可能です。

  1. お名前(フリガナ):
  2. 性別、ご年齢:
  3. ご住所:
  4. 電話番号:
  5. FAX番号:
  6. メールアドレス:
  7. サポーター種類:ミシマ社サポーター(3万円+税)or ミシマ社ウルトラサポーター(10万円+税、こちらは法人・個人問わず、年間10名様限定です)
  8. お振込み方法:郵便振替(こちらから払込用紙をお送りします)または クレジット決済 どちらかお選びください。
  9. クレジット希望の有無と掲載名:
    ※ウェブ版ミシマガジンの「編集後記」や紙版ミシマガジンの「奥付」に、ご希望されるサポーターの方々のクレジットを入れさせていただきます。掲載をご希望される場合には、

 ・お名前をそのまま記載
 または
 ・掲載用のハンドルネーム

 のいずれかをお知らせください。

FAXご送付先:075-746-3439
E-mail:hatena@mishimasha.com
(件名「ミシマガサポーター申込み」にてお願いいたします)
TEL:075-746-3438

「ちいさいミシマ社展」

【会期】2019年8月21日(水)〜10月14日(月・祝)

【場所】国立新美術館 地下1階 
ミュージアムショップ "スーベニアフロムトーキョー"

【開館時間】10:00-18:00(金・土曜日は20:00 まで)
      火曜日定休(祝日または休日に当たる場合は開館し、翌日休館)

【アクセス】〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6 出口(美術館直結)

※ミュージアムショップへの入場は無料です。

詳細はこちら

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します

    生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します

    ミシマガ編集部

    10月24日発売の『ちゃぶ台13』の実物ができあがり、手に取った瞬間、雑誌の内側から真新しい光のようなものがじんわり漏れ出てくるのを感じたのでした。それもそのはず。今回のちゃぶ台では、いろいろと新しいことが起こっているのです!

  • 『tupera tuperaのアイデアポケット』発刊のお知らせ

    『tupera tuperaのアイデアポケット』発刊のお知らせ

    ミシマガ編集部

    10月の新刊2冊が全国の本屋さんで発売となりました。1冊は『ちゃぶ台13』。そしてもう1冊が本日ご紹介する、『tupera tuperaのアイデアポケット』です。これまでに50冊近くの絵本を発表してきたtupera tuperaによる、初の読みもの。ぜひ手にとっていただきたいです。

  • 「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    後藤正文

    本日から、後藤正文さんの「凍った脳みそ リターンズ」がスタートします!「コールド・ブレイン・スタジオ」という自身の音楽スタジオづくりを描いたエッセイ『凍った脳みそ』から、6年。後藤さんは今、「共有地」としての新しいスタジオづくりに取り組みはじめました。その模様を、ゴッチのあの文体で綴る、新作連載がここにはじまります。

  • 職場体験の生徒たちがミシマ社の本をおすすめしてくれました!

    職場体験の生徒たちがミシマ社の本をおすすめしてくれました!

    ミシマガ編集部

    こんにちは! ミシマ社自由が丘オフィスのスガです。すっかり寒くなってきましたね。自由が丘オフィスは、庭の柿の実を狙うネズミたちがドタバタ暗躍しています・・・。そんな自由が丘オフィスに先日、近所の中学生が職場体験に来てくれました!

この記事のバックナンバー

08月09日
第34回 【お盆に読みたい!】内田樹×釈徹宗
「今年のお盆の迎え方
〜日本宗教のクセを生かして」
ミシマガ編集部
07月13日
第33回 小山哲×藤原辰史「中高生と考える 戦争・歴史・ウクライナのこと」後編 ミシマガ編集部
07月12日
第33回 小山哲×藤原辰史「中高生と考える 戦争・歴史・ウクライナのこと」中編 ミシマガ編集部
07月11日
第33回 小山哲×藤原辰史「中高生と考える 戦争・歴史・ウクライナのこと」前編 ミシマガ編集部
06月26日
第32回 メンバーが選ぶ、小田嶋隆さんの本と言葉 ミシマガ編集部
05月22日
第31回 仲野徹×若林理砂 "ほどほどの健康"でご機嫌に暮らそう ミシマガ編集部
10月13日
第30回 『味つけはせんでええんです』発刊記念
中島岳志先生による「土井善晴論」
ミシマガ編集部
10月11日
第29回 編集部が『ちゃぶ台10』をあつあつに語る(1) ミシマガ編集部
07月16日
第28回 『ぽんこさんの暮らしのはてな?』発刊からちょうど1年! ミシマガ編集部
07月09日
第27回 中田兼介×本上まなみ 「教えてもえもえ博士!もっと いきもののりくつ」 ミシマガ編集部
07月08日
第26回 祝『思いがけず利他』増刷! ミシマガ編集部
06月25日
第25回 特集:小田嶋隆さんの本を読みたい週末 ミシマガ編集部
06月18日
第24回 今日はパパの日!『パパパネル』によせて、tupera tuperaさんからのメッセージ! ミシマガ編集部
06月06日
第23回 2014年 今年の一冊! 百々ナイト ミシマガ編集部
05月25日
第22回 第22回「本屋さん発!」ウィー東城店発! ミシマガ編集部
05月14日
第21回 ナガオカケンメイ×井川直子「つづいているもの」が持つ、"なんか正しい感じ"の正体(2) ミシマガ編集部
05月13日
第21回 ナガオカケンメイ×井川直子「つづいているもの」が持つ、"なんか正しい感じ"の正体(1) ミシマガ編集部
05月09日
第20回 中島岳志×タルマーリー(渡邉格・麻里子)対談 「思いがけず発酵」(1) ミシマガ編集部
04月10日
第19回 微風台南・店主が教える 単純、豪快、台湾屋台飯! ミシマガ編集部
08月11日
第18回 君はバッキー井上を知っているか(2) ミシマガ編集部
08月10日
第18回 君はバッキー井上を知っているか (1) ミシマガ編集部
02月23日
第17回 言葉はこうして生き残る 河野通和『言葉はこうして生き残った』発刊記念インタビュー ミシマガ編集部
02月21日
第16回 周防大島に「宮田さん」を訪ねる。 ミシマガ編集部
02月18日
第15回 ボクは悩める坊さん。~ミッセイ和尚、2冊目を書きあげることができるのか?(後編) ミシマガ編集部
02月17日
第15回 ボクは悩める坊さん。~ミッセイ和尚、2冊目を書きあげることができるのか?(前編) ミシマガ編集部
01月13日
第14回 暖ドリ! 寒さを乗りきる 暖のとりかた (後編) ミシマガ編集部
01月12日
第14回 暖ドリ! 寒さを乗りきる 暖のとりかた (前編) ミシマガ編集部
12月27日
第13回 本屋さんと私 滝口悠生さん編(後編) ミシマガ編集部
12月26日
第13回 本屋さんと私 滝口悠生さん編(前編) ミシマガ編集部
12月08日
第12回 本屋さんと私 青山ゆみこさん編(後編) ミシマガ編集部
12月07日
第12回 本屋さんと私 青山ゆみこさん編(前編) ミシマガ編集部
09月25日
第11回 森の案内人・三浦豊さんと行く! 京都御所ツアー(2) ミシマガ編集部
09月24日
第11回 森の案内人・三浦豊さんと行く! 京都御所ツアー(1) ミシマガ編集部
08月26日
第10回 大島依提亜さんに聞きました!『今日の人生』の秘密など ミシマガ編集部
07月27日
第9回 本屋さんと私 山下賢二さん編 ミシマガ編集部
05月06日
第8回 Born to Walk!〜「心の時代」の次を探して(2) ミシマガ編集部
05月05日
第8回 Born to Walk!〜「心の時代」の次を探して(1) ミシマガ編集部
03月03日
第7回 細川貂々さんとツレさんに聞く! 電車と子育て ミシマガ編集部
02月05日
第6回 〈戦争できる国〉にしないためのちゃぶ台会議 戦後70年、元海軍兵の言葉を聴く ミシマガ編集部
12月19日
第5回 『上方落語史観』(140B)発売記念トーク 髙島幸次×笑福亭たま×久坂部羊(2) ミシマガ編集部
12月18日
第5回 『上方落語史観』(140B)発売記念トーク 髙島幸次×笑福亭たま(1) ミシマガ編集部
11月18日
第4回 「未来の今日の人生」 ミシマガ編集部
11月13日
第3回 増田喜昭×後藤美月 自分の人生に落とし前をつける絵本 ミシマガ編集部
09月24日
第2回 僕たちの世代 光嶋裕介×後藤正文×三島邦弘(2) ミシマガ編集部
09月23日
第2回 僕たちの世代 光嶋裕介×後藤正文×三島邦弘(1) ミシマガ編集部
07月30日
第1回 古代文字で写経 安田登 ミシマガ編集部
ページトップへ